文章題が解けない子の“読み取り”のつまずきと家庭でのサポート
2026年9月13日 更新📖 約8分で読めます
計算はできるのに文章題になると手が止まる。その多くは計算力ではなく「読み取り」のつまずきです。原因と、家庭でできる具体的なサポート方法を紹介します。
「計算ドリルはスラスラなのに、文章題になったとたん鉛筆が止まる」。これは小学生にとてもよくある姿です。ここでいちばん損なのは、「読んでいないだけ」と決めつけて、もう一度読ませて終わりにしてしまうことです。実際に子どもがやっているのは、読んでいないことではなく、数字だけを拾って、いつも習っている式に当てはめるという別の作業です。そしてその原因は3つに分かれていて、それぞれ打つ手がちがいます。まず切り分けてから手当てしましょう。
文章題は「読む」より「言い直す」種目
文章題は、国語と算数のあいだにある種目です。ただし必要なのは、文章をていねいに読む力そのものではありません。問題文を、自分の言葉の短いお話に言い直せるかどうかです。「6人に4こずつ配りました」を「1人に4こ。それが6人ぶん」と言い直せた子は、式を教えなくても手が動きます。逆に、音読はきれいにできるのに言い直せない子は、何回読ませても止まったままです。
だから家庭でやることは「もっとよく読む」の量を増やすことではなく、言い直せていない場所を見つけて、そこだけ直すことになります。
つまずきは3つに分かれる
同じ「文章題が解けない」でも、中で起きていることは次の3つのどれかです。
- ①場面が浮かばない。何が起きた話なのか分からない。「配った」「分けた」「ふえた」が動きとして見えていない。
- ②式が決まらない。場面は分かっていて、お話は説明できるのに、たし算かひき算か、かけ算かわり算かで手が止まる。あるいは当てずっぽうで決める。
- ③答えまで届かない。場面も式も分かっているのに、二段階の問題で途中の答えを最後の答えにしてしまう、単位や聞かれ方がずれる。
①の子に「たし算だよ、ひき算だよ」と教えても、次の問題でまた止まります。③の子に絵をかかせるのは、すでに分かっていることをもう一度やらせているだけです。手を決める前に、どれなのかを決めてください。
切り分けは、式を書かせずに口で3問(30秒)
ノートも鉛筆もいりません。解けなかった問題を1つ持ってきて、順番に口で聞きます。
- ⅰ「これ、何がどうなったお話?」── 説明できない・文をそのまま読み上げるだけ → ①で止まっています。
- ⅱ(ⅰが言えたら)「じゃあ答えは、はじめより多くなる? 少なくなる?」── ここで迷う・逆を言う → ②です。
- ⅲ(ⅱも言えたら)「最後に聞かれているのは何?」── 「りんごの数」ではなく「12」など数字を答える、聞かれていない量を言う → ③です。
3問とも通るのに解けないときは、読み取りではなく計算のほうで止まっています。その場合は文章題の練習ではなく、その計算の段に戻すほうが早く直ります。
①場面が浮かばない子 ―― 絵は「○と矢印」だけに決める
ここで効くのは絵です。ただし「絵にしてみようね」と自由にかかせると、多くの子はりんごの絵を上手にかくことに時間を使ってしまい、場面は浮かびません。かき方を2種類だけに固定してください。
- 数は○(まる)。りんごでも人でも、ぜんぶ○。5こなら○を5つ。
- 動きは矢印。もらった・入ってきたは内側に向かう矢印、あげた・食べたは外に出ていく矢印。
この2つだけで、低学年の文章題はほぼ図にできます。ものが10より多いときは、○を10こずつのかたまりで囲ませると、そのまま位取りの考え方につながります。
おはじきや積み木のように動かせる物のほうが、絵より先に効くこともあります。手で動かして「へった」を体で確かめた子は、次に紙の上で矢印をかけるようになります。逆に、手で動かせない子にいきなり図をかかせても写すだけになります。
②式が決まらない子 ―― キーワードで教えると、いつか必ず逆になる
いちばんよく使われていて、いちばん後で効かなくなるのが「『ぜんぶで』と書いてあったらたし算」「『のこりは』ならひき算」というキーワード式の教え方です。短期的には点が取れますが、言葉と式が逆になる問題が必ず出てきます。たとえば「あめがぜんぶで12こあります。5こ食べました。のこりは何こ?」には「ぜんぶで」が入っているのにひき算です。「どんぐりを8こ拾いました。妹より3こ多いそうです。妹は何こ?」は「多い」でひき算になります。
そこで、言葉ではなく図の形で決めます。子どもに聞くのはこの1問だけで足ります──「その2つの数は、合わせる話? へる話? くらべる話?」
- 合わせる(2つの量が1つになる)→ たし算
- へる・取り去る(1つの量から出ていく)→ ひき算
- くらべる(どちらがどれだけ多い)→ ひき算。ただし「多いほうを求める」ならたし算に戻るので、ここは必ず図で確かめます。
