「ふりこの運動」でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 速さを決めているのは、おもりでもふれはばでもなく糸の長さ
📖 約8分で読めます
5年理科の「ふりこの運動」は、答えだけ見れば「1往復の時間は糸の長さだけで決まる」の一行です。それでも多くの子が「重いほうが速い」と答えます。重さとふれはばが効かない理由の伝え方、10往復をはかって10でわるやり方、そしてこの単元の本当のねらいである「変える条件は1つだけ」までまとめました。
「重いおもりのほうが、速くふれる」と答えてしまう
5年の「ふりこの運動」は、結論だけ書くと一行で終わります。ふりこが1往復する時間は、糸の長さだけで決まる。おもりの重さを変えても、ふれはば(ふる角度)を変えても、1往復の時間は変わりません。
ところが、授業で実験をしたあとでも、テストで「おもりを重くすると1往復の時間はどうなりますか」と聞かれて「短くなる」と書いてしまう子がとても多い単元です。これは覚え忘れではありません。日ごろの感覚が、そう答えさせています。重い物を落とすと速そうに見える、強くふったほうが勢いよく動いて見える ― そちらのほうが体験として強いので、実験の結果より先に出てきてしまいます。
だから家庭でやることは、答えを覚え直させることではなく、「何が速そうに見えたのか」と「1往復の時間」は別物だと分けてやることです。ここが分かれると、この単元は一気に軽くなります。
「速い」と「1往復の時間」を、まず分ける
ふれはばを大きくしたふりこは、たしかに速く動いて見えます。実際、いちばん下を通るときの速さは大きくなっています。子どもの目は正しいのです。
けれど、ふれはばを大きくすると通る道のりも同じだけ長くなります。速くなった分だけ長い道を通るので、行って帰ってくるまでの時間は変わりません。ここを次の一言で渡すと、多くの子が止まります。
「速くなったんじゃなくて、遠回りして速くなっただけ。だから帰ってくる時間は同じ」
重さも同じ考え方で片づきます。重いおもりは動かしにくいぶん、引っぱる力も同じだけ強くなっています。強く引かれるけれど、そのぶん重くて動きにくいので、結局おたがいに打ち消し合います。小学生に力学の式を出す必要はありません。「重いと、引っぱる力も強くなるけど、動かしにくさも同じだけ増えるから、引き分けになる」で十分に通ります。
残るのは糸の長さだけです。糸が長いふりこは、同じ角度でも通る道のりがずっと長くなります。こちらは道のりだけが長くなって、打ち消してくれる相手がいないので、まるごと時間に効きます。だから「長いふりこはゆっくり、短いふりこはせわしない」となります。
家でのはかり方 ― 1往復をはからせない
家で確かめるのは簡単です。たこ糸とナット(または消しゴム)とスマホのストップウォッチがあれば足ります。ドアの取っ手やカーテンレール、物干しざおなど、糸をぶら下げられる場所ならどこでもかまいません。
ただし1つだけ、必ず守らせたいやり方があります。
1往復をはからず、10往復をはかって、10でわる。
1往復は1〜2秒しかないので、ストップウォッチを押すタイミングのズレがそのまま結果を壊します。0.2秒ずれただけで、まったくちがう結論になってしまいます。10往復まとめてはかれば、同じ0.2秒のズレも10でわられて0.02秒になります。はかる回数を増やすのではなく、1回で長くはかるのがコツです。学校でもこの手順でやりますが、なぜそうするのかは説明されないまま終わりがちなので、家で一言そえるだけで「なるほど」になります。
そのうえで、次の3つを順にやってみせます。
- ① おもりの重さだけを変える(ナット1個 → 3個。糸の長さもふれはばもそのまま)→ 時間はほぼ変わらない
- ② ふれはばだけを変える(小さくふる → 大きめにふる。糸もおもりもそのまま)→ 時間はほぼ変わらない
- ③ 糸の長さだけを変える(25cm → 100cm。おもりもふれはばもそのまま)→ はっきり長くなる
③で糸を4倍にすると、1往復の時間はだいたい2倍になります。「4倍にしたのに2倍」というのは小学校では扱いませんが、実際にそうなるので、子どもが「あれ、4倍じゃないの?」と言ったら、それはちゃんと見ている証拠です。「長さを4倍にすると時間は2倍。中学や高校でその理由をやるよ」で返しておけば十分です。
この単元の本当のねらいは「変える条件は1つだけ」
ふりこは、結論そのものより確かめ方を学ぶために置かれている単元です。5年理科では「条件を制御する」と呼ばれ、6年の実験や中学以降の理科、さらに自由研究のまとめ方まで、ここでの考え方がそのまま使われます。
ルールは1つです。調べたいものを1つだけ変えて、ほかは全部そろえる。
テストで点を落とすのは、たいていここです。たとえば「おもりを重くしながら、糸も長くした実験」の表を見せられて、「この実験で、重さが時間に関係あるか分かりますか」と聞かれる。答えは「分からない」です。時間が変わったとしても、重さのせいなのか糸のせいなのか、区別できないからです。
この「分からない」が書けない子は多いのですが、家では実験の器具がなくても練習できます。生活の場面でそのまま作れるからです。
