敬語がごちゃごちゃになる子への、家庭でできる教え方 ― 尊敬語と謙譲語は「だれが動いたか」だけで見分ける
2026年10月11日 更新📖 約9分で読めます
敬語のプリントで「先生が申しました」「私がおっしゃいます」と書いてしまうのは、言葉を覚えていないからではなく、動いた人を見ていないからです。ていねい語・尊敬語・謙譲語の3つを「です・ます」「相手を上げる」「自分を下げる」の3本に整理し、まず主語を指させる手順、「れる・られる」や二重敬語のつまずき、家の会話でそのまま練習できる形までまとめました。
敬語のまちがいは、言葉を知らないから起きるのではない
5年生で敬語を習うと、家に持って帰ってくるプリントに、こういう答えが並びます。
- 先生が申しました。
- 私がおっしゃいます。
- お客さまがいただきました。
ここで「おっしゃるは尊敬語、申すは謙譲語だからね」と単語を言い直しても、次のプリントでまた同じところをまちがえます。うまくいかない理由ははっきりしていて、子どもは言葉のほうを見ていて、動いた人のほうを見ていないからです。
上の3つは、どれも言葉の選びまちがいではなく、主語の取りちがえです。だから家庭でやることは、敬語の一覧を覚え直させることではなく、文を読んだら先に主語を指させることひとつになります。
3つの敬語を、覚える順番に並べ直す
教科書はていねい語・尊敬語・謙譲語の3つを同時に出しますが、子どもにとって難しさはまったく同じではありません。ていねい語はすでに使えていて、残る2つだけが新しいので、そう並べ直します。
- ていねい語(もう使えている):文の終わりを「です・ます」にするだけ。だれが動いたかは関係ありません。「雨が降ります」「これは本です」。相手にていねいに話すための形です。
- 尊敬語(新しい①):相手が動いたときに、その動きを上げる。「先生がおっしゃる」「校長先生が来られる」。
- 謙譲語(新しい②):自分が動いたときに、その動きを下げる。「私が申します」「私がうかがいます」。
つまり新しく覚えることは2つだけで、しかもその2つはだれが動いたかで自動的に決まります。ここを最初にそろえておくと、あとは言葉の数の問題になります。
見分けの手順は、3ステップで固定する
プリントを解くときの手順を、家庭で1つに決めてしまいます。毎回この順でやるのが大事で、順番を入れかえると元のまちがいに戻ります。
- ① 動きの言葉に丸をつける:「言う」「行く」「食べる」「見る」など、文の中で動いている言葉を1つ選ぶ。
- ② その動きをした人を指さす:「言ったのはだれ?」と声に出して聞き、鉛筆で指させます。指を止めさせるのがコツで、頭の中だけでやらせるとここを飛ばします。
- ③ その人が自分側か、相手側かを言う:自分・自分の家族なら下げる(謙譲語)、先生・お客さま・よその人なら上げる(尊敬語)。
この手順で、さっきの3つはこう直ります。「先生が申しました」→ 言ったのは先生=相手側 → 上げる →「先生がおっしゃいました」。「私がおっしゃいます」→ 言うのは私=自分側 → 下げる →「私が申します」。言葉を思い出す前に、指がどこを指しているかで答えが決まっているのが分かります。
覚える言葉は、この6組だけで足りる
敬語の一覧表は20行くらいありますが、小学校のテストと日常で出てくるのはほとんど次の6組です。まずはここだけ、3列で並べて覚えます。ばらばらに覚えると必ず入れかわります。
- 言う:〔相手〕おっしゃる / 〔自分〕申す・申し上げる
- 行く・来る:〔相手〕いらっしゃる・おいでになる / 〔自分〕うかがう・参る
- いる:〔相手〕いらっしゃる / 〔自分〕おる
- 食べる・飲む:〔相手〕めしあがる / 〔自分〕いただく
- 見る:〔相手〕ご覧になる / 〔自分〕拝見する
- する:〔相手〕なさる / 〔自分〕いたす
