社会のグラフや表が読み取れない子への、家庭でできる教え方 ― 答えは資料の「見出し」に書いてある
2026年10月6日 更新📖 約12分で読めます
知識は覚えているのに、資料を見て答える問題だけ落とす――社会の資料問題には「読む・つなぐ・考える」の3段階があり、見る順番だけでなく、2つの資料をつなぐ手順と、事実と理由を分けて書く型が要ります。目もりや単位を読む順番、表の読み方、記述問題の型までをまとめました。
覚えているのに、資料の問題だけ落ちる
社会のテストを持ち帰ってきて、用語を書く問題は合っているのに、グラフや表を見て答える問題だけ×が並んでいる——これは高学年でとても多いパターンです。保護者からは「知識が足りないのでしょうか」と聞かれますが、多くの場合そうではありません。
資料の問題で落とす子は、資料を見る順番が決まっていません。いきなりグラフの線や棒の形だけを見て、なんとなくの印象で答えます。だから「増えている/減っている」までは合うのに、「いつから」「どれくらい」「何の量が」を問われたとたんに外れます。
逆に言えば、見る順番を1つ決めて渡すだけで得点が変わります。覚え直す必要はありません。手当てするのは知識ではなく手順です。ただし、順番さえ直してもまだ落とす子がいます。次の章で、その理由を1つにまとめます。
×の正体 ― 資料を「1枚の絵」として見てしまうこと
子どもが資料の問題でつまずくのは、知識が足りないからではありません。本当の原因は、資料を1枚の絵のように見てしまっていることです。
知識の問題は「覚えているかどうか」で答えられます。ところが資料の問題はちがいます。答えはそこに書いてあるのに、探して、つなげて、考えるという作業が要ります。子どもは知識クイズを解く感覚のまま資料を見るので、パッと見た印象(線が上がっている・円が大きい)だけで答えてしまい、求められている作業の種類を取りちがえます。
この取りちがえが見えると、手当ての仕方が変わります。「もっと資料を見せる」のではなく、資料にどんな種類の作業を求められているかを先に分けて渡すのが近道です。
資料の問いには「3段階」ある ― 読む・つなぐ・考える
資料の問題は、よく見ると3つの段階に分かれています。
- ①読む…資料に書いてあることばや数字を、そのまま取り出す(このあとの章で見る「見出し→単位→目もり→凡例→本体」の順番が、この段階の手順です)
- ②つなぐ…2つ以上の資料や数字をつなげて比べる(「資料1と資料2から分かることを書きなさい」)
- ③考える…①②で取り出した事実から、理由や影響を考える(「なぜ増えたと考えられますか」)
テストの×を見直すときは、まずどの段階で止まっているかを見分けてください。①が苦手な子に③の練習をさせても、土台が無いので積みあがりません。逆に①はできるのに③で毎回詰まる子に①の練習をくり返させても、伸びは止まったままです。ここからの章は、この3段階の順番で手当てを渡していきます。
最初に決めること:本体より先に、まわりを読む
まずは①「読む」を、迷わずできるようにする手順です。
子どもは資料を見ると、まず真ん中(棒・線・数字の並び)を見ます。ここを逆にします。まわりの文字を先に読み、本体は最後に見る——順番はこれだけです。
- ①題(見出し)を声に出して読む。「日本の漁かく量のうつりかわり」。ここに「何の量の話か」がそのまま書いてあります。答えの半分はここにあります。
- ②たての目もりを読む。数字ではなく、まず単位を読みます。「万トン」なのか「%」なのか。ここを飛ばすと、けたが10倍・100倍ちがう答えを平気で書きます。
- ③よこの目もりを読む。ふつうは年です。目もりが5年おきか10年おきかまで見ます。ここを見ないと「いつから」が答えられません。
- ④凡例(はんれい)を読む。線や色が2本以上あるときは、どれが何かを指で押さえます。
- ⑤最後に本体を見る。ここでようやく、形や数字を見ます。
①〜④で読むのは、たいてい10語ほどです。10秒で終わります。この10秒を入れるかどうかだけの差だと考えてください。
問題文は「資料のことばに置きかえる」
順番が身についても、まだ落とす子がいます。そういう子は、問題文と資料を別々のものとして見ています。ここでもう1つだけ手順を足します。
問題文の中のことばを、資料に書いてあることばに置きかえてから探すことです。たとえば「もっとも多くとれた年はいつですか」なら、「多くとれた」=たてじくの数字が大きいところ、「年」=よこじく、と置きかえます。置きかえてしまえば、探す場所が2か所に決まります。
- 「ふえた」「へった」→ 本体の向き(右上がり・右下がり)
- 「もっとも多い/少ない」→ たての目もりのいちばん上・下
