主語と述語が分からない子への、家庭でできる教え方 ― 文を「だれが」「どうした」の2つに切る
2026年10月7日 更新📖 約10分で読めます
作文がねじれる、長い文の意味が取れない――その多くは主語と述語がつかめていないことが原因です。用語を覚えさせる前に、文を「だれが」「どうした」の2つに切る練習から始める手順と、つまずきやすい5つの型への手当てをまとめました。
「主語と述語」を習ったのに、作文がねじれる理由
主語と述語は小学2年生で出てきて、以後6年間ずっと使い続ける言葉です。ところが、テストで線を引く問題は解けるのに、自分で書いた作文になると「ぼくの夢は、サッカー選手になりたいです。」のようにねじれてしまう——この相談はとても多いものです。
ここでつまずいている子は、たいてい用語は覚えているのに、文を切る作業ができていません。「主語=『は』『が』がつくところ」と形で覚えているので、「は」が出てこない文や、「は」が2つある文になると、とたんに手が止まります。
直す順番は決まっています。用語を言えるようにするのが先ではなく、文を「だれが」と「どうした」の2つに切れるようにするのが先です。切れるようになってから、その2つに主語・述語という名前をつけ直します。順番が逆だっただけ、というケースがほとんどです。
×の正体 ― 「文の頭にある言葉が主語」という思い込み
多くの子は、こんなやり方で主語を見つけています。「文のいちばん前にある言葉が主語」。教科書の例文はたいてい主語が先頭に来るので、この思い込みはしばらく正解を出し続け、だれも間違いだと気づきません。
ところが日本語は主語を文のどこに置いてもよい言語です。「ボールを、弟が蹴った。」は、頭にあるのは「ボールを」ですが、これは主語ではありません。蹴ったのが「ボールを」であるはずはなく、蹴ったのは「弟が」です。
つまずきの正体はここにあります。「文の頭=主語」をやめ、「述語に『だれが?』と聞いて答える言葉=主語」に乗り換える。これが、この記事でくり返す1つの基準です。
最初にやること:述語から先に探す
学校では主語→述語の順で習いますが、家庭でやり直すときは逆からのほうが速く進みます。述語は文の終わりにあるので、探す場所が決まっているからです。
- ①文の最後を見て「どうした?」に当たる言葉を丸で囲む。「走った」「きれいだ」「犬だ」——動きでも、様子でも、何かを言い切っていれば述語です。
- ②その言葉に向かって「だれが?」と声に出して聞く。「走った……だれが?」と聞けば、子どもは自然に「弟が」と答えます。それが主語です。
- ③2つを並べて言い直す。「弟が、走った」。これだけで文の骨組みが見えます。
紙は使わなくてかまいません。会話でできます。「どうした?」→「だれが?」の2問、これが道具のすべてです。1日3文、1分で終わります。
覚える中身は、実は「言い切りの形」だけ
述語を見つけるときに、子どもが迷うのは「どこまでが述語か」です。ここは細かい文法用語を出さず、次の3つだけを渡します。
- 動きを言い切る形:走った、食べる、行きました。
- 様子を言い切る形:きれいだ、楽しかった、寒いです。
- 「何であるか」を言い切る形:犬だ、五年生です。
この3つのどれかで文が終わっていれば、それが述語です。「〜て」「〜ので」で終わっている部分は、まだ言い切っていないので述語ではありません。ここを分けておくと、あとで複文(文が2つ入った文)に進んだときに崩れません。
つまずきやすい5つの型と、その手当て
主語・述語のつまずきは、だいたい次の5つに分かれます。どれで止まっているかを見分けると、直す場所がはっきりします。
- ①「は」を主語だと思い込んでいる:いちばん多い型です。「今日は、弟が走った」で「今日は」を主語だと答えます。手当ては述語から「だれが?」と聞き直すだけ。「走った……だれが? 今日が走ったの?」と一度たずねれば、子ども自身がおかしいと気づきます。
- ②主語が省かれている文で止まる:「あしたは雨だそうだ。だから、かさを持っていく。」の2文目に主語がありません。日本語では省くのがふつうです。ここは「言わなくても分かるから省いてある。省いてある主語を口で足してごらん」と伝え、「(ぼくが)かさを持っていく」と補わせます。省略に気づけると、読解の得点が変わります。
- ③作文で主語と述語がねじれる:「ぼくの夢は、サッカー選手になりたいです。」の型です。直し方は説明ではなく手を動かすほうが速く、主語と述語だけを取り出して並べて読ませます。「夢は……なりたいです」。声に出すと、たいていの子が自分で変だと言います。そのうえで「夢は……なることです」と直させます。
- ④長い文で、どれとどれが組になるか分からない:文が2つ以上つながった文です。ここは①〜③が固まる前に手を出さないでください。固まってから、「。」ごとではなく「、」ごとに切って、小さい文ひとつずつで「だれが・どうした」を探す練習に進みます。
- ⑤「を」のついた言葉を主語だと思い込んでいる:「ボールを、弟が蹴った。」で「ボールを」を主語だと答える型です。「を」は、ほぼ必ず目的語(「どうした」の対象)を示す助詞で、主語を示すことはありません。手当ては①と同じで、述語から「だれが?」と聞き直すことです。「蹴った……だれが?」と聞けば、「弟が」に戻れます。
5つを同時に直そうとしないでください。1回の練習で扱うのは1つだけです。とくに①と⑤は、述語から聞き直す習慣がつけば一度で終わることが多い型です。
主語を示す助詞は「が・は」だけじゃない
①の型を手当てするときによく出る質問が「じゃあ、『は』以外は全部主語でいいの?」です。答えはいいえ。主語になれる助詞は、だいたい次の6つに絞れます。
- が:弟が走った。
- は:弟は走った。
- も:弟も走った。
- こそ:弟こそ走った。
- だって:弟だって走った。