覚え方でひとつだけ手を貸すとすれば、「いただく」と「めしあがる」の向きです。ここは家の食卓で毎日直せます。ごはんの前に子どもが言う「いただきます」は自分が食べるときの言葉で、だから謙譲語。おきゃくさんに出すときは「めしあがってください」。毎日言っているほうが自分側、と結びつけると、この1組はもう入れかわりません。
もうひとつ、「いらっしゃる」は行く・来る・いるの3つを兼ねます。1つで3つ分はたらくので、ここだけは得だと伝えてしまってかまいません。
つまずき① 「れる・られる」を全部敬語だと思ってしまう
「先生が来られる」は尊敬語ですが、同じ「られる」は別の意味でも使われます。
- 尊敬:先生が話される。(先生を上げている)
- 受け身:弟にけしゴムを取られる。(自分がされている)
- できる(可能):ぼくは早く走られる。
ここも見分けは同じで、だれが動いたかです。動いたのが上げたい相手なら尊敬、動いたのが自分以外で自分が受けているなら受け身。子どもが混乱したときは、「取られたのはだれ? 取ったのはだれ?」と2回聞けば、自分でほどけます。
なお「れる・られる」の尊敬は、まちがいではありませんがいちばん軽い上げ方です。テストで「おっしゃる」を答えさせたい場面で「言われる」と書くと×になることがあるので、専用の言葉がある6組は、専用のほうを使うと教えておくと安全です。
つまずき② 上げすぎる(二重敬語)
敬語を覚えた直後の子は、ていねいにしようとして重ねます。
- ×「校長先生がおっしゃられました」→ おっしゃる(尊敬)+られる(尊敬)で二重。○「おっしゃいました」。
- ×「お客さまがお帰りになられる」→ ○「お帰りになる」。
- ×「ご覧になられますか」→ ○「ご覧になりますか」。
言い方は1つ決めておくと直ります。「敬語は1回でいい」。上げる言葉を2つ重ねても、ていねいさは2倍にならず、かえって不自然になる ― これだけで、子どもは自分で1つ削れます。
つまずき③ 身内を上げてしまう
これは大人でもまちがえるところですが、小学生のうちに1つだけ体験しておくと、あとがずっと楽になります。
- ×「お母さんは今、いらっしゃいません」(よその人に自分の母のことを話す場面)
- ○「母は今、おりません」
家の中では「お母さん」でよく、外の人に話すときだけ「母」になって、動きも下げる。理由は、家族は自分側だからです。ここは説明よりも、電話に出たときの一言を決めて練習するのがいちばん早い方法です(次の見出しで扱います)。
家でそのまま練習できる、3つの場面
ドリルを増やすより、実際に使う場面を3つ決めるほうが定着します。どれも1日1回、10秒で終わります。
- 電話に出る:「はい、〇〇です」「母は今、おりません。もどりましたらお伝えします」。身内を下げる形が、そのまま身につきます。
- 食卓:家族には「いただきます」、来た人には「めしあがってください」。向きの練習です。
- だれかが来る日:「おじいちゃんは何時にいらっしゃる?」と親のほうが使ってみせる。子どもは説明より、まわりの言い方をまねて覚えます。
逆に、家族どうしの会話を全部敬語にする必要はありません。敬語は距離をつくる言葉なので、家の中でずっと使わせると、かえって使う場面の感覚がぼやけます。外の人と話すときだけ切りかえる、で十分です。
テスト前にやる、たった1つの見直し
敬語の問題で点を落とす形はほぼ決まっているので、答えを書いたあとの見直しも1つでかまいません。
書いた文の主語を指さして、「この人は自分側? 相手側?」と1回だけ言う。
相手側なのに「申す・うかがう・おる・いただく・拝見する・いたす」が入っていたら下げすぎ、自分側なのに「おっしゃる・いらっしゃる・めしあがる・ご覧になる・なさる・おいでになる」が入っていたら上げすぎです。この見直しだけで、冒頭に挙げたような取りちがえは残らなくなります。
敬語には、もう1つ別の種類がある ― 美化語
