時計の読み方が苦手な子への、家庭でできる教え方
2026年9月13日 更新📖 約10分で読めます
時計は数字と針の動きが結びつきにくく、つまずく子が多い単元です。「何分」で混乱する理由と、家庭のなかで自然に慣れていく教え方・声かけを段階ごとに紹介します。
「短い針は読めるのに、長い針になると止まる」「家では読めるのに、テストの時計の問題はバツで返ってくる」。時計は、学年が上がってもひきずりやすい単元です。ただ、「時計が読めない」をひとまとめにして時計の練習をさせると、当てる手がずれます。読めないように見える子の中には、文字盤ではなく数のとびで止まっている子も、文字盤は読めているのに「時刻」と「時間」がまざっている子もいます。止まっている場所がちがえば、渡すものも変わります。
「時計が読めない」はひとつの症状ではない
時計の問題は、ほかの単元とちがってひとつの文字盤に二つの目もりが重なっています。同じ「3」の場所が、短い針では3時、長い針では15分になる。しかも分は5、10、15…と5とびで数え、60でひと回りします。ふだんの数の世界(10でくり上がる)とルールがちがう場所が、少なくとも三つ同時に出てくるわけです。
だから「読めない」と一言で言っても、そのうちのどこで止まっているかは子どもによってばらばらです。そこを分けずに練習量を足すと、すでにできているところを何十回も繰り返させることになります。時計のドリルを1冊やり切ったのに点が変わらなかった、という話のほとんどはこれです。
まず3つの型に分ける
家庭で見分けられるのは、次の3つです。ひとりの子が二つ持っていることもありますが、その場合も手を入れるのは番号の小さいほうからです。
- ①文字盤でまよう。長い針と短い針のどちらがどっちか、針が数字と数字のあいだにあるときにどちらを読むかで止まる。「4時55分」を「5時55分」と答えるのが代表的な目印です。
- ②5とびが乗っていない。針の指す場所は分かるのに、そこが何分かが出てこない。1から順に指で数え直す、または「7のところ」で止まる。数え始めると時間がかかるのが目印です。
- ③時刻と時間がまざる。文字盤は正しく読めるのに、「40分後は何時?」「何分かかった?」でつまずく。時計の絵を見せれば読めるのに、文章題だけ落とすのが目印です。
①は見る場所が決まっていない、②は数の道具が足りていない、③は読むのではなく計算の問題。この三つは中身がまったく別で、③の子に文字盤の読み取り練習をさせても、いちばん困っているところには届きません。
3問・30秒で見分ける
特別な教材はいりません。針を自由に動かせるおもちゃの時計か、紙に描いた時計が一つあれば足ります。口で三つ聞くだけです。
- 問1「4時55分」に針を合わせて「何時何分?」と聞く。ここで5時と答えたら①です(短い針がほぼ5に届いているため)。
- 問2「3時35分」に合わせて聞く。指で1つずつ数え始めたら②。5、10、15…と口に出して数えられるなら②ではありません。
- 問3時計は見せずに「いま3時50分です。20分たったら何時何分?」と聞く。ここだけ止まるなら③です。
三つとも通ったのに学校のテストで落とすときは、読む力ではなく問題文の形に慣れていないだけのことが多いので、教科書のその単元のページを一緒に音読するところから始めてください。
①文字盤でまよう子への手当て
この型の子に必要なのは練習量ではなく、見る順番をひとつに決めることです。「短い針が通りすぎた数字を先に言う。それから長い針を読む」。この順番を、毎回同じ言い方で声に出させます。
4時55分を5時と読んでしまうのは、短い針が5の手前まで来ているからです。ここは理屈より「まだ5に着いていないから、まだ4時」という言い方が通ります。針が数字と数字のあいだにあるときは手前の数字を読む、とだけ決めておけば、ほとんどの誤りは消えます。
長針と短針が入れかわる子には、色を分けるのが速いです。短い針に赤いシール、長い針に青いシールを貼り、「赤は何時、青は何分」と貼ったまま1週間使います。覚えさせるのではなく、見分けの手がかりを紙の外側に置くのがこの型の基本です。
②5とびが乗っていない子への手当て
