音読みと訓読み ― 漢字が「書けるのに読めない」子への、家庭でできる教え方
2026年10月12日 更新📖 約9分で読めます
漢字テストは書けるのに、文章の中に出てくると読めない・意味が取れない。その多くは、漢字を「形と読み方1つ」で覚えていて、音読みと訓読みの役わりの違いを渡されていないことが原因です。見分け方・熟語との関係・知らない言葉の意味を推理する使い方までまとめました。
漢字テストは満点なのに、文章の中では読めない
「漢字ドリルはできる」「テストも書ける」——それなのに、教科書や問題文の中に同じ漢字が出てくると読めない、読めても意味が取れない。この食いちがいは、高学年でとくによく起きます。
原因は覚えた量ではありません。漢字を「形」と「読み方1つ」の組でしか覚えていないことです。ドリルは「山」に「やま」と書ければ丸になります。ところが文章には「登山」「火山」「山脈」が出てきて、そこでは「やま」と読みません。1つの漢字が読み方を2種類以上持っているという前提が渡されていないと、知っている漢字ほど読めなくなります。
この2種類が、音読みと訓読みです。ここを「用語として覚えるもの」ではなく「読むときに使う道具」として渡し直すと、漢字の勉強はそのままでも、文章の中での読みが変わります。
音読みと訓読みは、どこが違うのか
元をたどると、漢字は中国から入ってきた文字です。そのとき字と一緒に入ってきた中国での発音をまねた読み方が音読みで、その字の意味に、もともと日本にあった言葉をあてはめた読み方が訓読みです。
- 山:音読み=サン(登山・火山)/訓読み=やま
- 川:音読み=セン(河川)/訓読み=かわ
- 生:音読み=セイ・ショウ(生活・一生)/訓読み=いきる・うまれる・なま
ここで子どもに伝えるのは、成り立ちの歴史ではありません。役わりの違いです。訓読みはそれだけで意味が分かる読み方、音読みはふつう他の字とくっついて言葉になる読み方——この2行で足ります。
見分け方は「一語で意味が分かるか」だけ
音訓の見分けはテストにも出ますし、漢字辞典を引くときにも要ります。覚えさせるのではなく、その場で判定できる問いを1つ渡します。
「その読み方だけを口に出して、意味が分かる?」
- 「やま」——分かる。だから訓読み。
- 「サン」——それだけでは何のことか分からない(算・三・産…と決められない)。だから音読み。
- 「かわ」——分かる。訓読み。/「セン」——分からない。音読み。
この判定は完全ではありません。「本(ホン)」「肉(ニク)」のように、音読みなのにそれだけで通じてしまう語もあります。日本語として使われるうちに、その音がそのまま言葉として定着したものです。迷ったときの目じるしを2つ足しておくと、ほとんどの場合はこれで足ります。
- 送りがながつく読みは訓読み:「歩く」「新しい」のように、ひらがなが後ろにくっつくなら訓読みです。音読みに送りがなはつきません。
- 2字の熟語の中の読みは、まず音読みを疑う:「学校」「電車」「読書」——熟語はほとんどが音読み+音読みで作られています。
漢字辞典や教科書の漢字表で音読みがカタカナ、訓読みがひらがなで書き分けられているのも、この見分けと同じ理由です。「サン/やま」という並びの意味が分かると、漢字辞典が急に読めるようになります。
熟語が読めるようになる、いちばんの近道
実際の読解でいちばん効くのは、熟語はほとんど音読みで読むという一点です。
「登山」を「のぼりやま」と読む子は、漢字を1字ずつ訓読みでつないでいます。ここで「漢字が2つならんだら、まず両方とも音読みで読んでみる」という手順を渡すと、初めて見る熟語でも読みの当たりがつきます。「登=ト、山=サン、だからトザン」——合っています。
もちろん例外はあります。名前がついているくらいには存在します。
- 重箱読み(音+訓):重(ジュウ・音)+箱(ばこ・訓)。ほかに「台所(ダイどころ)」「毎朝(マイあさ)」。
- 湯桶読み(訓+音):湯(ゆ・訓)+桶(トウ・音)。ほかに「見本(みホン)」「手本(てホン)」。
- 訓+訓:「山道(やまみち)」「花見(はなみ)」のように、もともとの日本語どうしが組んだ言葉。
ただし、例外を先に教えないでください。重箱読み・湯桶読みは名前がついているほど珍しいから名前がついているのであって、先に4パターンを並べると、子どもは「熟語は4通りある」と受け取って当たりをつけられなくなります。まず「熟語=音読み」で読ませ、通じないときだけ訓読みを混ぜてみる。この順番です。
音読みが分かると、知らない言葉の意味が推理できます
ここが、音訓を教える本当の理由です。音読みは意味の部品として働きます。
たとえば「温」という字。訓読みは「あたたかい」で、意味はそのまま分かります。すると「温度」「温室」「気温」「体温」は、読めなくても全部「あたたかさ」に関係する言葉だと当たりがつきます。「体温=からだのあたたかさ」——意味が半分取れれば、文章は止まりません。
手順にすると3つです。
- ①知らない熟語に出会ったら、止まらずに字を1つずつ見る。
- ②知っている訓読みを思い出す。「温」なら「あたたかい」、「脈」なら「すじ」。
- ③2つの訓読みをつないで、意味の見当をつける。「山脈」なら「やま」+「すじ」で、山のつらなりだと分かります。
