理科の「もののとけ方」を家庭で体感するコツ
2026年10月5日 更新📖 約9分で読めます
小学5年生の理科「もののとけ方(水よう液)」は、実験そのものは楽しいのに、テストになると急に点が取れなくなることで有名な単元です。原因ははっきりしていて、「とける」という言葉が、子どもの頭の中で「消える」と同じ意味になっているから。とけた物は消えたのではなく、見えないほど小さなつぶになって水の中に散らばっている──この1枚の絵さえ持てば、重さの計算も、とけ残りも、温度の問題も、ぜんぶ同じ絵で解けます。材料は食塩・砂糖・水と、すべて台所にあるものばかりです。
どこでつまずく? ― 「実験は楽しいのに」4つの顔
- 「水よう液の重さ」の計算でとかした分を足し忘れる…水150g+食塩25gなのに、答えに150gと書いてしまう
- 「いくらでもとける」と思っている…とけ残りが出る、という問題の場面が想像できない
- 温度のひっかけに落ちる…「あたためればよくとける」と丸暗記して、食塩の問題でまちがえる
- ろ過や蒸発の問題で迷子になる…とけた物が「今どこにあるのか」が分からなくなる
4つは別々の失敗に見えて、根っこは1つです。どれも、とけた物が見えなくなっただけで水の中にある、という絵を持たないまま、言葉と結果だけを覚えようとしている症状です。絵が1枚あれば、4つとも同じ絵から答えが出せます。
×の正体 ― 「とける」が「消える」と同じ言葉になっていること
ふだんの生活で、子どもが「とける」という言葉に出会うのは、雪がとける・氷がとける・アイスがとける、のような場面です。どれも目の前から形がなくなっていく経験なので、「とける=消えてなくなる」という感覚が先にできあがっています。食塩が水の中で見えなくなれば、「消えた」と受け取るのはごく自然なことなのです。
でも理科の「とける」はちがいます。とけた食塩は、目に見えないほど小さなつぶになって、水全体に散らばっているだけ。なくなってはいません。コップの絵をかいて、中に小さな点をまんべんなく散らす──たったこれだけの1枚の絵が、この単元の全部の問題の土台になります。重さが変わらないのは、つぶがコップの中にぜんぶ残っているから。とける量に限りがあるのは、水の量に対して散らばれるつぶの数に限りがあるから。じょう発させると出てくるのは、水だけが出ていってつぶが残るから。
家庭でかける言葉は、「ちゃんと覚えなさい」ではなく「なくなったの? 見えなくなっただけ?」の一言です。この問いが、見えないつぶを想像するスイッチになります。
キッチンスケールで「消えていない」を数字で見る
絵を信じさせる一番の近道は、キッチンスケール(料理用のはかり)です。数字は子どもに言い訳をさせません。
- フタつきの容器に水を入れ、容器ごとはかりに乗せて重さをメモ
- 食塩を5g入れて、まだかき混ぜずにもう一度重さをメモ(5g増えているはず)
- フタをしてよく振り、食塩が見えなくなってから3回目の重さをメモ
3回目の数字が2回目と同じ──見えなくなったのに、重さは1gも減っていない。これが「消えていない」証拠です。テストに出る「水よう液の重さ=水の重さ+とかした物の重さ」という式は、このはかりの3回の数字のことを言っているだけです。式として丸暗記するのではなく、「あのとき重さが減らなかった」という体験に式のほうをつなげてください。
「とけた」と「まざった」は、すき通っているかで見分ける
「水よう液」と呼べるのは、とけた液だけです。見分ける目じるしは3つあります。
- すき通っている(色がついていても、向こうが透けて見えればよい)
- こさがどこも同じ(上のほうだけこい、ということがない)
- 時間がたっても、下にたまらない