かけ算とわり算も同じで、決めるのは言葉ではなく「1つぶんの数がいくつか、はっきりしているか」です。1つぶんが分かっていて、そのいくつぶんを聞かれていればかけ算。ぜんぶの数は分かっていて1つぶんを聞かれていればわり算(等分除)、1つぶんが分かっていていくつ分けられるかを聞かれていてもわり算(包含除)です。わり算でつまずく子の多くは、このわり算の2つの意味が混ざっているだけなので、「1人ぶんを聞かれてる? 何人に分けられるかを聞かれてる?」と言い分けるだけで進みます。
③答えまで届かない子 ―― 最後の一文から読む
この段の子には、読む順番を変えてもらいます。問題文の最後の一文(聞かれていること)を先に読み、そこに線を引いてから、上に戻って読む。何を出す作業なのかが決まっていると、途中の数字に引っぱられません。
二段階の問題は、線を引いたあとに「そのために、まず何が分かればいい?」をもう1回聞きます。「40個を8人に配ったら、1人ぶんは5個。では3人ぶんは?」なら、先に1人ぶんが必要だと言えれば通ります。ここで途中の答え(5)を答えに書いてしまうのが、この段のいちばん多いまちがいです。式が2本必要な問題では、ノートの右端に「①1人ぶん ②3人ぶん」と小さく書かせるだけで防げます。
答え方のずれも同じところで直します。聞かれているのが「何人」なら答えに「人」、「何円」なら「円」。計算は合っているのにバツが続く子は、線を引いた最後の一文と自分の答えを見比べる1秒が抜けているだけです。
学年ごとに気をつけるところ
- 低学年:①の場面づくりがほぼすべてです。○と矢印、おはじきで足ります。文を読ませる量を増やす時期ではありません。
- 中学年:②のわり算の2つの意味と、③の二段階問題が山です。あまりのある問題は、あまりを切り捨てるのか1つ足すのかが場面で変わるので(「何箱いる?」なら1つ足す)、ここも図で確かめます。
- 高学年:割合・速さになると、○と矢印の図では追いつきません。線分図に切り替え、「1にあたる量はどれか」を先に決めるのが読み取りの中心になります。単位量の考え方に移る時期だと思って、図の道具ごと入れ替えてください。
やってしまいがちなNG
- 「よく読みなさい」だけ。どう読むかが分からないので、目で追う回数が増えるだけです。「だれが何個持ってた? そのあとどうなった?」と場面を順にたどります。
- 音読させて満足する。声に出せても言い直せていない子はたくさんいます。音読のあとに必ず「どういうお話?」を挟んでください。
- 先に式を教える。「これは12−5だよ」と言うと、その問題は片づきますが、次の問題でまた最初から止まります。教えるのは式ではなく、決め方(合わせる/へる/くらべる)です。
- 文章題ドリルの量を増やす。①で止まっている子に文章題を100問やらせても、100回同じところで止まります。増やすのは、止まっている段が通ってからです。
よくある質問
読書量が足りないのでしょうか?
読書量と文章題は、思われているほど直結しません。本をよく読む子でも文章題で止まることはあります。文章題で必要なのは長い文を読み通す力ではなく、短い2〜3文の場面を数の関係に置き直す力です。読書は続けてよいですが、その代わりにはなりません。
図をかきたがりません。
図は目的ではなく道具なので、口で説明できるなら書かせなくてかまいません。ただし止まった問題だけは書くと決めておきます。「解ける問題は書かない、止まったら○と矢印」にすると、図が罰ではなく助けとして残ります。
親が教えると怒り出します。どうすればいいですか?
教える言葉が増えているときに起きやすいので、親が言うのを「質問だけ」に絞ってください。上の3問(どういうお話? 多くなる? 最後に聞かれているのは?)以外は言わないと決めると、同じ内容でも受け取り方が変わります。
どれくらいで変わりますか?
③の答え方・二段階のずれは、線を引く習慣がつく数日で減ります。②の式の決め方は2〜3週間、①の場面づくりはもう少しかかります。1週間やって何も動かないときは、やり方ではなく見立て(①②③のどれか)を疑ってください。
まとめ
文章題が苦手な子の多くは、計算ではなく読み取りで止まっています。ただし「読み取り」は1つの力ではなく、①場面が浮かばない・②式が決まらない・③答えまで届かないの3つに分かれます。式を書かせずに口で3問聞けば、30秒でどれかが決まります。あとは①なら○と矢印、②なら「合わせる/へる/くらべる」、③なら最後の一文に線を引く。当てる場所が合っていれば、「文章題って、お話を式に言い直すだけなんだ」と手が動き出します。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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