6年生の「政治・憲法」がちんぷんかんぷんな子への、家庭でできる教え方 ― 「だれが決めたか」から入る
2026年10月8日 更新📖 約9分で読めます
国会・内閣・裁判所や憲法の三つの柱は、言葉だけ覚えると必ず混ざります。身のまわりの「これはだれが決めたか」からたどって家庭で話せるようにする順番と、総理大臣も最高裁判所長官も国民の直接選挙では選ばれないという見落としやすい仕組みまで紹介します。
政治が分からなくなるのは、目に見えないものを言葉だけで覚えているから
6年生の社会は、多くの教科書で政治の学習から始まります。歴史のように人物や物語があるわけでもなく、5年生までの産業や地図のように写真で見せられるわけでもありません。国会・内閣・裁判所・選挙・憲法・税金。どれも目に見えないうえ、名前が全部かたい漢語です。「読めるけれど意味が入ってこない」という状態になりやすいのは、子どもの理解力の問題ではありません。
そのうえテストで問われるのは用語なので、家庭でもつい一問一答になります。ところがここは、歴史以上に単語暗記と相性が悪い単元です。国会・内閣・裁判所は名前がどれも似ていて、「話し合うところ」「決めるところ」というあいまいな覚え方では必ず入れかわります。実際、テストで最も失点が集中するのは「国会と内閣のどちらか」を選ばせる問題です。
順番を変えると、ここは驚くほど楽になります。用語から入るのではなく、「これはだれが決めたのか」という質問から入る。政治は、身のまわりの決まりごとをさかのぼれば必ず出てくるものだからです。
ステップ1:役割を三つだけ、動詞で言えるようにする
最初にやることは一つです。三つの機関を、名詞ではなく動詞で言えるようにします。
- 国会=きまりをつくるところ(法律をつくる、予算を決める)
- 内閣=きまりのとおりにやるところ(実際に仕事をする、各省を動かす)
- 裁判所=もめたときに判断するところ(そのきまりでよいか、だれが正しいか)
「つくる・やる・判断する」。この三語が口から出るようになれば、三権分立という言葉を覚える前に中身が入ります。逆にこの三語が言えないまま「立法・行政・司法」を覚えても、テストの場では取り出せません。覚える順番は、はたらき → 名前 → 漢語の順です。
そのうえで一言だけ足します。「なぜ三つに分けているのか」。答えは「ひとつのところが全部にぎると、まちがえたときに止められないから」です。学級で例えるなら、ルールを決める人と、ルールを守らせる人と、もめたときに聞く人が全部同じ子だったらどうか、という話にすると6年生には十分伝わります。
ステップ2:身のまわりから「だれが決めたか」をたどる
三つの役割が入ったら、教科書に戻る前に家の中でたどります。使うのは、その子が実際に知っているものだけです。
- 信号や横断歩道:だれが付けた? → 市(役所)→ そのお金はどこから? → 税金
- 学校の教科書がただでもらえる:だれが決めた? → 国会がそう法律で決めた
- 公園・図書館・ごみ収集:だれが動かしている? → 市町村(地方公共団体)
- 買い物のレシートの消費税:どこへ行く? → 国や市に集まり、上の三つに使われる
この往復を2〜3回やると、税金という言葉が「取られるもの」から「みんなで先にお金を出しあって、大きい物を買うしくみ」に変わります。ここが変わると、政治の単元の後半(予算・社会保障・地方自治)がまとめて読めるようになります。
ごみの処理や水道のように、5年生までに学んだくらしのしくみとつなげるのも効きます。「あのとき見たしくみを、だれが決めて、だれのお金で動かしているか」が6年生の政治です。まったく新しい単元ではなく、去年までの続きだと分かるだけで、身がまえがほどけます。
ステップ3:憲法は「三つの柱」を一言ずつ
憲法は条文を覚えるところではありません。三つの柱を、それぞれ一言で言えれば6年生の学習としては十分です。
- 国民主権:国のことを最後に決めるのは国民(だから選挙がある)
- 基本的人権の尊重:だれもが生まれたときから持っている、うばわれない権利がある