台所なら、食塩水とかたくり粉の水を並べるだけで確かめられます。かたくり粉は白くにごり、しばらく置くと下にしずむ──これはとけていない(まざっているだけ)。食塩水はすき通ったまま、何時間たっても下にたまりません。「にごっているか」「しずむか」の2つを見れば、子ども自身が判定できます。テストで「水よう液はどれですか」と問われたときの判断基準そのものです。
とける量には限りがある ― スプーンで数えるだけ
授業では「水の量を増やすと、とける量も増える」と習います。そこだけ覚えると「じゃあ無限にとけるのでは」と混ざるので、限りがあることを先に体験させます。やり方は、コップの水に食塩をスプーンで1杯ずつ足していき、とけ残りが出るまで数えるだけ。「何杯目でとけ残った?」の数字が記録です。
次に、水をちょうど2倍にして同じことをやると、とけた杯数もおよそ2倍になります。水が2倍なら、つぶが散らばれる場所も2倍──s2の絵のとおりの結果です。この「2倍・3倍で見る」くらべ方は、算数の割合の考え方そのものなので、理科の実験が算数の練習台にもなります。
食塩と砂糖をくらべて「物によってちがう」を見る
同じことを砂糖でやると、今度は物によってとける量がまるでちがうことが見えます。めやすとして、20℃の水100mLに食塩はおよそ36gでとけ残りが出ますが、砂糖はおよそ200g──びっくりするほどとけます。スプーンで数えていると、子どものほうから「砂糖、まだとけるの!?」と声が上がります。
「とける量は、水の量と、とかす物の種類で決まる」。この単元の重要ポイントが、2つの表を見比べるだけで納得できます。あとで出てくる温度の話も、「物によってちがう」の続きとして聞けるようになります。
温度のひっかけ ― 食塩はあたためてもほとんど増えない
「水の温度を上げるととける量が増える」と丸暗記していると、食塩は温度を上げてもほとんど増えないという定番のひっかけに落ちます。学校の実験でミョウバンを使うのは、ミョウバンが「温度でぐんと増える」代表だから。テストはこの2つを対比で出してきます。
家庭での確かめ方は、ぬるま湯(お風呂くらい)と冷たい水で、食塩が何杯とけるかを比べるだけ。思ったほど差がつかないという結果に、子どもはかなり驚きます。「あたためれば増えるんじゃなかったの?」という驚きこそが、「増え方は物によってちがう」を一生忘れない形で焼き付けます。安全のため、湯はやけどしない温度にとどめ、火を使って煮つめる実験は家庭では行わないでください(学校の実験でカバーされます)。
とかした物の取り出し方 ― 「もどってくる」で絵が完成する
とけた物を取り出す方法は2つ、冷やすとじょう発させるです。どちらを使うかは s7 とつながっています。ミョウバンのように温度でとける量が大きく変わる物は、冷やせばとけきれなくなったつぶが出てきます。食塩は冷やしてもほとんど出てこないので、水のほうを減らす=じょう発させるしかありません。
家庭なら、こい食塩水を小皿にすこし入れて、窓ぎわに数日置いておくだけ。水が少しずつじょう発して、白いつぶがもどってきます。「消えたんじゃなくて、ずっと水の中にいたんだ」──s2でかいた絵が、ここで目の前の実物になって完成します。数日かかる変化を記録する要領は観察を楽しく続けるコツと同じです。
ろ過の問題もこの絵で解けます。とけ残りのつぶは大きいのでろ紙に残り、とけたつぶは目に見えないほど小さいのでろ紙を通りぬける。「ろ過した液はしょっぱいか?」という問いに、絵を持っている子は迷わず「しょっぱい(とけた塩は通りぬけたから)」と答えられます。
記録は「じょうけん・予想・結果」の3列の表にする
この単元の実験は、結果が数字で出るのが強みです。ノートに「じょうけん(水の量・温度)」「予想」「結果」の3列の表を作って書き込んでいけば、それだけでテスト前の最高の復習材料になります。ポイントは、実験の前に「予想」をうめておくこと。予想が外れたところこそ、その子が本当につまずいていた場所で、そこだけ見直せば得点は伸びます。
