物語文と説明文の読み分け ― 「なんとなく読む」をやめさせる、家庭でできる2つの読み方
2026年10月8日 更新📖 約10分で読めます
同じ「読む」でも、物語文と説明文では探すものがまるで違います。どちらも同じ勢いで読んでいると、物語では気持ちを飛ばし、説明文では話題を見失います。文章の種類を最初の3行で見分ける方法と、種類ごとに線を引く場所を家庭向けにまとめました。
「読解力がない」の中身は、たいてい読み分けができていないこと
音読はすらすらできる。漢字も読める。それなのにテストの記述問題になると手が止まる——このとき多くのご家庭で「読解力が足りない」とまとめられます。ですが、実際にお子さんのテスト用紙を見ると、間違え方が問題文ごとにきれいに分かれていることがあります。
物語の問題では「気持ちを答えなさい」に「うれしかったから」とだけ書いて×になる。説明文の問題では「筆者の考えを書きなさい」に、本文の途中にあった例え話をそのまま写して×になる。どちらも読めていないのではなく、その文章で探すべきものが違うことを知らないまま、同じ読み方で最後まで走っているのです。
国語の教科書は、小学校のあいだずっと物語文と説明文が交互に並ぶ作りになっています。学校でもそれぞれの読み方は習うのですが、単元が終わるとどちらの読み方だったのかが混ざります。家庭で足せるのは、新しい技術ではありません。読む前に「これはどっちか」を決める1手だけです。
まず最初の3行で、どちらかを決める
読み分けの第一歩は、内容ではなく書き出しの形で判定することです。3行読めば、ほとんどの文章はどちらか分かります。
- だれかの名前が出てきて、その人が動いていたら物語文。「太郎は—」「わたしは—」のように、人物が何かをしている書き出しです。
- ものごとの説明から始まって、人が出てこなければ説明文。「ダンゴムシは—」「日本の川は—」のように、話題が最初に置かれます。
- 問いかけで始まったら、ほぼ説明文。「みなさんは、〜を知っていますか。」で始まる文章は、そのあとに答えを説明していく型です。
この判定は完璧である必要はありません。動物が人のようにしゃべる物語もありますし、筆者の思い出話から入る説明文(随筆に近いもの)もあります。大事なのは、当たるかどうかではなく、読む前に一度立ち止まる習慣がつくことです。判定を口に出した瞬間に、次に何を探せばいいかが決まります。
物語文で探すのは「気持ちが変わった場所」
物語文でお子さんが読み飛ばすのは、たいてい気持ちの部分です。あらすじは言えるのに、「このとき主人公はどんな気持ちだった?」に答えられない。それは、気持ちが本文に直接書いていないことが多いからです。
物語文で線を引く場所は、3つだけに絞ります。
- ①だれが出てきたか——登場人物の名前に丸をつけます。人物が3人以上になると、だれのせりふか分からなくなって崩れます。
- ②いつ・どこの話か——場面が変わるところ(次の日・家から学校へ、など)に縦線を入れます。気持ちは場面の変わり目で動きます。
- ③気持ちが出ている一文——「うれしかった」のような直接の言葉だけでなく、行動と様子にも線を引きます。「走って帰った」「下を向いたまま返事をしなかった」は、気持ちが書いてある文です。
そのうえで、答え方だけ型を渡します。「(できごと)だから、(気持ち)。」——理由とセットにする形です。「うれしかった」だけで×になるのは、気持ちだけを書いて、そう思ったきっかけが抜けているからで、これは読めていないのではなく書き方の問題です。「かけっこで一等になれたから、うれしかった」に直すだけで点が戻ることは珍しくありません。
家庭では、読み終わったあとに「主人公の気持ちが、いちばん大きく変わったのはどこ?」と1問だけ聞いてください。ページをめくり直して指をさせれば、それで読めています。あらすじの説明は求めなくて構いません。
説明文で探すのは「話題」と「筆者の言いたいこと」
説明文は、物語と違って気持ちを追う必要がありません。そのかわり、途中の例え話や具体例に引っぱられて、何の話だったか分からなくなるのが典型のつまずきです。「ダンゴムシの文章のはずなのに、飼っていた話ばかり覚えている」という状態です。
説明文で線を引く場所も、3つに絞ります。
- ①話題(何についての文章か)——たいてい最初の段落にあります。多くは問いかけの形で置かれます。「なぜダンゴムシは丸くなるのでしょうか。」がそれです。
- ②答え・まとめの文——「つまり」「このように」「〜なのです」で始まる文。ここが筆者の言いたいことで、最初か最後の段落にあることがほとんどです。
- ③具体例の始まりと終わり——「たとえば」から始まって、次の段落の頭まで。ここは線を引くのではなく、かっこでくくって外に置くのがコツです。例は分かりやすくするための飾りで、答えそのものではありません。
③のくくり出しができると、説明文は急に短くなります。5段落あっても、答えに関わるのは最初と最後だけということがよくあります。「筆者の考えを書きなさい」で例え話を写してしまう子は、飾りと中身が同じ重さで見えているだけです。
家庭での1問は、「この文章は、けっきょく何の話だった? 一言で言うと?」です。一言で言えたら読めています。言えないときは、最初の段落だけをもう一度いっしょに読み直せば足ります。
伝記だけは別 ― 人が動いていても、物語文ではないことがある
「人が動いていたら物語文」は目安として便利ですが、1つだけ、この判定をすり抜ける文章の種類があります。伝記です。伝記は実在した人物を取り上げ、名前も出てきて、その人が何かをする場面もありますが、国語の授業では物語文としてではなく説明文に近い読み方で扱われます。