- 「いつごろから」→ よこの目もり(向きが変わった場所)
- 「どれくらい」→ たての目もりを読む+単位をつけて答える
- 「くらべて」→ 凡例の2本を、同じ年の縦線で切って比べる
この置きかえを声に出させると、資料のどこを見ればよいかを自分で言えるようになります。答えが合っているかより、「どこを見た?」を聞くほうが練習になります。
つまずきやすい5つの型と、その手当て
- ①単位を見ていない:「120」とだけ答えて、「万トン」を書きません。手当ては、答えを書いたあとに「たてじくの一番上に何て書いてある?」と1回だけ聞くこと。数回で直ります。
- ②目もりの間をとばして読む:目もりが10きざみなのに、その中間の値を目もりの数字そのままで答えます。手当ては指を目もりから横にすべらせる動作。目で追わせず、必ず指を使わせてください。
- ③2本以上の線をとりちがえる:凡例を読んでいない型です。手当ては読む前に、線に鉛筆で名前を書きこませること。書きこみは禁止ではありません。
- ④「割合」と「量」を混ぜる:円グラフや帯グラフで、%なのに「増えた」と答えます。%は分け前の話で、全体の大きさは書いていない——ここは一度きちんとことばで伝える必要があります。高学年の算数の割合とつながる場所です。
- ⑤資料を見ずに、知っていることで答える:意外に多い型です。「農業といえば減っている」のような思いこみで答えます。手当ては「その答え、資料のどこに書いてある?」と指ささせること。指させないなら、それは資料から読んだ答えではありません。
5つを一度に直そうとしないでください。1回の見直しであつかうのは1つだけです。まず①と⑤から入ると、点の戻りがいちばん早く見えます。
「表(ひょう)」は、行と列で読む
ここまでの手順はグラフ用です。表になると、同じ手順が急に通じなくなる子がいます。表には目もりが無いからです。表は、別の1つの手順で読みます。
- 表は、行(よこの並び)と列(たての並び)が交わったところに、1つの数字が決まっています。
- 最初に見るのは見出し行(いちばん上の行)と見出し列(いちばん左の列)。ここに「行は何を表すか」「列は何を表すか」が書いてあります。
たとえば「クラス32人に聞いた『好きな教科』調べ」の表で、行の見出しが「4年・5年・6年」、列の見出しが「国語・算数・理科・社会」だとします。「5年生で算数が好きな人は何人ですか」と聞かれたら、まず見出し行から「5年」の行に指を1本置き、次に見出し列から「算数」の列に指をもう1本置きます。2本の指が交わったマスの数字が答えです。
手当ては指を1本ずつ置かせることです。目で追うだけだと、1つ横や1つ下の行・列を読んでしまいます。答えが出たら、合計の検算も効きます。国語8人・算数10人・理科6人・社会8人なら、8+10+6+8=32人でクラス全員と一致します。合計が合わないときは、どこかの行か列を読みちがえています。
「つなぐ」問題 ― 2つの資料を、同じ年で切って比べる
②「つなぐ」問題は、「資料1と資料2を見て、分かることを書きなさい」という形で出ます。たとえば資料1が「ある県の米の生産量のうつりかわり」(折れ線)、資料2が「同じ県の人口のうつりかわり」(折れ線)だとします。見た目は別のグラフですが、よこじく(年)が同じなら、1本の線としてつなげられます。
- ①資料1・資料2のそれぞれで、まず①「読む」を済ませる(単位・目もりを先に確認)
- ②よこじく(年)をそろえて、同じ年のたてのラインで両方のグラフを縦に切る
- ③その年のそれぞれの値を、1つの文でならべる(「1990年は生産量が多く、人口も多かった」)
- ④変化の向きが同じか逆かを言わせる
具体的な数字で確かめると分かりやすくなります。1990年と2020年を比べて、生産量が500万トン→300万トン(40%減)、人口が80万人→95万人(約19%増)だったとします。生産量は減っているのに、人口は増えている――向きが逆だと分かれば、「なぜ逆の動きになったのでしょうか」という「つなぐ+考える」の複合問題にも入っていけます。
「考える」記述問題 ― 事実と理由を2文に分ける
③「考える」記述問題(「なぜこのような変化が起きたと考えられますか」)で止まる子は、たいてい事実と自分の考えを混ぜて書いています。資料に書いてある事実と、自分で考えた理由を、同じ重さで扱ってしまうからです。
渡す型は2文だけです。「(資料の事実)。だから、(考えた理由)と考えられます。」
例:「米の生産量は1990年から2020年にかけて40%減っている。だから、農業で働く人が減ったか、ほかの仕事に移る人が増えたと考えられる。」