ここまでの尊敬語・謙譲語・ていねい語は、どれもだれが動いたかで決まりました。ところが「お茶を飲む」「ご飯を食べる」「お金がない」のような「お・ご」は、動いた人とはまったく関係がありません。これは美化語と呼ばれる、4つ目の仲間です。
見分け方は1つだけで、「お・ご」を取っても、だれが動いたかの情報が変わらないかどうかです。「お茶を飲む」から「お」を取ると「茶を飲む」になりますが、飲んだのが自分か相手かは、どちらの文でも分かりません。動いた人の上げ下げに関係していないなら、それは美化語です。これに対して「先生がいらっしゃる」から「いらっしゃる」を削ると、動いたのが先生だという情報そのものが消えてしまいます。ここが尊敬語・謙譲語との違いです。
- 美化語の例:お茶・ご飯・お金・お水・お野菜・お料理
- 見分け方:「お・ご」を取っても、だれが動いたかの情報は変わらない(名詞をていねいにするだけ)
「お荷物をお持ちします」のような文では、名詞についた「お荷物」は美化語、動詞についた「お持ちします」は謙譲語という、2種類が1つの文に混ざっています。「お・ごが付いている」だけで敬語の種類を決めようとすると、ここで混乱します。名詞についているか、動きの言葉についているかをまず見るのが近道です。
合いことば ―「動いた人がいなければ、それは美化語。」
尊敬語・謙譲語は動いた人を上げ下げする言葉でした。美化語はだれも上げも下げもしていない、ものの名前をていねいにするだけの言葉です。「お・ご」を見つけたら、動いた人がいなければ、それは美化語。
よくある質問
Q. 「お水」「お野菜」も美化語ですか?
A. はい。「水を飲む」「野菜を切る」のように「お」を取っても、だれが動いたかの情報は変わらないので、尊敬語・謙譲語ではなく美化語です。
Q. 「お電話」「ご連絡」も美化語ですか?
A. 「お電話」「ご連絡」という名詞そのものは美化語です。ただし「ご連絡いたします」のように自分の動作に謙譲語が続く文では、「ご連絡」(美化語)と「いたします」(謙譲語)の2つが1つの文に混ざっている、と分けて考えます。
Q. 美化語は、尊敬語や謙譲語のテストで混同されますか?
A. はい、よくあります。「お荷物をお持ちします」のような文で、「お荷物」(美化語)と「お持ちします」(謙譲語)を同じ種類だと思ってしまう子がいます。名詞についているか、動きの言葉についているかで分けると区別できます。
Q. 美化語を使わないと、まちがいになりますか?
A. いいえ。美化語は「お水」を「水」と言っても意味は正しく伝わる、ていねいさのための言葉です。使わなくても間違いではないので、尊敬語・謙譲語のように上げ下げを間違える心配はありません。
まとめ
敬語でつまずくのは言葉を知らないからではなく、動いた人を見ていないからです。ていねい語は「です・ます」でもう使えているので、新しいのは相手を上げる尊敬語と自分を下げる謙譲語の2つだけ。解くときは①動きの言葉に丸 →②動いた人を指さす →③自分側か相手側かを言う、の3ステップに固定します。覚える言葉は言う・行く来る・いる・食べる・見る・するの6組を3列で。「れる・られる」は尊敬のほかに受け身・可能があるので、ここもだれが動いたかで分けます。「おっしゃられる」のような二重敬語は敬語は1回でいいで削り、よその人に家族を話すときは「母はおりません」と下げる。練習は電話・食卓・来客の3場面で1日10秒ずつ、見直しは主語を指さして自分側か相手側かを言うの1回だけで足ります。お・ごが付いていても動いた人がいなければ、それは美化語。この場合は上げ下げの心配はありません。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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