- 「きのうのカレーのほうがおいしかった。でも、ルウも変えたし、煮こむ時間も変えた。ルウのおかげって言える?」
- 「新しい消しゴムにしたらテストが良かった。でも、その日はよく寝ていた。消しゴムのおかげ?」
- 「速く走れる靴を買って、しかも毎日練習した。速くなったのは靴のおかげ?」
どれも答えは「分からない」です。この「分からない、と答えるのが正解の問い」に慣れておくと、ふりこの表を見たときに同じ形が見えるようになります。理科で「どちらのせいか分からない実験」を見抜けることは、そのまま広告や口コミを読むときの力にもなります。
つまずきやすい4つのポイント
- 1. 糸の長さを、どこからどこまで数えるか:ふりこの長さは、支点(ぶら下げた点)から、おもりの中心までです。糸の端までではありません。おもりを2個つなげて下に伸ばすと、重さだけを変えたつもりで長さも変えてしまうことになります。おもりを増やすときは、下に足さず、同じ場所に重ねるのが正しいやり方です。ここは実験そのものが失敗する原因になるので、家で確かめるときも最初に伝えておきます。
- 2. 「1往復」がどこまでか:行って、帰ってきて、元の位置にもどるまでで1往復です。片道を1回と数えると、答えがちょうど半分になります。数えはじめは、おもりがいちばん高い位置(手をはなす位置)にそろえると数えまちがえません。
- 3. ふれはばを大きくしすぎる:角度をとても大きくすると、実際には1往復の時間が少しずつ長くなっていきます。小学校の実験は「ふれはばは小さめに」という前提で成り立っているので、ふる角度は20度くらいまでにします。ここを守らないと「ふれはばでも変わったよ」という結果が出てしまい、子どもが混乱します。
- 4. 表のどこを見るか分からない:ふりこの表は、行と列に「重さ」「長さ」「ふれはば」「時間」がならびます。読むときは、まず時間以外の列を横に見て、どこが1か所だけちがうかを指で探す。ちがうところが1つなら比べられる、2つ以上なら比べられない ― これだけで、表の問題はほぼ解けます。
ふりこが分かると、身のまわりが1つつながる
糸の長さだけで時間が決まるという性質は、正確にくり返したい道具にそのまま使われています。ふりこ時計は、ぜんまいがゆるんでも、ふりこの長さが同じである限り同じリズムをきざみます。時計が少し進む・遅れるときに調整するのは、おもりの重さではなくふりこの長さです。
反対に、ブランコは座っている人の体重が変わっても1往復の時間は変わりません。立ちこぎで速くなったように感じるのは、体を上下させてふりこの長さを短くしているからです。公園で「立つと、ひざの分だけ短いふりこになるんだよ」と言えると、その日のうちに体で分かります。メトロノームのおもりを上げ下げしてテンポを変えるのも、まったく同じしくみです。
単元の結論を覚えさせるより、この3つのうち1つを実際に見せるほうが、記憶としてははるかに長持ちします。
まとめ
ふりこで「重いほうが速い」と答えてしまうのは、覚え忘れではなく、目に見える速さと1往復の時間を同じものだと思っているからです。ふれはばを大きくすると速くなるが、そのぶん遠回りになるので時間は同じ、重くすると引っぱる力も強くなるが、そのぶん動かしにくいので引き分け、長さだけは打ち消す相手がいないので、まるごと時間に効く ― この3本で説明がつきます。家で確かめるときは1往復をはからず10往復を10でわり、変えるのは1回につき1か所だけ。おもりを増やすときは下に足さず同じ場所に重ねます。そして、この単元の本当のねらいは結論ではなく「変える条件は1つだけ、あとはそろえる」という確かめ方のほうです。ここが入ると、6年の実験も自由研究も、ぐっと書きやすくなります。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
あわせて読みたい
- 理科・約9分「水よう液の性質」でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― リトマス紙は4つ覚えず、「変わった先の色」1本にする
6年理科の「水よう液の性質」は、リトマス紙の赤青をどちらも覚えようとして混ざります。覚えることを1本に減らす言いかえ、蒸発させて何も残らない水よう液の理由、金属がとけたあとは…
- 家庭学習・約9分自主学習ノートに何を書けばいい? ― 「ネタがない」で毎晩止まる子への、家庭での決め方
自主学習(自学)ノートの宿題で、毎回「何を書けばいいか分からない」と手が止まる。原因はネタ不足ではなく、自主学習を「新しいこ…
- 理科・約8分「こん虫」でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 見分ける決め手は、あしの本数ではなく「どこから出ているか」
3年理科の「こん虫のからだとそだち」は、あしを6本数えて終わりにしがちですが、点を落とすのはそこではありません。クモやダンゴムシをこん虫に入れてしまう見分け方、さなぎに…
ほかの困りごとをさがす
記事の見出しと、本文の小見出しからさがします。