この型は、じつは時計の問題ではありません。5の段の九九と、5とびの数え上げが体に入っていないだけです。時計を離れて、そこを先に固めたほうが早く着きます。
やることは一つ、5、10、15…60まで、口で言えるようにすることです。階段を上がりながら、歯みがきをしながら、1日1回30秒で足ります。60まで一気に言えるようになったら、文字盤に戻ります。
戻るときは、文字盤の数字の外側に鉛筆でうすく「5・10・15…」と書き込んだ時計を使います。ここで大事なのは書き込みを消す日を決めておくことです。目安は2週間。ずっと書いたまま使うと、書き込みのない時計が読めない子になります。消すときは一度に全部ではなく、まず12・3・6・9だけ残して他を消し、次にすべて消す、の2段階にします。
③時刻と時間がまざる子への手当て
いちばん多いのに、いちばん見のがされやすい型です。この子は文字盤を読めるので、家では「時計はもう大丈夫」に見えます。落ちているのは、「何時何分」という一点(時刻)と、「何分間」という長さ(時間)が別のものだという区別です。
手当ては、ことばを分けて使うところから始めます。時刻を聞くときは「いま何時?」、長さを聞くときは「何分かかった?」と、家の中の言い方を固定します。大人が両方を「時間」と呼んでいると、子どもは区別のしようがありません。
計算のほうは、引き算にする前に数直線を1本引かせるのが確実です。左に始まりの時刻、右に終わりの時刻を書き、あいだを「ちょうどの時刻」でいったん区切る。3時50分→4時→4時10分なら、10分と10分で20分。60をまたぐ引き算を筆算でやらせないのがコツで、ここを筆算にした瞬間に「3時50分-4時10分」で手が止まります。
教える順番は「ちょうど→半→5分→1分」
①②の手当てが終わったら、読む練習は次の順に進めます。前の段が9割がた安定してから次へ行くのが原則で、一度に二つの段を進めないことだけ守れば、たいてい詰まりません。
1. ◯時ちょうど
長い針が12を指す時刻だけを完璧にします。「7時だね、朝ごはんの時間」と生活の予定とつなげると、覚える負担がありません。
2. ◯時半
長い針が6を指す形を足します。「半分まわったから30分、それを半と言う」と、針の動きとことばをセットで見せます。ここまでで、家の中で使う時刻の多くはカバーできます。
3. 5分きざみ
②の手当てで5とびが入っていれば、ここはすぐ乗ります。まず「15分・45分」を先にやるのがおすすめです。この二つは会話でよく出るので、先に読めると本人の手ごたえが大きくなります。
4. 1分きざみ
最後に、数字と数字のあいだの小さい目もりに進みます。「5とびで近いところまで行って、そこから1つずつ足す」という読み方を渡します。ここで初めて、小さい目もりが全部で60あることを話します。
デジタル時計は敵ではない
「デジタルばかり見るからアナログが読めない」と、家じゅうのデジタル表示を隠してしまう方がいますが、これはおすすめしません。③の型の子にとって、デジタルは時刻を確実に読める足場だからです。足場を外すと、時間の計算まで一緒に崩れます。
使い分けはかんたんです。同じ場所に両方を置いて、見くらべさせる。デジタルで「3時35分」と分かってから、アナログの針がどこにあるかを見る。答え合わせの向きが逆になるので、まちがえても気持ちが折れません。アナログだけで当てさせるのは、読み方の順番が入ってからで十分です。
生活のなかでは、1日3回だけ聞く
時計は、プリントより生活のなかのほうが定着します。ただし聞きすぎると時計がテストになります。目安は1日3回まで。朝の支度、おやつ、寝る前など、時間を決めておくと大人も忘れません。
- 「長い針が12に来たら、おやつにしようか」(ちょうど)
- 「いま何時何分か、読んでみて」(読み取り)
- 「あと15分でお風呂。長い針がどこに来たら15分かな」(時間の長さ)
読めたら「よく読めたね」と返し、まちがえたら「おしい、ここから5とびで数えてみよう」と一緒に数え直すところまでやります。答えだけ言って終わると、次も同じところで止まります。
学年べつの目安と、やめどきの一線
