慣用句・ことわざが覚えられない子への、家庭でできる教え方 ― 一覧で丸暗記させる前に「体の部分」と「言いたいこと」でまとめる
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慣用句やことわざを一覧で暗記させても、テストが終わると残りません。字のとおりに読んでしまう子には、意味を教える前に「これは本当の話ではない」と線を引くのが先です。慣用句は体の部分ごと、ことわざは言いたいことごと、四字熟語は数字から入る ― という3つのまとめ方と、「情けは人のためならず」型の取りちがえ、家で1日1つ使ってみせる練習までまとめました。
覚えられないのではなく、意味が「見えていない」
慣用句やことわざのプリントで、こういう答えを見たことがあると思います。
- 「油を売る」の意味は? →「あぶらやさんではたらく」
- 「手をやく」の意味は? →「やけどをする」
- 「馬の耳に念仏」の意味は? →「馬がお経を聞いている」
まちがえてはいますが、読み方としては筋が通っています。書いてある字のとおりに読んだだけだからです。子どもがつまずいているのは記憶力ではなく、「この言葉は、書いてあるとおりの話ではない」と気づくところです。ここを飛ばしたまま一覧を渡して覚えさせると、テストの前だけ入って、終わると全部抜けます。
だから家でやることは順番が決まっています。①これはたとえだと線を引く →②仲間ごとにまとめる →③使ってみる。覚えるのはいちばん最後です。
まず、3つは別のものだと分けて置く
教科書やドリルでは「ことわざ・慣用句・四字熟語」がひとまとめに出てきますが、子どもにとっての難しさも、覚え方も違います。最初に3つを分けておくと、あとの整理がぐっと楽になります。
- 慣用句=2つ以上の言葉がくっついて、別の意味になったもの。「手をやく」「顔が広い」。教えごとは入っていません。ただの言いかえです。
- ことわざ=昔の人からの短いアドバイス。「急がば回れ」「ちりも積もれば山となる」。「こうしたほうがいいよ」という中身があるのが慣用句との違いです。
- 四字熟語=漢字4つでできた言葉。「一石二鳥」「十人十色」。形で見分けられるので、いちばん見分けやすい。
見分け方は1つだけ渡せば足ります。「これは、どうしたらいいか教えてくれている?」。教えてくれていればことわざ、ただの言いかえなら慣用句、漢字4文字なら四字熟語。テストで「次のうち、ことわざはどれか」と聞かれる形にも、これで答えられます。
慣用句は「体の部分」でまとめると、一気に増える
慣用句は数が多いので、一覧の上から順に覚えると必ず途中で力尽きます。ところが、よく出るものの多くは体の部分を使っています。体ごとにまとめ直すと、1つ覚えるたびに近くのものも一緒に入ります。
- 目:目が高い(見分ける力がある)/目を通す(ざっと読む)/目がない(大好き)
- 手:手をやく(あつかいに困る)/手がかかる(世話が必要)/手を貸す(手伝う)
- 耳:耳が痛い(聞いていてつらい)/耳にはさむ(ちらっと聞く)/耳をかたむける(よく聞く)
- 口:口が軽い(すぐしゃべる)/口が固い(言わない)/口をはさむ(話にわりこむ)
- 足:足がぼうになる(歩きすぎてつかれる)/足を洗う(悪いことをやめる)/足が出る(お金が足りない)
- 頭・顔・鼻:頭が下がる(りっぱだと思う)/顔が広い(知り合いが多い)/鼻が高い(じまんに思う)
ここで手を貸すなら、意味を言うより「体のその部分は、本当は何をする所か」を先に聞くことです。耳は聞く所だから、耳の慣用句はぜんぶ「聞く」の話。口はしゃべる所だから、口の慣用句はぜんぶ「しゃべる」の話。この一言があるだけで、知らない慣用句が出てきても半分は当てられるようになります。「耳が痛い」を初めて見た子でも、「耳=聞く」から「聞いてつらい」まではたどりつけます。
ことわざは「言いたいこと」でまとめる
ことわざは短いアドバイスなので、アドバイスの中身ごとに箱を作って入れます。あいうえお順の一覧は、覚えるためではなく調べるための並びです。
- あわてるな:急がば回れ/急いては事を仕損じる
- 少しずつでも続けろ:ちりも積もれば山となる/石の上にも三年/千里の道も一歩から
- 言ってもむだなことがある:馬の耳に念仏/ねこに小判/ぶたに真珠
- 油断するな:さるも木から落ちる/かっぱの川流れ/弘法にも筆の誤り
- やってみないと分からない:案ずるより産むがやすし/習うより慣れろ
同じ箱に入るものが3つ並んでいるのが大事です。「馬の耳に念仏」「ねこに小判」「ぶたに真珠」は、出てくる動物も物も違いますが言いたいことは1つ。ここに気づくと、子どもは3つを別々に覚えるのをやめます。テストで「にた意味のことわざを選べ」という問題が出るのも、まさにこの箱を聞いているからです。
つまずき① 字のとおりに読んでしまう
冒頭の「油を売る=あぶらやさん」型です。これは意味を言って直すより、場面を1つ足すほうが早く消えます。