- でも:弟でも走れる。
この6つに共通するのは、述語に向かって「だれが?」と聞いたときの答えになれるという一点です。逆に「を・に・で・と・から・まで」などは、主語になることがありません(「を」が目的語を示すことは⑤で見たとおりです)。6つ全部を覚えさせる必要はなく、「は・が」を基本にして、見慣れない助詞が出てきたら「だれが?の答えになるか」で判定させれば十分です。
語順が入れかわる文(倒置)でも、述語から探せば崩れない
「きれいだ、あの花は。」のように、述語が先に来て主語があとに回る文(倒置)も、高学年の読み物や会話文には出てきます。頭から主語を探すやり方の子はここで止まりますが、述語から探す方法はここでも同じように使えます。
手順は変わりません。①言い切りの形を見て「どうした?」に当たる言葉を丸で囲む=「きれいだ」。②そこへ「だれが?」と聞く=「あの花は」。③並べ直す=「あの花は、きれいだ」。語順をもとに戻す練習を1回入れておくと、倒置の文への抵抗がなくなります。
会話と音読を練習台にすると、定着が速い
主語と述語は、プリントの中だけの知識ではありません。毎日しゃべっている文そのものです。ここを使わない手はありません。
- 子どもが学校のできごとを長く話したあと、「それ、だれが、どうしたの?」と1回だけ聞き返します。要約の練習にもなります。
- 音読の宿題のとき、1文だけ選んで「どうした?」「だれが?」を聞きます。宿題に足すのは30秒です。
- 連絡帳や日記を書いたあと、最初の1文だけ、主語と述語を並べて読ませます。全文を直そうとしないのがコツです。
ただし、会話だけで済ませると、③の作文のねじれは残りやすいままです。週に一度は、書いた文を1文だけ声に出して確かめる時間を作ってください。
家庭での見分け方:5文で分かる
どこで止まっているかは、次の5文で「だれが・どうした」を言わせれば、ほぼ判別できます。
- 「弟が公園で走った。」 → これが答えられなければ、述語から探す2問(最初の1分の練習)に戻ります。
- 「今日は、弟が公園で走った。」 → ここだけ「今日」と答えたら①の型です。「だれが?」と聞き直す形を渡します。
- 「ボールを、弟が蹴った。」 → 「ボールを」と答えたら⑤の型です。「を」は主語にならないことを確認し、述語から「だれが?」と聞き直します。
- 「きれいだ、あの花は。」 → 主語を探すのに迷うなら倒置の型です。述語(きれいだ)を先に丸で囲んでから「だれが?」と聞く順番を確認します。
- 「弟は公園で走り、妹はブランコに乗った。」 → ここだけ迷うなら④の段階です。①②⑤が済んでいるので、「、」で切る練習に進めます。
採点はしません。どこで止まったかを知るための5文です。正解の数ではなく、止まった場所を見るのがコツです。
合いことば ―「文の頭ではなく、言い切りのうしろ。」
5つの型も、6つの助詞も、倒置の文も、見分け方はすべて1つの合いことばに収まります。「文の頭ではなく、言い切りのうしろ。」
主語を探すときに目で追う場所を、文の頭からうしろ(述語・言い切りの形)に変えるだけで、①〜⑤のどの型で止まっていても、同じ手順で抜け出せます。迷ったときは、この一文を声に出させてください。
よくある質問
1.「④の『長い文で、どれとどれが組になるか分からない』は、いつ練習させればいいですか」
①〜③が落ち着いてから、週1回くらいのペースで十分です。読点ごとに切って小さい文として扱う練習は、①〜③の土台がないと空回りします。
2.「『を』は絶対に主語にならないんですか」
小学校で出てくる文の範囲では、「を」が主語を示すことはないと考えて差し支えありません。「を」は「どうした」の対象(目的語)を示す助詞で、動作を受ける側の言葉につきます。
3.「倒置の文は教科書にあまり出てこないのに、練習する必要がありますか」
教科書の説明文より、物語文のせりふや会話文に出てきやすい形です。読解で立ち止まる子ほど倒置に弱いことが多いので、①〜③の方法に慣れたあと1〜2回ためすだけで十分です。
4.「6つの助詞(が・は・も・こそ・だって・でも)を全部覚えさせたほうがいいですか」
覚えさせる必要はありません。基本は「は・が」だけで足り、見慣れない助詞が出てきたときに「だれが?の答えになるか」で判定できれば十分です。
やり方は、短く残しておく
主語と述語は、2年生で出てきたあとも、作文・読解・敬語・複文と形を変えて高学年までずっと使い続けます。今回うまくいった手当てを一行だけ残しておくと、次に困ったときにすぐ戻れます。「まず『どうした?』、次に『だれが?』」「書いたら主語と述語だけ並べて読む」——この程度で十分です。
ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次につまずいたときに思い出せる形で残っていることです。
まとめ
主語と述語が分からないのは、用語を覚えていないからではなく、「文の頭にある言葉が主語」という思い込みから抜けられていないからです。合いことばは「文の頭ではなく、言い切りのうしろ。」。まず述語(文の終わりの言い切り)を丸で囲み、そこへ「だれが?」と聞いて主語を見つける——この2問だけを毎日3文くり返します。そのうえで、「は」を主語と思い込む/省略で止まる/作文でねじれる/長い文で組が分からない/「を」を主語と思い込む、の5つを1回に1つずつ手当てしていきます。主語になれる助詞は「が・は・も・こそ・だって・でも」の6つだけ、倒置の文でも述語から探せば同じ手順で崩れません。会話と音読を練習台にすれば、家庭の負担はほとんど増えません。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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