教科書では、小1で「何時・何時半」、小2で「何時何分」と時間の計算まで進みます。とはいえ数か月おくれているだけなら、心配する段階ではありません。
- 低学年:ちょうど・半が読めれば十分。1分きざみは急がない。
- 中学年:1分きざみと、60をまたぐ時間の計算(③)が中心。ここを落としたまま上がると、速さの単元でまた止まります。
- 高学年:時計そのものより、時間の計算(時速・かかった時間)で出てきます。読めないままなら、恥ずかしがらせずに文字盤に戻ってよい場所です。
一方で、手当てを2〜3か月続けても①がまったく動かないときは、練習で押し切らないでください。針の位置関係や左右がつかみにくい場合があるので、まず学校の先生に「時計の単元だけ極端に苦戦している」と伝え、必要なら見え方をみてもらうところまでを一線にします。家庭で量を積むのは、この相談のあとです。
やってはいけない4つ
- いきなり分から教える。ちょうど・半が固まる前に分へ行くと、どの段も中途半端になります。
- 時間を計って読ませる。速さを求めると、②の子は数えるのをやめて当てずっぽうになります。
- 書き込みつきの時計を使い続ける。消す日を決めないと、書き込みのない時計が読めなくなります。
- 「何回教えたと思ってるの」と言う。回数は子どもの努力ではなく、こちらの当て方がずれている合図です。
よくある質問
Q. おもちゃの時計は買ったほうがいいですか。
A. 針が自分で動かせるものが一つあると、①と③の手当てがぐっとラクになります。高いものは不要で、紙皿と割りピンで作っても同じ役をします。
Q. どのくらいで読めるようになりますか。
A. ①は見る順番を決めるだけなので数日〜2週間、②は5とびが入るまでが本体で2〜4週間、③は数直線に慣れるまで1か月ほどが目安です。型を外したまま練習していると、何か月やっても動きません。
Q. 学校ではもう次の単元に進んでしまいました。
A. 時計は生活のなかでいつでもやり直せる、数少ない単元です。授業に合わせて焦る必要はありません。ただし③(時間の計算)だけは、速さや単位の単元に直結するので、学年が上がる前に戻しておくと後が軽くなります。
Q. デジタルで答えを見てしまいます。
A. 見てかまいません。先にデジタルで答えを知ってから針を見る、という順番は、まちがい探しではなく確認になるので、むしろ定着します。
まとめ
時計でつまずく子は、①文字盤でまよう・②5とびが乗っていない・③時刻と時間がまざるの三つに分かれます。見分けは3問30秒、手当ては①=見る順番を決める、②=時計を離れて5とびを固める、③=ことばを分けて数直線を引く。どれも、練習量を増やす話ではありません。
読む練習は「ちょうど→半→5分→1分」の順に、一度に一段ずつ。生活のなかでは1日3回まで。この形にしてから、時計は「できない単元」ではなく「あと少しの単元」になります。
クラビオの「さくせんノート」は、その日やったこと・できたこと・つぎの作戦を1分で書きとめるアプリです。時計のようにどこで引っかかったかが見えにくい単元ほど、「今日は5とびを言えた」「40分後でまた止まった」と残しておくと、次にどこへ手を当てるかがはっきりします。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
あわせて読みたい
- 算数・約9分割合が分からない子への、家庭でできる教え方 ― 公式を3つ覚える前に「もとにする量」を先に決める
5年生の割合は、公式を3つ覚えるほど混ざります。「〜の」の直後がもとにする量という決め方、式を1本にまとめる考え方、小数・百…
- 算数・約9分算数の図形が苦手な子への、家庭でできる工夫
図形問題でつまずくのは「センスがない」からではありません。原因を切り分けて、家庭で手を動かしながら図形の感覚を育てる具体的な…
- 算数・約8分倍数・約数でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 混ざるのは、さがす向きが逆だから
5年算数の倍数・約数は、九九が言えるのにつまずきます。原因は計算ではなく向きです。倍数はその数から増えていって終わりがなく、…
ほかの困りごとをさがす
記事の見出しと、本文の小見出しからさがします。