小学英語を家庭で支援するコツ
2026年10月10日 更新📖 約9分で読めます
小学英語の家庭支援でいちばん多い心配は「親の発音」ですが、実際につまずくのは別の3か所です。聞き取れない/言えるのに読めない/書くと崩れるを口頭30秒で切り分け、それぞれに別の手当てを当てる方法をまとめました。
2020年度から、小学3・4年は「外国語活動」、5・6年は教科としての「外国語」になりました。教科になったということは、成績がつき、教科書があり、単元テストがあるということです。そこで保護者からいちばん多く出るのが「自分の発音が悪いので教えられない」という心配です。ところが、家庭で実際に子どもが止まっている場所を見ていくと、発音の良し悪しが原因になっていることはほとんどありません。止まるのは「音が聞き取れていない」「言えるのに読めない」「書くと崩れる」のどれかで、この3つは手当てがまったく別です。まずそこを切り分けるところから始めます。
「発音が下手だから教えられない」は、つまずきの場所とずれている
発音のモデルは、授業の先生・ALT・教科書の音声(QRコードやデジタル教材)から入ります。家庭でそれを上書きする必要はなく、上書きしようとすると子どもが二重のモデルで混乱します。家庭の役割は別で、子どもが声を出した回数を増やすことと、どこで止まっているかを見つけて先生に渡せる形にすることの2つです。親が英語を話せるかどうかは、この2つにほとんど関係しません。
よくある心配を3つ、先に外しておきます。
- 「発音が悪いとまちがった発音が定着する」…小学校の評価は発音の正確さではなく、伝えようとしているか・聞いて分かるかで見ます。親が言い直させるより、教科書の音声を子どもに再生させて、そのあとに続けて言わせるほうが早いです。
- 「単語カードを何百枚も覚えさせないと」…小学校で扱う語は教科書の単元に紐づいています。教科書の外から語を足すと、テストにも授業にも出てこない語を覚える時間になります。増やすより、いま習っている単元の語を、聞く・言う・読む・書くの4方向から触るほうが点にも力にもなります。
- 「英検を先に取らせたほうが有利」…先取りが効くのは、上の3つの切り分けができていて、どこも詰まっていない子です。読めないまま級を上げると、聞いて覚えた音で答える力だけが伸び、中学で文字に切り替わったときに一気に止まります。
家庭で30秒でできる、3つの切り分け
教科書(または学校で配られたプリント)を1枚用意して、いま習っている単元のページを開き、次の3つを順に頼みます。答え合わせはしません。どこでつまるかを見るだけです。
- 音声を1回聞かせて「いま何て言った?」と聞く…カタカナでもいいので言えるか。言えなければ①(聞き取り)。
- 教科書の文字を指で示して「これ、読んでみて」と頼む…音声なしで読めるか。①は通ったのに読めなければ②(音と文字)。
- その語を、何も見ないで書かせる…書けるか。②まで通って書けなければ③(書き)。
3つのうち、いちばん早く止まったところが今いる場所です。ここを飛ばして「とりあえず全部くり返す」をやると、できている段階の練習に時間が吸われ、詰まっている段階には手が入りません。以下、①②③に別の手当てを当てます。
①音が聞き取れない ── 英語は語のあいだが切れずに流れる
日本語は、ほぼ書いたとおりに音が並びます。英語は隣の語とくっついて形が変わります。Can you を「キャン ユー」と覚えた子は、実際に流れてくる「キャニュ」を知らない音として聞き流します。つまり語は知っているのに、文の中の形を知らない状態です。
家庭での手当ては、聞かせる量を増やすことではなく、1つの文を、遅い→速いの順で2回聞かせることです。教科書の音声には遅い版がついていることが多く、なければ動画アプリの再生速度を0.75倍にします。遅い版で「Can / you / come」と3つに分かれて聞こえたあと、通常速度で同じ文を聞くと、子ども自身が「さっきの3つがくっついた」と気づきます。この「くっつくんだ」の一度の気づきが、以後ほかの文にも効きます。1日1文で十分です。
②言えるのに読めない ── 音と文字が別の引き出しに入っている
小学英語でいちばん見落とされるのがここです。授業は聞く・話すから入るので、子どもは音だけで正解できてしまいます。その結果、apple と言えるのに a-p-p-l-e を見ても読めない、という状態が起こります。中学で文字中心に切り替わったとき、ここが原因で一気に崩れます。
手当ては、音で言えた直後に、その文字を見せるだけです。順番が逆だと効きません。「アップル、って言えたね。これがその字だよ」と指で示し、もう一度言わせる。これを、いま習っている単元の語だけでやります。覚えさせるのではなく、音と文字を同じ瞬間にくっつけるのが目的なので、1語5秒で構いません。
アルファベットの名前(エイ・ビー・シー)と、文字が文の中で出す音(ア・ブ・ク)は別だという点にも触れておきます。名前だけ覚えた子は cat を「シー・エイ・ティー」と読み上げて止まります。このときは「その字の名前じゃなくて、音のほうで言ってみて」と言い方を変えるだけで進むことが多いです。
③書くと崩れる ── なぞり書きで終わっている
教科書のなぞり書きは、線をたどる作業なので、なぞれても書けるようにはなりません。加えて小学校の書きでつまずくのは、つづりよりも語と語のあいだの空白と、大文字・小文字・ピリオドです。I like soccer. を「Ilikesoccer」と書く、文の先頭を小文字で始める、ピリオドを落とす。これは覚えていないのではなく、日本語に空白と大文字がないので意識の外にあるだけです。