- 平和主義:争いを戦争で解決しない
そのうえで、憲法と法律のちがいを一度だけ確認します。法律は国会がつくるきまり。憲法は、その国会や内閣に対して「ここから先はやってはいけない」と決めているきまり。だから憲法のほうが上にあり、変えるときも国民投票が要る。ここを一度言葉にしておくと、「憲法も国会が作るの?」という定番のつまずきが起きません。
選挙は「自分ごと」に落ちると急に入る
選挙のしくみ(18歳以上、投票率、一票の重さ)は、数字として覚えると翌週には消えます。かわりに一度だけ、家庭でこう聞いてみてください。「もし学校のきまりを、だれか一人が全部決めるとしたらだれがいい?」「その人が思っていたのと違うことをしたら、どうやってやめてもらう?」
ここで「次に選ぶときに選ばない」という答えが出てきたら、それが選挙です。投票率が低いと何が困るのかも、この延長でそのまま話せます。投票に行かない人が多いほど、行った少数の人の希望どおりに決まる――この一文が入ると、グラフの読み取り問題の意味が変わります。
なお、家庭で特定の政党や候補への好き嫌いを語る必要はまったくありません。学校で問われるのはしくみのほうで、意見の中身ではないからです。ここは切り分けておくほうが、子どもも安心して質問できます。
つまずきやすいところ、三つ
- 国会と内閣が入れかわる:「つくる/やる」に戻します。総理大臣は内閣の側、と一言足すだけで正答率が上がります。テストでは「予算を決めるのは?」=国会、「予算案をつくって出すのは?」=内閣、のように紛らわしく出ます。
- 漢語が読めないまま進んでいる:三権分立・国民主権・地方公共団体などを、声に出して読めるか一度だけ確認します。読めない語は意味以前に記憶に残りません。音読で詰まる語だけを拾えば数分で終わります。
- 図表の問題で手が止まる:三権分立の図は、矢印の向きが問われます。矢印を暗記するのではなく「国民はどこへも矢印を出している(選挙・世論・国民審査)」とだけ押さえると、残りは役割から復元できます。
もうひとつの見分け方:総理大臣は「直接選挙で選ぶ人」ではない
6年生の政治の単元でもうひとつ混同しやすいのが、「だれを国民が直接選んでいるか」です。衆議院議員・参議院議員・都道府県知事・市区町村長は、どれも国民の直接選挙で決まります。この並びに慣れていると、内閣総理大臣も同じように国民が投票で選んでいると思い込みやすくなります。大統領を国民が直接選ぶ国のニュースや、知事選のイメージが重なるためです。
実際の総理大臣の決まり方は一段ちがいます。国民が直接選挙で選ぶのは国会議員までです。そのあと国会議員の中から、国会が「この人を総理大臣にします」と指名し、最後に天皇が任命して正式に決まります。つまり「国民→(直接選挙)→国会議員→(国会が指名)→内閣総理大臣→(天皇が任命)」という、1本の鎖のようなつながりで決まっています。国民が総理大臣の名前を書いて投票することはありません。
同じ仕組みが、裁判所の一番上にもあります。最高裁判所長官も、内閣が指名し、天皇が任命することで決まり、国民が直接投票する対象ではありません(その代わり、任命された裁判官を国民があとからチェックする「国民審査」という別のしくみがあります)。国会がきまりをつくり、内閣が総理大臣の指名という形でも関わり、裁判所の人事にも同じ任命の仕組みが使われている――ここでも「つくる・やる・判断する」の3つの役割が、名前の決まり方にまで表れています。
直接選挙で選ばれる職をもう一度整理しておきます。
- 衆議院議員・参議院議員(国会議員)
- 都道府県知事
- 市区町村長
この3種類だけが国民の直接選挙で決まり、内閣総理大臣と最高裁判所長官は、この中に入っていません。「選挙で選ぶ人」と「指名・任命で決まる人」を分けて覚えると、「総理大臣は内閣の側」と覚えた知識(つまずきやすいところ、三つ、参照)に、もう一段くわしい理由がつながります。
家庭でのすすめ方は、ニュース1本と一問だけ
