暗記が苦手な子のための覚え方 ― 社会・理科の用語が頭に残るコツ
2026年9月15日 更新📖 約9分で読めます
社会や理科の用語がなかなか覚えられない小学生へ。丸暗記に頼らず、意味とつながりで記憶に残す家庭でできる覚え方のコツを、保護者向けにやさしく紹介します。
「昨日あんなに練習したのに、もう忘れてる」。社会や理科の用語で、そんな経験はありませんか。じつは“覚えられない”のではなく、覚え方のどこかで毎回同じ場所から抜けていることがほとんどです。抜ける場所は子どもによって違い、そこを直さないまま練習量だけ増やしても、同じところからこぼれ続けます。この記事では、抜けている場所の見分け方と、場所べつの直し方を順番に見ていきます。
なぜ「覚えたのに忘れる」のか ― 抜けるのは3か所
記憶は「入れる→しまう→出す」の3段階でできています。覚えられないと感じるとき、詰まっているのはこのどれかです。
- ①入れるところ(意味が入っていない) 「三権分立」が何のことか分からないまま、音だけ唱えている状態です。意味のない音は、脳がしまう理由を見つけられません。
- ②しまうところ(バラバラで入っている) 一問一答で単語を点として覚えていて、言葉どうしのつながりがない状態です。1つ忘れると、そこから先が全部出てこなくなります。
- ③出すところ(思い出す練習をしていない) 見て・書いて・眺めただけで終わっていて、閉じて思い出す練習が1回もない状態です。テストは「出す」作業なのに、家では「入れる」しか練習していないことになります。
大事なのは、この3つには直す順番があることです。①が抜けたまま③をやっても、思い出すもとがないので苦しいだけです。①→②→③の順に見てください。
どこで抜けているかを見分ける3つのテスト
どこで抜けているかは、聞くより試すほうが早く分かります。テスト範囲の用語を1つ選んで、次の3つを順にやってみてください。合計1〜2分で終わります。
- テストA(意味) 「それ、どういうこと? ふつうの言葉で言ってみて」。言いかえられなければ①でつまずいています。
- テストB(つながり) 「それと関係あることば、ほかに何がある?」。1つも出てこなければ②です。
- テストC(取り出し) 教科書を閉じて「昨日おぼえたやつ、3つ言ってみて」。意味は言えるのに閉じると出てこないなら③です。
3つとも通ったのに点が取れない場合は、暗記ではなく問題文の読み取りの側に原因があります。用語練習を増やしても変わらないので、そこは切り分けてください。
①意味が入っていない ― 用語を「ひと言」に言いかえる
①の直し方は1つだけです。用語を、その子のふだんの言葉に言いかえさせること。
「光合成」なら「葉っぱが日光を浴びてごはんを作ること」。「参勤交代」なら「大名を1年おきに江戸へ呼んで、お金と時間を使わせるしくみ」。教科書の定義文をそのまま覚え直させる必要はありません。むしろ、ざっくりしていても自分の言葉になっているほうが強いです。
ここでのコツは、親が正解を先に言わないことです。子どもが「えっと、葉っぱがなんかするやつ」と言ったら、それを否定せずに「なんかって、なにを作るんだっけ?」と一段だけ足してください。言いかえは、完成させることより自分で作った実感のほうが効きます。
絵が好きな子なら、言葉より落書きのほうが速いこともあります。ノートの端に3秒で描いた図でじゅうぶんです。うまい必要はまったくありません。
②バラバラで入っている ― つながりの形にして覚える
②は、覚える単位を点から形に変えると直ります。よく効く型は次の4つです。
- 順番の型 流れがあるものは順番ごと覚えます。「川=上流・中流・下流」「水道=川→じょう水場→家→下水しょり場」。1つ出れば芋づる式に出ます。
- 対の型 まちがえやすいものは、必ず2つセットで覚えます。「じょう水場/下水しょり場」「こん虫=あし6本/クモ=8本」。片方だけ覚えると、必ずもう片方と混ざります。
- 分ける型 数が多いものは箱に分けます。理科の水よう液なら「酸性・中性・アルカリ性」の3つの箱に入れてから中身を覚えます。
- 理由の型 社会でいちばん強いのがこれです。「なぜそうしたか」を1つ付けると、用語が物語になります。参勤交代も「反乱を起こさせないため」が付いた瞬間に忘れにくくなります。
どの型を使うかは、その単元の見出しを見れば分かります。教科書の小見出しがすでに「形」になっているので、見出しだけをノートに書き写してから、中身を思い出して埋めるのがいちばん手早い方法です。
③思い出す練習をしていない ― 間をあけて、閉じて出す
③は、いちばん効果が大きいのに、いちばんやられていない部分です。やることはシンプルで、ノートを閉じて思い出すだけです。
思い出そうとして出てこない、あの一瞬の苦しさこそが記憶を強くします。逆に、答えを見ながら赤ペンでなぞっている間は、ほとんど強くなりません。出てこなかったら3秒だけ粘って、それから見る。この「3秒粘る」があるかないかで、同じ10分でも残り方が変わります。
そして、間をあけること。おすすめの間隔はこれだけです。
- 当日 覚えた直後ではなく、1つ別のことをやったあとに1回。
- 翌日 朝の支度中などに、口頭で3つだけ。
- 3日後・1週間後 書かずに、言えるかどうかだけ確認。
回数は減らしてかまいません。合計時間より、間があいているかどうかのほうが効きます。1日で30分やるより、5分を4日に分けたほうが残ります。
やりがちだけど残らない覚え方 3つ
まじめにやっているのに残らない、という場合、次のどれかをしていることが多いです。
