作文が書けない子への、家庭でできる教え方 ― 止まる場所は3つ
2026年10月6日 更新📖 約8分で読めます
「作文が書けない」は文章力の問題とはかぎりません。書くことが無い・順番が決められない・一文が続かない、の3つのどこで止まっているかを見分け、そこだけを直す家庭でのやり方を紹介します。
「書けない」は文章力の問題とはかぎらない
読書感想文や日記、遠足の作文。原稿用紙を前にして1行も進まない——という相談はとても多いものです。このとき大人はつい「本を読んでいないから」「語彙が少ないから」と考えがちですが、実際に手が止まっている理由は、もっと手前にあることがほとんどです。書く力そのものを鍛える前に、まずどこで止まっているかを見つけてください。
つまずきは3つに分かれる
子どもが作文で止まる場所は、だいたい3つのどれかです。
- ①材料が無い。「楽しかった」しか出てこない。思い出す手がかりが用意されていない。
- ②並べ方が無い。話せることはあるのに、どれから書けばいいかで止まる。
- ③広げ方を知らない。一文は書けても、次に何を足せばいいか分からない。
①の子に「はじめ・なか・おわりで書こうね」と構成を教えても、材料が無いままなので何も変わりません。③の子にもう一度「思い出す会話」をしても、すでに持っている材料を繰り返すだけで時間が過ぎます。手を決める前に、どれなのかを決めてください。
見分け方は、口で3つ聞くだけ(30秒)
原稿用紙も鉛筆もいりません。書かせる前に、口で聞くだけで3つのどこかが分かります。
- ⅰ「今日のこと、3つ話してみて」── 「楽しかった」しか出てこない → ①材料です。
- ⅱ(ⅰが言えたら)「じゃあ、どれが最初にあった?」── すぐ答えられず、書き出しの一文で10分以上止まる → ②並べ方です。
- ⅲ(ⅱも言えたら)「それで、どうだった?」── 一文書いては止まり、また止まる → ③広げ方です。
1つ見つかれば、直すのはそこだけで済みます。作文の練習を毎日1枚——と量を増やすのは、原因が分からないうちはおすすめしません。書けないまま机に向かう時間が増えるだけで、「作文はつらい」という記憶だけが積み上がってしまうからです。
止まる場所①:書くことが見つからない(材料が無い)
いちばん多いのがこれです。「遠足のことを書きなさい」と言われても、頭の中には「楽しかった」しか残っていません。楽しかったの一言で終わってしまうのは、感想が乏しいからではなく、思い出す手がかりが用意されていないからです。
- 見分け方:「どんなことがあったの?」と聞いて、口では3つ以上話せるのに紙には書けない場合は、材料ではなく②か③の問題です。逆に、口でも「楽しかった」で止まるなら材料不足です。
- 直し方:書かせる前に、5分だけ「思い出す会話」をします。ポイントは、感想ではなく事実を聞くこと。「だれと?」「何を持っていった?」「いちばん最初に何をした?」「困ったことはあった?」——質問はこの4つで十分です。
- 出てきたことは、親が箇条書きで紙にメモしてあげてください。ここを子どもに書かせると、そこで力尽きます。材料を集める作業と、文章にする作業は分けるのがコツです。
止まる場所②:順番が決められない(並べ方が無い)
材料はあるのに書き出せない子は、「どれから書けばいいのか」で迷っています。大人は無意識に「はじめ・なか・おわり」で組み立てていますが、子どもにとってこれは習っただけの言葉で、実際の使い方は分かっていないことが多いのです。
家庭では、難しい構成の話をする必要はありません。集めた材料に番号を振るだけで十分です。「この3つ、どれが最初にあった?」と聞いて①②③と書き込む。これで並び順が決まります。
- 見分け方:話は具体的なのに、書き出しの一文だけで10分以上止まっているなら、たいていここです。
- 直し方:書き出しは「いつ・どこで・何をしたか」の一文と決めてしまいます。「十月十日、家族で高尾山に登りました。」——うまい書き出しを考えさせないことが、いちばんの時短になります。
- おわりの一文も型で渡してかまいません。「また行きたいです」ではなく「今度は〜したいです」「〜だと分かりました」にすると、感想が一段具体的になります。
止まる場所③:一文は書けるが次が続かない(広げ方を知らない)
「たのしかったです。」で終わってしまう子は、書く気が無いわけではありません。一文のあとに何を足せばいいのかを知らないだけです。ここは教えれば、その場で伸びます。
合言葉は「そのとき、どうだった?」。書いた一文に対してこの質問を1回するだけで、文章はほぼ必ず2〜3行増えます。
- 「たのしかったです。」→「どこがいちばん?」→「頂上でおにぎりを食べたときです。」
- 「つかれました。」→「どのくらい?」→「足が上がらなくなって、最後の十分は手すりを持って歩きました。」
