くり上がり・くり下がりでつまずく子への、家庭での教え方
2026年10月12日 更新📖 約10分で読めます
たし算・ひき算のくり上がり、くり下がりは低学年の大きな山。つまずく原因と、家庭でおはじきや10のまとまりを使ってやさしく教えるコツを紹介します。
「8+5がぱっと出てこない」「13−7で指が足りなくなる」。くり上がりのあるたし算、くり下がりのあるひき算は、小学1〜2年生がぶつかる最初の大きな山です。ここでつまずくと算数全体が苦手になりやすいので、丁寧に越えておきたいところ。原因を知れば、家庭でできることははっきりします。
まず「どこで止まっているか」を30秒で切り分ける
くり上がりができないとき、いきなり8+5を練習させても効きません。止まっている場所は、8+5そのものではなく、たいてい一段か二段まえにあるからです。口頭で次の4問を順に出すと、30秒でどこまで戻ればいいかが分かります。
- ① 「9は、いくつと いくつ?」(5と4、6と3 など、どれか一つ言えればOK)ここで詰まる → 1年生の「いくつといくつ」(数の分解)が土台ごと抜けています。
- ② 「8に あといくつで 10?」(答え=2)ここで詰まる → 10の補数が即答になっていません。くり上がりは必ず重くなります。
- ③ 「10と5で いくつ?」(答え=15)ここで詰まる → 「十いくつ」という数の見方そのものが未完成です。
- ④ 「8+5は?」 ①〜③が言えて④だけ止まる → 部品はそろっていて、つなぎ方だけの問題。ここは一番かんたんに直ります。
大事なのは、①で止まった子に④を反復させないこと。土台が抜けたまま上を練習させると、答えを丸暗記する方向に逃げてしまい、数が大きくなった瞬間に崩れます。止まった番号まで戻るのが、遠回りに見えていちばん速い道です。
なぜつまずくのか ― 原因は3つに絞れる
- 「10のまとまり」の感覚が薄い:くり上がり・くり下がりは、10を作る・10をくずすのが土台。ここがあいまいだと計算が重くなります。
- 「あといくつで10?」が即答できない:8なら2、6なら4。この“10の補数”が出てこないと、くり上がりに時間がかかります。
- 指に頼りきっている:指は悪くありませんが、10を超えると足りなくなり止まります。
逆に言えば、この3つ以外の原因はめったにありません。「うちの子は算数のセンスがない」という話ではなく、1年生の1学期に習う「いくつといくつ」が定着しきらないまま次に進んだ、というだけのことがほとんどです。
10の補数を「覚える」ではなく「見える」にする
1と9、2と8、3と7、4と6、5と5。この“10になるペア”は、最終的には即答にしたいものですが、いきなり暗記カードにするとうまくいきません。数字だけを覚えた子は、計算の途中で使おうとしたときに思い出せないからです。
順番は「見える → 手が覚える → 口が覚える」。まず卵パック(10個入り)やおはじきで、8個入れたら空きが2つあるのを目で見せます。空きの数が答えだと分かれば、8→2は考えるまでもありません。これを何度か繰り返してから、お風呂や車の中で「6は?」「4!」の口頭クイズに移ります。
卵パックが手元になければ、10マスのマス目を紙に書くだけでも十分です。大切なのは「10の入れ物」がいつも同じ形で目の前にあること。毎回ちがう物で数えていると、10がひとかたまりだという感覚が育ちません。
くり上がり ― 学校で「さくらんぼ計算」が出てくる理由
8+5は、5から2をもらって8を10にし、残りの3で13。学校では、5の下に枝を2本かいて2と3に分けるので「さくらんぼ計算」と呼ばれます。面倒に見えますが、これは飾りではありません。
さくらんぼが求めているのは「たす数のほうを、10にするのに必要な分と、あまりに分ける」という一手だけです。8+5でも、7+6でも、9+4でも、やることは全部これ。つまり、くり上がりのある計算を一つひとつ覚えるのではなく、手順を1つ覚えれば全部に効くという道具なのです。
家庭で見てあげるときのポイントは2つ。一つめは、分けるのは「たされる数(8)」ではなく「たす数(5)」だと固定すること。ここが日によって入れ替わると、子どもはルールが2つあると感じて混乱します。二つめは、書くのを嫌がっても否定しないこと。暗算で正しく速く出せているなら、さくらんぼはもう頭の中で終わっています。書かせる意味があるのは、止まったり間違えたりする子に「考えを紙の上に出させて、どこで間違えたか本人に見せる」ためです。
くり下がり ― 「減加法」と「減々法」、どちらで教えるか
13−7には、実は2つの解き方があります。ここを親が知らずに教えると、学校と家でやり方が食いちがい、子どもがいちばん混乱します。
- 減加法(げんかほう):13を10と3に分け、10から7をひいて3、残りの3とたして6。── 教科書の主流はこちらです。
- 減々法(げんげんほう):7を3と4に分け、13から3をひいて10、さらに4をひいて6。── ひく数が小さいとき(11−2 など)は速い方法です。
おすすめは、まず学校で習っているほう(多くは減加法)に家庭も合わせること。そのうえで、どちらか一方が安定してから、もう一方を「別のやり方もあるよ」と見せます。両方を同時に教えるのは、土台ができるまでは避けてください。
なお、くり下がりで止まる子の多くは「バラの3からひこうとして足りなくなっている」状態です。13−7で固まったら、「3から7はひける?」と聞いてみてください。「ひけない」と言えたら、「じゃあ10のほうからひこう」でつながります。ひけないと気づけることが第一歩で、そこに気づかず手が止まっているだけの子はとても多いのです。
さくらんぼ計算から筆算へ ― 2けたの計算は、どこに何を書くかで決まる