政治は、机に向かう時間を増やしても伸びにくい単元です。かわりに効くのは短い接触を何度かくり返すことです。夕食のときにニュースを1本見て、「これはだれが決める話?」と一問だけ聞く。答えが出なくてもかまいません。三つのうちどれかな、と一緒に迷えばそれで足ります。
この一問一答を週に2〜3回まわすだけで、テスト前に用語を詰め込む必要がなくなります。やったことと「次はどこがあやしいか」を1分だけ残しておくと、翌週の復習が探しものになりません。大事なのは記録の形式ではなく、どこが弱いかを本人が分かっていることです。
合いことば ―「総理大臣を選ぶのは、国民ではなく国会。」
総理大臣がどう決まるか分からなくなったら、この一言を思い出してください。「総理大臣を選ぶのは、国民ではなく国会。」 国民が直接選べるのは国会議員・都道府県知事・市区町村長まで。そこから先は、国会の指名→天皇の任命という順番で決まります。
よくある質問
1.内閣総理大臣は、どうやって決まるのですか
まず国民が選挙で国会議員を選びます。そのあと、国会議員の中から国会が「この人を内閣総理大臣にします」と指名し、最後に天皇が任命して正式に決まります。国民が総理大臣に直接投票することはありません。
2.総理大臣に、国会議員でない人がなれることはありますか
ありません。日本の内閣総理大臣は、必ず国会議員(衆議院議員か参議院議員)の中から指名されるという決まりがあります。これは憲法で定められているルールです。
3.最高裁判所の長官も、国民が選ぶのですか
選びません。最高裁判所長官も、内閣が指名し天皇が任命することで決まります。国民が直接投票する対象ではなく、その代わりに任命された裁判官を後からチェックする「国民審査」というしくみが別にあります。
4.国民が直接選挙で選べるのは、どんな人ですか
衆議院議員・参議院議員(国会議員)、都道府県知事、市区町村長の4つです。総理大臣や最高裁判所長官はこの中に入っていないので、「直接選挙で選ぶ人」と「指名・任命で決まる人」を分けて覚えると混乱しません。
まとめ
6年生の政治・憲法は、用語を先に覚えるほど混ざります。まず国会=つくる/内閣=やる/裁判所=判断するを動詞で言えるようにし、次に信号・教科書・図書館・消費税など身のまわりから「だれが決めたか」をたどる。憲法は三つの柱を一言ずつ、そして「憲法は国会や内閣をしばるきまり」だと一度だけ確認する。選挙は「その人をやめてもらうにはどうするか」から自分ごとにする。そのうえで「総理大臣を選ぶのは、国民ではなく国会。」という線引きを持っておけば、「だれが決めたか」をたどる地図はもう一段くわしくなります。この順番なら、見えないものを覚える単元が、身のまわりの話に変わります。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
あわせて読みたい
- 社会・約9分工業と貿易で社会が急に苦手になる子への、家庭でできる教え方 ― 地名を覚える前に「どこで作って、どこへ運ぶか」
5年生の工業・貿易は、それまでの社会と違って目で見えないので、地名と数字の丸暗記になりがちです。製品を1つたどる読み方、工業地帯が海ぞいに並ぶ理由、中小工場と大工場の資料問題、加工貿易から…
- 社会・約11分年表が読めない・世紀が分からない子への、家庭でできる教え方 ― 「何年か」より先に「どっちが先か」
歴史の用語は言えるのに、年表の問題や「何世紀ですか」で止まる――これは暗記量ではなく、時間を線として見る目が育っていないことが原因です。年表を読む順番、1900年が19世紀に…
- 社会・約12分社会のグラフや表が読み取れない子への、家庭でできる教え方 ― 答えは資料の「見出し」に書いてある
知識は覚えているのに、資料を見て答える問題だけ落とす――社会のグラフ・表の失点は、知識不足ではなく資料を見る順番が決まっていないことが原因です。目もりや単位を読む順番、問題文を資料の…
ほかの困りごとをさがす
記事の見出しと、本文の小見出しからさがします。