- 「すごかったです。」→「何がどうすごかった?」→「下を見ると、家が消しゴムくらいに見えました。」
ここで大切なのは、親が言い換えてあげないことです。子どもが口で答えた言葉を、そのまま書かせます。上手な表現に直してしまうと、次からは「自分の言葉では足りないんだ」と思って、いっそう書けなくなります。使える言葉の引き出し自体を増やしたいときは、語彙を増やす記事もあわせて参考にしてください。
学年ごとに気をつけるところ
止まる場所の出やすさは、学年でも変わります。
- 低学年(1〜2年):多いのは①材料不足です。経験はしていても、まだ自分から思い出す力が弱いので、親の4つの質問(だれと/何を持っていった/最初に何をした/困ったことはあった)がそのまま効きます。
- 中学年(3〜4年):①はだいたいクリアして、②並べ方で止まる子が増えます。「はじめ・なか・おわり」という言葉は知っていても、自分の話をその型に当てはめる練習が足りていません。番号を振る作業(①②③)がよく効く学年です。
- 高学年(5〜6年):行事の作文より、意見文・報告文で止まることが増えます。「たのしかった」の広げ方だけでなく、「なぜそう思うか」の理由を1つ足す練習(③の発展形)が必要になります。「そのとき、どうだった?」に加えて「それでどう思った? なぜ?」を聞いてください。
やってしまいがちなNG
- NG①:最初から「はじめ・なか・おわり」で教える。材料が無い子にこの型を教えても、型に何を入れるかが無いので止まったままです。型は②の子にだけ効きます。
- NG②:上手な表現に直してしまう。「頂上でおにぎりを食べて嬉しかった」のような表現に親が言い換えると、子どもは「自分の言葉では足りない」と感じ、次からいっそう書けなくなります。口で答えた言葉を、そのまま書かせてください。
- NG③:止まる場所が分からないまま、毎日1枚で量を増やす。原因が分からないまま量だけ増やすと、「作文はつらい」という記憶だけが積み上がります。まず3つのどこかを見つけてから量を増やしてください。
直すときは、赤ペンを1か所だけにする
書き上がった作文に、誤字・句読点・段落・表現とすべて直しを入れると、子どもは自分の文章が全否定されたように感じます。せっかく最後まで書いたのに、次からは書き出しがもっと重くなります。
ほめるところを先に1つ、直すところを1か所だけ。これで十分です。「ここの『消しゴムくらい』がいいね」「句読点だけ、今日は打ち直してみよう」——直す点を1つに絞ると、子どもも何を直したのか覚えていられます。
直したことは、短く残しておく
作文はこのあとも、感想文・報告文・意見文と形を変えて何度も出てきます。だからこそ、今日つかんだコツを言葉で残しておくと次に効きます。「書く前に、だれと・何をしたかを3つメモする」——このくらいの短い一行で十分です。
ノートの端でもかまいませんし、続かないようならアプリを使う手もあります。大事なのは、次に原稿用紙を前にしたときに思い出せる形で残っていることです。
よくある質問
本をたくさん読ませれば、作文も書けるようになりますか?
読書量と作文は、思われているほど直結しません。読書はことばや表現の引き出しを増やしますが、①材料・②並べ方・③広げ方のどこで止まっているかは別の問題です。読書は続けてよいですが、その代わりにはなりません。
作文の宿題を見ると、つい全部直してしまいます。どうすればいいですか?
直したい気持ちはいったん置いて、ほめるところを1つ、直すところを1か所だけに決めてください。全部直すと子どもは自分の文章が全否定されたように感じ、次の書き出しがもっと重くなります。
型(はじめ・なか・おわり)を教えても、うまく使えません。
型は②並べ方で止まっている子にだけ効きます。①材料が無い子に型を教えても、入れるものが無いので使えません。まず30秒の3問で、どこで止まっているかを確認してください。
どのくらいで変わりますか?
③広げ方(そのとき、どうだった?)はその場で2〜3行増えることが多いです。②並べ方(番号を振る)は数回の練習で安定します。①材料は、思い出す会話を重ねるほど自分から話せる量が増えていきます。1〜2週間やっても変化がないときは、見分け方(①②③のどれか)を疑ってください。
まとめ
作文が書けない理由は、①材料が無い・②並べ方が無い・③広げ方を知らない、のどこかに必ずあります。原稿用紙を前にする前に、口で3つ聞けば30秒で見分けがつきます。「文章力が無いから」と決めつけず、止まる場所を1つ見つけて、そこだけを短く直す。学年による出やすさの違いと、型を急がない・言い換えない・量だけ増やさないという3つのNGを避ければ、家庭でも十分に直せます。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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