さくらんぼ計算は頭の中、もしくは一問だけの式の横で分けて見せるものです。数が2けた同士になると、学校では筆算(位をそろえて縦に書く計算)に切りかわります。やり方の理屈は同じ「10を作る・10をくずす」なのに、ここで急にまちがえ始める子が多いのは、理屈ではなくどこに何を書くかのルールでつまずいているからです。
たとえば27+48。筆算では、まず一の位と一の位、十の位と十の位をたてにそろえて書きます。計算は一の位から:7+8=15。15は10より大きいので、答えの一の位には5だけを書き、残った10は「くり上がりの1」として十の位の上に小さく書くのがルールです。次に十の位:2+4に、さっきの小さな1を足して7。答えは75になります。
- よくある事故①:小さな1を書き忘れる ── 一の位の計算は合っているのに、答えが10足りない(この例なら65になる)。さくらんぼ計算では頭の中で持っていた「+10」が、筆算では紙に書かないと消えてしまうことが原因です。
- よくある事故②:小さな1をどこに足すか迷う ── 書く位置が家庭と学校でちがうと混乱します。学校で習っている位置に家庭もそろえるのが安全です。
- よくある事故③:位がずれて書かれる ── 27と48を書くとき、右はしをそろえず左でそろえてしまう。マス目のノートを使い、1マスに1数字と決めるだけで、この事故はほとんど消えます。
くり下がりの筆算も同じ考え方です。52−28なら、一の位は2−8で引けません。十の位から10を借りて、一の位を12にし、十の位は1減らして4にするのがくり下がりの書き方。12−8=4、4−2=2で、答えは24です。借りたことを紙の上に残す(十の位の5に斜線を引いて4と書く)のを忘れると、十の位の計算が元の数のままになり、答えが10多くなってしまいます。
筆算は、頭の中でやっていたさくらんぼ計算を、紙の上に書き残すためのルールです。考え方を新しく覚える単元ではありません。すでにできている「10を作る・10をくずす」を、どこに書くかだけ決めてあげれば、2けたの計算はすぐにつながります。
家庭でできる1日3分メニュー
くり上がり・くり下がりは、週末に50問より、毎日5問のほうが確実に効きます。間隔をあけずに触れることで、思い出す速さが上がるからです。机に向かわなくてもできる3分の型を作っておくと続きます。
- 1分目:いくつといくつ ── 「7は?」「3と4!」。数字を1つ言うだけ。歯みがきの前などに固定します。
- 切り分け②で止まった子は、ここを10の友だちに置きかえ ── 「8は?」「2!」。補数がすぐ出るようになるまでは、ここだけで構いません。
- 2分目:声に出す1問 ── 8+5を、答えだけでなくやり方ごと言わせます。「5を2と3に分けて、8と2で10、10と3で13」。説明できれば理解、答えだけなら暗記です。
- 3分目:紙で5問 ── くり上がり5問だけ。タイムは測りません。速さを求めるのは、やり方が固まったあとの段階です。
急がない・責めない
「まだ指使ってるの?」と言うと、隠れて余計に固まります。指や具体物は、頭の中でイメージできるようになるまでの大事な足場です。数をこなすより、10のまとまりの感覚が育つほうが先。ゆっくりで大丈夫です。
それでも指が気になるときは、やめさせるのではなく使い方を変えさせるのが有効です。8+5を1から13まで数える指の使い方から、「まず2本立てて10を作る」指の使い方へ。同じ指でも、後者は10のまとまりを使っているので、そのまま頭の中の計算につながっていきます。足場は、いらなくなれば子どもが自分から外します。
よくある質問
Q. 何分で解ければ合格ですか?
1年生のうちは時間の基準を持たないほうが安全です。速さを目標にすると、やり方を使わずに答えを思い出そうとする方向に進み、数が大きくなったときに崩れます。見るべきは「やり方を説明できるか」。説明できていれば、速さは後から自然についてきます。
Q. 毎日やっているのに、次の日には忘れています
忘れているのではなく、まだ「思い出す」段階で、「見える」段階になっていない可能性があります。切り分けの①②に戻って、卵パックやマス目でもう一度目で見せてください。数日かけて土台をやり直すほうが、同じ問題を反復するより結果的に速く抜けます。
Q. 宿題の量が多くて、3分メニューまで手が回りません
その場合は3分メニューを優先してかまいません。土台が抜けたまま宿題をこなしても、一問ずつ指で数えるやり方が固まるだけで、時間だけがかかります。担任の先生には「いま数の分解に戻って練習しています」と伝えておくと、たいてい理解してもらえます。
Q. 筆算になると、頭の中ではできるのに書くとまちがえます
多くは計算力の問題ではなく、くり上がりの小さな1を書く場所が決まっていないことが原因です。学校で習っている位置を1つ確認し、家庭でもそのまま使ってください。位がずれる場合は、マス目のノートに変えるだけで事故の多くが減ります。
まとめ
くり上がり・くり下がりのカギは「10を作る・10をくずす」感覚です。まず30秒の切り分けで、止まっている段まで戻る。10の補数は暗記ではなく卵パックやマス目で見えるようにする。くり上がりは「たす数を分ける」の一手に固定し、くり下がりは学校で習っているやり方(多くは減加法)に家庭も合わせる。そして毎日3分だけ、タイムを測らずに続ける。急かさず、具体物という足場を十分に使わせる。2けたの筆算でつまずくときは、考え方ではなく「くり上がりの小さな1をどこに書くか」を先に決めるだけで多くが解決します。この土台ができると、その後の筆算までスムーズにつながります。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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