③で必ず当たるわけではありません。訓読みを知らない字もありますし、つないでも通じない語もあります。大事なのは、当たる語では止まらずに済むことです。「知らない言葉が出ても、字から推理していい」と分かると、読む速さがはっきり変わります。
同じ字で読みが変わるのは、となりの字が決めています
「生」のように読み方が多い字は、子どもが最後まで嫌がる場所です。「セイ・ショウ・いきる・うまれる・なま・き」——並べて覚えさせると必ず崩れます。
渡すのは1行だけにします。読み方は、その字だけを見ても決まらない。となりの字とセットで決まる。
- 「生活」「生物」——漢字が2つならんでいる=音読み。セイ。
- 「一生」——同じく熟語ですが、こちらはショウ。熟語ごと覚えるのはここだけで済みます。
- 「生きる」「生まれる」——送りがながある=訓読み。
- 「生野菜」「生クリーム」——後ろがふだん使う日本語=訓読みで「なま」。
つまり、覚えるのは「字の読み一覧」ではなく「言葉としての形」です。漢字ドリルで音訓を全部書かせる練習より、その字を使った言葉を3つ書かせるほうが、読解には効きます。
家庭での見分け方:3つの問いで、どこで止まっているか分かります
紙もプリントも要りません。声に出して答えさせるだけです。
- 「『やま』と『サン』、それだけで意味が分かるのはどっち?」 → ここで答えられないなら、音訓の区別そのものが入っていません。見分け方の1問から始めます。
- 「『登山』はなんて読む?」 → 「のぼりやま」と答えるなら、熟語を訓読みでつないでいます。「漢字が2つならんだら、まず両方音読み」を渡す段階です。
- 「『体温』ってどういう意味? 『温』は訓読みでなんて読む?」 → 「あたたかい」が出てくるのに意味と結びつかないなら、音読みを意味の部品として使う練習(前の章の3手順)に進みます。
点数はつけません。正解の数ではなく、どこで止まったかを見るための3問です。上から順に、区別・熟語の読み・意味の推理と、つまずきの深さが分かれています。
やり方は、短く残しておく
音読みと訓読みは、国語の中だけの話ではありません。理科の「蒸発」「発芽」、社会の「輸入」「地形」、算数の「分母」「面積」——教科の言葉はほとんどが音読みの熟語です。ここが通ると、他の教科の教科書がそのまま軽くなります。
今回うまくいった手当ては、一行だけ残しておくと次に困ったときにすぐ戻れます。「読みだけで意味が分かれば訓読み」「熟語が来たら、まず両方音読み」「知らない熟語は、訓読みに直して意味の見当をつける」——この3行で十分です。ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次につまずいたときに思い出せる形で残っていることです。
よくある質問
Q. 音読みと訓読み、どちらを先に教えればいいですか?
先に渡すのは訓読みです。訓読みは読んだだけで意味が分かる読み方なので、まずその字の意味を訓読みで掴ませ、そのあとで「熟語に出てきたら音読みを疑う」という使い方を渡します。順番を逆にすると、意味の手がかりのないカタカナの音だけが並び、ただの暗記作業になってしまいます。
Q. 「本」「肉」のように、音読みなのに1字だけで意味が分かる言葉はどう教えればいいですか?
本文の目じるし(送りがな=訓読み、熟語=音読み)はほとんどの場合に効く近道であって、すべてに当てはまる法則ではありません。「本」「肉」「服」のように音読みがそのまま日本語として定着した語は例外として、「よく使う言葉だから、そのまま覚える」で十分です。目じるしに当てはまらない語を見つけたたびに崩さず、例外は例外のまま横に置いておきましょう。
Q. 同じ漢字なのに音読みが2つ以上あるのはなぜですか?(「下」「生」など)
漢字が日本に伝わった時期や地域によって、もとの中国語での発音が違っていたためです(呉音・漢音などと呼ばれます)。子どもに由来を教える必要はなく、よく出てくる読み方を熟語ごと覚えるだけで足ります。本文の「一生(イッショウ)」のように、法則から外れる熟語は「この熟語だけの読み方」として個別に覚えればじゅうぶんです。
Q. 音訓の知識は、高学年になるとどこで使いますか?
高学年の国語に出てくる「同じ訓読みで漢字がちがう」問題(計る・測る・量る、すべて「はかる」など)や、理科・社会の教科書に増える専門的な熟語の意味推理で直接使います。音訓の区別は漢字単元のテストのためだけではなく、他教科の読解を支える土台になっています。
まとめ
漢字が書けるのに読めないのは、覚えた量の不足ではなく、1つの漢字が読み方を2種類持っていることを渡されていないからです。訓読みはそれだけで意味が分かる読み方、音読みは他の字とくっついて言葉になる読み方——見分けは「その読みだけで意味が分かるか」で足り、送りがながつけば訓読み、熟語の中ならまず音読みと当たりをつけます。重箱読み・湯桶読みは名前がつくほど少数なので、先に教えません。そして音読みは意味の部品なので、知らない熟語も訓読みに直せば意味の見当がつきます。教科の言葉の多くは音読みの熟語なので、ここが通ると国語以外の教科書も読みやすくなります。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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