- 書きうつし 教科書の文をノートに写す作業。手は動いていますが、思い出していないので「出す」練習になっていません。写すなら、見出しだけ写して中身は閉じて書く形に変えてください。
- マーカーのぬりつぶし 大事なところを塗ると、覚えた気分になります。ただし塗った直後がいちばん覚えている瞬間で、そこから先は増えません。塗るのは1ページ3か所までにすると、選ぶ作業が考える作業に変わります。
- 眺める テスト前に教科書をぱらぱら見る方法。見た文字は「知っている」と感じますが、知っていることと出せることは別です。眺めるなら、ページを閉じて何が書いてあったか言うまでをセットにしてください。
この3つに共通しているのは、ぜんぶ「入れる」側の作業だということです。悪い勉強ではなく足りていないだけなので、最後に「閉じて出す」を1回足せばそのまま活きます。
家庭でできる15分の型
家庭でやるなら、この順で15分が回しやすい形です。
- 1分 今日の範囲の見出しだけ音読 何の話だったかを思い出す助走です。
- 5分 白紙に思い出して書く 教科書を閉じて、覚えている言葉を思いつく順に書き出します。順番も字のきれいさも気にしません。
- 3分 教科書とつき合わせる 抜けていた言葉だけを赤で足します。ここで抜けた数を数えないのがコツです(数えると点数になってしまいます)。
- 5分 逆クイズ 子どもに先生役をしてもらい、親が「じゃあ光合成って何?」と聞かれる側になります。答えに詰まったフリをして「えー、なんだっけ?」と言うと、得意げに説明してくれます。人に説明できた用語は、まず忘れません。
- 1分 明日の3つを決める あいまいだった用語を3つだけ選んでメモします。翌日はこの3つから始めます。
時間が取れない日は、逆クイズの5分だけで十分です。ゼロの日を作らないことのほうが、1日長くやることより効きます。「テストに出るよ」と脅すより、「ママに教えて」のほうがずっと頭に残ります。覚えていないところは責めず、「じゃあ明日もう一回聞くね」と、思い出す機会だけ作ってあげてください。
教科べつの効かせどころ
- 社会 「理由の型」がいちばん効きます。年号や人名を単体で覚えるより、「なぜそれが起きたか」「そのあとどうなったか」を1つずつ付けてください。年表は、覚える表ではなくあとから確認する地図として使うほうがうまくいきます。
- 理科 「分ける型」と「対の型」です。水よう液・こん虫・天気などは、まず箱に分けてから中身を入れます。実験のある単元は、結果より「なぜその手順なのか」を言えると一気に定着します。
- 漢字・英単語 これだけは「出す」練習の比重を上げてください。書き取り10回より、1回書いて、あとで閉じて3回思い出すほうが残ります。書く回数を増やすほど作業になりやすい領域です。
よくある質問
Q1.一問一答の問題集をくり返していますが、テストになると出てきません
一問一答は「出す」練習として優秀なので、道具は合っています。出てこない原因は、たいてい問いの形が固定されていることです。同じ問題文でしか出せない状態になっているので、「この言葉から説明して」と逆向きにも聞いてみてください。用語→意味、意味→用語の両方向で出せれば、テストの言い回しが変わっても届きます。
Q2.覚えるのに時間がかかりすぎて、ほかの宿題が終わりません
だいたいは「入れる」側に時間を使いすぎています。上の15分の型のうち、最初の1分と最後の1分を削らないようにして、真ん中を短くしてください。あわせて、覚える数を1回3つまでに区切るのも効きます。10個を1回より、3個を3回のほうが速く終わります。
Q3.前の日はできたのに、翌朝また忘れています
忘れているのではなく、1回しか思い出していないだけです。記憶は2回目・3回目の取り出しで急に強くなるので、翌朝に出てこないこと自体は失敗ではありません。そこで見ずに3秒粘り、それから答えを見る。それを3日後にもう一度やってください。「昨日できたのに」と言うと、子どもは自分を責めてしまうので避けたいところです。
Q4.語呂合わせは使ってもいいですか
使ってかまいませんが、意味が入ったあとにしてください。語呂合わせは「順番を保つ道具」であって、「意味を作る道具」ではありません。意味が入っていない状態で語呂だけ覚えると、テストで語呂は言えるのに何のことか分からない、という状態になります。順番が大事な単元(年号・地層・月の満ち欠けなど)に限って使うと、ちょうどよく効きます。
まとめ
この記事を短くすると、こうなります。
- 覚えられないのは才能ではなく、「入れる/しまう/出す」のどこかで毎回同じ場所から抜けているだけ。
- どこで抜けているかは、言いかえ・関係あることば・閉じて3つの1〜2分のテストで分かる。
- 直す順番は①意味 → ②つながり → ③取り出し。①が抜けたまま③をやっても苦しいだけ。
- つながりは順番・対・分ける・理由の4つの型のどれかに乗せる。社会は「理由」、理科は「分ける/対」が効く。
- 書きうつし・ぬりつぶし・眺めるは、ぜんぶ「入れる」側。最後に「閉じて出す」を1回足すだけで活きる。
- 合計時間より間があいているか。5分を4日に分けたほうが、30分を1日より残る。
覚えたつもりで終わらせず、忘れたころにもう一度思い出す。まちがえた所・あいまいな所を見つけて、そこだけをくり返す。遠回りに見えて、これがいちばん近道です。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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