手当ては、書いたあとに子ども自身に3つだけ確かめさせることです。「あいだ、空いてる?」「最初、大きい字?」「終わり、点ある?」。親が直すのではなく子どもが見つけると、次から自分で確かめるようになります。3つに絞るのが大事で、同時に4つ以上見ると全部抜けます。
教科になって増えた「点がつく場面」への備え
5・6年は教科なので、単元テストと、話す活動の評価(スピーチやインタビューなど)があります。テスト前に家庭でできるのは、教科書の単元ページの見開き1つを、音声→読み→書きの順に1周することです。新しい問題集を買う必要はありません。出るのは教科書の単元の中だからです。
話す活動は、当日うまく言えるかではなく、言う文を家で3回声に出したかで結果が変わります。原稿を長くするより、自己紹介なら3文に削って、それを3回言わせる。親は内容を直さず、聞いて「聞こえた」と返すだけで役目が足ります。
通知表の「観点」って何? ── 点数だけでは見ていない3つのものさし
5・6年の外国語は教科なので通知表に評定がつきますが、見られているのはテストの点だけではありません。2020年度の学習指導要領から、どの教科も「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点で評価する決まりになっており(観点別学習状況の評価)、外国語もこの3つが対象です。1つずつ、家庭支援とどう結びつくかを見ていきます。
- 知識・技能…語や表現を知っているか、聞く・話す・読む・書くの技能として使えるか。テストの点にもっとも近い観点で、この記事の①②③の切り分け(聞き取り・読み・書き)がそのまま効きます。
- 思考・判断・表現…知っている語や表現を、場面や相手に合わせて選んで使えるか。スピーチやインタビューなどの「話す活動」で見られ、前の節の「言う文を家で3回声に出す」練習が直結します。
- 主体的に学習に取り組む態度…間違いを気にせず声を出そうとしているか、くり返し挑戦しているか。テストの点には出ない観点で、家庭で褒める対象になります。
テストの点(①に近い)が低くても、③で踏ん張っていれば評価はゼロにはなりません。逆に①がいくら高くても、②③が無ければ満点にはなりません。「テストの点が低い=全部ダメ」ではなく、3つのうちどこが弱いかを見て、そこだけを手当てするほうが効率的です。点数は1つのものさし。ものさしは3本ある。
学校とのつなぎ方は、連絡帳1行でいい
①②③のどこで止まっているかが分かったら、それは先生にとって有用な情報です。「英語が苦手なようです」では何も動きませんが、「言えるのですが、文字を見ると読めないようです」と書けば、先生は文字を指しながら読ませる場面を作れます。連絡帳に1行、切り分けの結果だけを書く。これが家庭からできるいちばん効く支援です。
あわせて、いま学校がどの単元をやっているかを子どもに聞く習慣をつけておきます。単元が分かれば、家庭で触る語が自動的に決まり、教科書の外から語を足す無駄がなくなります。
よくある質問
1.「思考・判断・表現」と「知識・技能」はどう違うのですか?
知識・技能は語や表現を知っていて使えるかどうかです。思考・判断・表現は、知っている語や表現を場面に応じて選んで使えるかどうかで、スピーチやインタビューなど実際に使う場面で見られます。
2.テストの点がいいのに評価が低いのはなぜですか?
テストの点は「知識・技能」にもっとも近い観点で、通知表の評価は残り2つの観点(思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度)も合わせて決まります。点数だけでは説明できない評価のしかたです。
3.「主体的に学習に取り組む態度」は、やる気があるように見えるかで決まるのですか?
見た目のやる気ではなく、間違いを気にせず声を出そうとしているか、くり返し挑戦しているかといった、授業での取り組み方で見られます。家庭では、できたかどうかではなく挑戦したかどうかを褒めることが支援になります。
4.3つの観点のうち、家庭でいちばん手当てしやすいのはどれですか?
「知識・技能」です。この記事の①②③の切り分け(聞き取り・読み・書き)がそのまま効きます。「主体的に学習に取り組む態度」も、挑戦を褒めることで家庭から支えられます。
まとめ
- 家庭支援の前提は「親の発音」ではなく、どこで止まっているかの切り分け。
- 教科書1ページで30秒。聞いて言えるか → 文字で読めるか → 何も見ずに書けるかの順に止まった場所が今いる段階。
- ①聞き取りは遅い版→通常速度の2回聞きで「くっつく」に気づかせる。②読めないは、言えた直後に文字を見せて音と文字をその場でくっつける。③書きは、あいだの空白・最初の大文字・終わりのピリオドの3つだけ子どもに確かめさせる。
- 語は増やさず、いま習っている単元の語を4方向(聞く・言う・読む・書く)から触る。
- 通知表は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で見られる。点数は1つのものさし。ものさしは3本ある。
- 先生には「苦手です」ではなく切り分けの結果を1行で渡す。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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