見分け方は、動いている人が作られた人物か実在の人物かではなく、年号(「〜年」)がいくつ出てくるかです。物語文は短い場面の中で気持ちが変わる様子を描きますが、伝記は生まれてから成し遂げたことまでを、年号を並べて一生ぶんダイジェストで紹介します。たとえば野口英世の伝記なら、「1876年に生まれ、医学を学び、感染症の研究にうちこみ、1928年にアフリカで亡くなった」のように、1つの場面ではなく一生全体が短くまとめられます。
- ①年号がいくつも出てくる——1つの場面の中の時間ではなく、生まれた年・何かをした年・亡くなった年など、人物の一生をとおした時間が並びます。
- ②気持ちより「何をしたか」が中心——「悲しかった」より、「〜を発明した」「〜の研究にうちこんだ」のような、成し遂げたことの説明が本文の多くを占めます。
- ③短い場面が差し込まれることもある——伝記の中に、ある1日の会話や様子が描かれる場面が出てくることがあります。その場面だけは、物語文の読み方(気持ちが出ている行動や様子に線を引く)を使ってかまいません。
伝記を読むときは、説明文の読み方をそのまま当てはめます。話題は「この人はだれで、何をした人か」、まとめの文は「その人物の功績がどう評価されているか」にあたります。どちらも、最初の段落と最後の段落を見ればたいてい見つかります。
2つの読み方を、1枚の表で持たせる
お子さんに渡すのは、この対応だけです。ノートの見返しや下じきに書いておくと、テスト中にも使えます。
- 人が動いていたら物語文 → 探すのは気持ちが変わった場所 → 答えは「〜だから、〜な気持ち。」
- ものの説明から始まったら説明文 → 探すのは話題とまとめの文 → 答えは本文の言葉を使ってそのまま
もう1つ、種類によって答えの作り方が逆になることも伝えてください。説明文は本文に書いてある言葉をできるだけそのまま使うのが正解で、自分の言葉に言いかえるほど点が落ちます。物語文は逆に、気持ちがそのまま書いていないので、行動や様子から自分の言葉に直す必要があります。「うつして書く」のか「言いかえて書く」のか——ここを取りちがえている子は、片方の文章だけ極端に点が低くなります。テストが返ってきたら、物語と説明文どちらで落としているかを1回だけ見てみてください。手当てする場所がはっきりします。
家庭での練習は、教科書の音読の宿題で足ります
新しい問題集は要りません。毎日出る音読の宿題を練習台にします。手順は3つです。
- ①読む前に「これ、どっち?」と聞く。5秒で終わります。答えは合っていなくて構いません。
- ②読み終わったら、種類に応じた1問だけ聞く。物語なら「気持ちが変わったのはどこ?」、説明文なら「一言で言うと何の話?」。
- ③答えられなければ、その段落だけ一緒に読み直す。全部読み直させないでください。
1回1分もかかりません。かわりに、質問を増やさないことが大切です。「ほかには?」「なんで?」と重ねると、音読の宿題が試験になって嫌がられます。1日1問、種類に合った問いを1つだけ——これを2週間続けると、読む前に自分から種類を口にするようになります。そこまで来れば、あとはテストの中で自動的に働きます。
合いことば ―「年号が並んでいたら、気持ちではなく『何をしたか』を探す。」
名前が出てきて、その人が動いていても、年号がいくつも並んでいたら立ち止まってください。「年号が並んでいたら、気持ちではなく『何をしたか』を探す。」 伝記は物語文の形を借りているだけで、探すものは説明文と同じです。
よくある質問
1.伝記はテストで物語文として出題されることもありますか
単元名としては物語文・説明文とは別に「伝記を読む」として扱われることが多いですが、設問の多くは説明文に近く、気持ちではなく人物の功績やできごとの意味を問われます。
2.伝記の中に出てくる会話文や、その場の様子を描いた場面は、物語文として読んでいいですか
その場面だけは物語文の読み方を使ってかまいません。伝記は一生を紹介する説明的な文章の中に、印象的な1日や会話の場面を短く差し込むことがよくあります。
3.年号が1つしか出てこない文章もあり、物語文か伝記か迷います。どう見分ければいいですか
年号の数ではなく、人物の一生や功績を紹介する目的かどうかで判断します。1つの出来事を詳しく描いて気持ちの変化が中心なら物語文、人物の全体像や成し遂げたことの説明が中心なら伝記です。
4.伝記を読むときに、説明文の「話題とまとめの文」を探す方法はどう当てはめますか
話題は「この人はだれで、何をした人か」、まとめの文は「その人物の功績がどう評価されているか」にあたります。最初の段落と最後の段落を見れば、たいてい見つかります。
まとめ
読解でつまずく子の多くは、字が読めないのではなく、文章の種類によって探すものが変わることを知らないまま読んでいます。書き出しの3行で、人が動いていれば物語文・ものの説明から始まれば説明文と決め、物語文では場面の変わり目と行動から気持ちの動いた場所を、説明文では話題とまとめの文を探して具体例はかっこで外に出す。答え方も、物語は自分の言葉に言いかえ、説明文は本文の言葉をそのまま使う、と逆になります。練習は毎日の音読の宿題に1日1問足すだけで足ります。国語の教科書はこの2種類が交互に並ぶ作りなので、読み分けが身につくと、6年間ずっと効き続けます。名前が出てきて人が動いていても、年号がいくつも並ぶ伝記だけは例外で、気持ちではなく「何をしたか」を探す説明文の読み方を使います――「年号が並んでいたら、気持ちではなく『何をしたか』を探す。」
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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