「予想 → やってみる → ちがったところを見直す」という流れは、じつは理科に限らず、あらゆる勉強の型そのものです。まちがえたところを記録して次に生かす練習は、さくせんノートのような振り返りの仕組みとも相性がよく、日々の学習にそのまま持ち込めます。
家の実験をテストの言葉に翻訳する
最後に、台所の体験をテストの言葉につなぎ直します。よく出る形は3つです。
- 「水150gに食塩25gをとかした水よう液の重さは?」…はかりの3回の数字を思い出す→175g。容器の重さが書いてある問題は、先に引く
- 「とけ残りをとかすには?」…水を増やす/温度を上げる、の2択。ただし食塩なら温度はほとんどきかない、まで書けると満点
- 「とけた物を取り出すには?」…ミョウバンなら冷やす、食塩ならじょう発させる。理由は「温度で増え方がちがうから」
スプーンの杯数の表は、ぼうグラフにすれば夏休みの自由研究にそのまま格上げできます。まとめの組み立て方は自由研究を最後までまとめきるコツが、家庭実験の約束ごとは実験を家庭で安全に楽しむコツが、そのまま使えます。
よくある質問
Q1.かたくり粉を水に入れたら白くにごりました。これも「とけた」ですか?
とけていません。まざっているだけです。見分け方は3つ──すき通っているか・こさがどこも同じか・時間がたっても下にたまらないか。かたくり粉は白くにごって、置いておくと下にしずむので、水よう液ではありません。この「はずれの例」を1回見ておくと、テストで「水よう液はどれ?」と問われたときに迷わなくなります。
Q2.テストは食塩ばかり出ます。砂糖で練習しても意味がありますか?
あります。砂糖は「物によってとける量がちがう」ことを見せる最高の相手役です(同じ水で食塩の5倍以上とけます)。ただし温度の問題は食塩とミョウバンの対比で出るので、「食塩は温度を上げてもほとんど増えない」の1点だけは、ぬるま湯と冷水の比べっこで食塩のまま体感させておいてください。
Q3.実験に使った食塩水や砂糖水は、飲ませてもいいですか?
飲まない約束にしてください。台所の材料でも、「実験に使った物は口に入れない」を家庭でのルールにしておくと、学校で薬品を使う実験が始まったときに、安全の習慣がそのまま生きます。残った液は流しに流してかまいません。使った容器は食器と分けて洗うと、より安心です。
Q4.「水よう液の重さ」の計算問題を毎回まちがえます
式を教え直すより、はかりの3回の数字を思い出させるほうが早く直ります。「食塩を入れたとき、重さはどうなった?」「とけたあと、減った?」と聞けば、水+とかした物、は子どもが自分で言えます。まちがえるのは式を忘れたからではなく、「とけたら軽くなる気がする」という消える感覚が残っているからです。
まとめ
この記事を短くすると、こうなります。
- ×の正体は、「とける」が「消える」と同じ言葉になっていること。とけた物は見えないつぶになって水の中に散らばっている──この1枚の絵がすべての土台。
- かける言葉は「なくなったの? 見えなくなっただけ?」。証拠ははかりの3回の数字(重さは減らない)。
- とける量には限りがある。水2倍で杯数もおよそ2倍、ただし物の種類でまるでちがう(砂糖は食塩の5倍以上)。
- 温度の効きめも物しだい──食塩はほとんど増えない。だから取り出すときは、ミョウバンは冷やす・食塩はじょう発。
- 記録はじょうけん・予想・結果の3列。予想が外れた行こそ、見直す場所。
特別な器具はいりません。キッチンスケールとコップとスプーンが、そのまま教科書の続きです。小皿の食塩水から白いつぶがもどってきた日、「とける」は「消える」から完全に切りはなされます。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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