前半の事実は、必ず資料の中のことばで書けるかを確認させてください(「このまま資料のどこかに書いてありますか」)。後半の理由は、資料に書いてなくてかまいません――そこが「考える」部分です。事実には下線、理由には波線を引かせると、2つを混ぜて書かなくなります。
家庭では、教科書の資料を1つ使えば足ります
特別な問題集はいりません。教科書や資料集を開いて、載っているグラフを1つ選ぶだけで練習になります。
- 親が問題を作らない。「このグラフで分かることを1つ言って」とだけ言います。作問より、子どもに言わせるほうが速いです。
- 1つ言えたら「どこを見た?」と聞く。指させたら合格です。合っているかどうかは二の次でかまいません。
- 時間は1分。資料1つ、発言1つで終わります。毎日でなく、宿題のついでに週に2〜3回で十分です。
ニュースの天気や物価のグラフでも同じことができます。ただし、テストと同じ形(たて・よこに目もりがあるグラフ)を主に使ってください。デザインされた図は目もりが省かれていることが多く、練習になりません。
資料集に表やもう1つのグラフが載っているなら、たまに②「つなぐ」の練習も混ぜてください。「このグラフとこの表、同じ年のところを見るとどうなってる?」と聞くだけで十分です。
やり方は、短く残しておく
資料の読み取りは、社会だけの技術ではありません。理科の実験結果、算数のグラフ、国語の説明文の図表——すべて同じ手順で読めます。今回うまくいった手順を一行だけ残しておくと、ほかの教科で困ったときにも戻ってこられます。「題→たての単位→よこの目もり→凡例→本体」「答えたら、どこを見たか指さす」——この程度で十分です。
ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次に同じ形で落としたときに思い出せる形で残っていることです。
学年をまたいで効く合いことば
学年をまたいで効くのは、たった1つの問いかけです。「それ、資料に書いてあること? それとも、考えたこと?」
資料の問題でも、記述の答えでも、この1文を聞くだけで、子どもは自分の答えがどの段階にあるかを自分で言い直せるようになります。①②の答えなら「資料に書いてある」、③の答えなら「考えた」。迷ったら、この1文に戻ってください。
よくある質問
Q1.表(ひょう)の問題になると、グラフよりも手が止まります。なぜですか。
表には目もりが無いため、グラフで身につけた「たてよこの目もりを読む」手順がそのまま使えないからです。表は目もりではなく行と列で読みます。先に見出し行・見出し列を確認し、指を1本ずつ置いて交わるマスを探す手順を渡してください。
Q2.「資料1と資料2から分かることを書きなさい」という問題がいつも白紙になります。
①「読む」はできても②「つなぐ」の手順を持っていないサインです。2つの資料のよこじく(年など)をそろえて、同じ年で縦に切って両方の値を1つの文で並べる練習をしてください。変化の向きが同じか逆かを言わせるところから始めると入りやすいです。
Q3.記述問題で、資料に書いてあることと自分の考えを混ぜて書いてしまいます。
「(資料の事実)。だから、(考えた理由)と考えられます。」の2文の型を渡してください。前半は資料のどこかに書いてあるか確認させ、後半は書いてなくてよい部分だと伝えると、2つが混ざらなくなります。
Q4.どの段階でつまずいているか、家庭でどう見分ければいいですか。
答えを聞くより、「どこを見た?」と聞いてみてください。資料の場所を指させれば①②は大丈夫です。指させないのに答えている場合は、資料を見ずに知っていることで答えている可能性があります(5つの型の⑤)。「だから」の後ろだけ詰まる場合は③「考える」の練習が必要です。
まとめ
社会の資料問題で落とすのは、知識が足りないからではなく、資料を1枚の絵として見てしまい、求められている作業の種類を取りちがえているからです。資料の問いには①読む・②つなぐ・③考えるの3段階があり、×が出たらどの段階で止まっているかを見分けます。①は、本体より先に題→たての単位→よこの目もり→凡例の順でまわりの文字を読む10秒と、問題文を資料のことばに置きかえる手順、そして表では行と列で読む手順。②は、2つの資料を同じ年で縦に切って比べる手順。③は、「(事実)。だから、(理由)と考えられます。」の2文で事実と理由を分ける型です。迷ったら、「それ、資料に書いてあること?考えたこと?」の1文に戻ってください。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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