- 「おつかいに行った兄が、1時間たっても帰ってこない。どこかで油を売っているんじゃないの」
- 「弟がまた同じことでけんかをする。お母さんは手をやいている」
文の中に置くと、本当に油を売っているわけがないことが子ども自身に分かります。言葉だけを見せると字のとおりに読み、場面ごと見せるとたとえだと気づく ― この差が大きいので、家では短い文をひとつ添えて渡すのを習慣にします。
なお「油を売る」の由来(昔、油を量り売りする人が客と長話をしていたこと)のような話は、覚えたあとのおまけにしてください。先に由来から入ると、覚えることが2倍になります。
つまずき② 形が似ていて、意味が逆になるもの
大人でも取りちがえる有名なものが、いくつかテストに出ます。ここは数が少ないので、出るものだけ先に確認しておくのが効きます。
- 情けは人のためならず:×「その人のためにならない」/○「人にかけた情けは、めぐって自分に返ってくる」。「ならず」が「ためにならない」ではなく「その人のためだけではない」の意味です。
- 役不足:×「力が足りない」/○「その役のほうが軽すぎる」。力が足りないのは「力不足」。
- 気が置けない:×「油断できない」/○「気をつかわなくていい=仲がいい」。
- さわらぬ神にたたりなし:○「よけいなことに手を出さなければ、面倒も起きない」。「神様は怖い」の話ではありません。
前の3つは打ち消しの言葉がどこにかかっているかでひっくり返ります。「ならず」「不足」「置けない」が何を打ち消しているのかを、指でさして1回確かめる。これは敬語で主語を指させるやり方とまったく同じ手順で、国語のつまずきはこの「かかり先を見ない」型が多いところです。
四字熟語は、数字のあるものから入る
四字熟語は漢字が多く見た目が難しいのですが、数字が入っているものは意味がそのまま読めます。ここを入り口にすると、子どもは「読めば分かるものもある」と気づきます。
- 一石二鳥:石1つで鳥2わ=1つのことで2つ得をする
- 十人十色:10人いれば10の色=人それぞれちがう
- 一長一短:いい所が1つ、わるい所が1つ=どちらもある
- 三日坊主:3日でやめてしまう
- 四苦八苦:とても苦労する
数字が入っていないもの(以心伝心・自画自賛・臨機応変など)は、数字組が読めるようになってからで十分です。順番を守るだけで、四字熟語は「暗記の山」ではなくなります。
家でやる練習は、1日1つ・使ってみせるだけ
覚えるための時間を新しく作る必要はありません。親が会話の中で1日1つ使い、意味を聞かれたら答える。これがいちばん残ります。
- 使ってみせる:「宿題、手をやいてるね」「お父さんはケーキに目がないからね」
- 1つだけ貼る:冷蔵庫に今週の1つを貼り、金曜に「これ、どういう意味だっけ」と聞く。1週間に1つで年50個です。
- 自分で1文つくらせる:意味を言えたら、その言葉を使った文を1つ作らせる。作れたら本当に入っています。言えるだけなら、まだ入っていません。
やらないほうがいいのは、一覧を書き写させることです。書き写しは手は動きますが、意味を考えなくても終わってしまうので、時間のわりに残りません。同じ10分を使うなら、5つを書き写すより1つで文を作るほうが強いです。
テストでの出方と、見直し1つ
小学校のテストでの出方は、だいたい次の3つです。
- 意味を選ぶ:「顔が広い」の意味を選ぶ。→ 体の部分から当たりをつける。
- にた意味のものを選ぶ:「馬の耳に念仏」と同じ意味は? → 箱(言いたいこと)で選ぶ。
- あてはまる言葉を書く:「弟のせわで、母は( )をやいている」→ 文の場面から選ぶ。
見直しは1つで足ります。書いた言葉を、その文にもどして声に出して読む。 「弟のせわで、母は耳をやいている」は、読めばおかしいと分かります。慣用句のまちがいは、意味を思い出せないときより体の部分を取りちがえたときに起きるので、読み返すだけでかなり拾えます。
まとめ
慣用句やことわざが残らないのは、覚える力の問題ではなく、「書いてあるとおりの話ではない」と気づいていないからです。まず3つを分けます ― 慣用句はただの言いかえ、ことわざは短いアドバイス、四字熟語は漢字4文字。慣用句は体の部分ごとにまとめ、「耳=聞く」「口=しゃべる」と部分の役割を先に確認すると、知らないものも半分当てられます。ことわざは言いたいことの箱(あわてるな/続けろ/言ってもむだ/油断するな)でまとめると、「にた意味を選べ」にそのまま効きます。字のとおりに読む子には意味より場面の1文を添え、「情けは人のためならず」型は打ち消しがどこにかかるかを指で確かめる。四字熟語は数字の入ったものから。練習は一覧の書き写しではなく、1日1つ使ってみせて、1つ文を作らせる。見直しは文にもどして声に出すの1回だけで足ります。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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