「人のからだのつくりとはたらき」が覚えられない子への、家庭でできる教え方 ― 名前より先に「通り道」をたどる
2026年10月9日 更新📖 約9分で読めます
6年生の「人のからだ」は、消化・呼吸・血液が別々の暗記に見えてつまずきます。じつは3つとも「入れる → 運ぶ → 出す」の1本の通り道です。食べ物・空気・血の道すじを指でたどる覚え方、小腸のじゅう毛と肺のはい胞が「表面積をかせぐ」同じしくみであること、動脈と静脈を色で覚えてしまうわな、自分の体でできる家庭練習をまとめました。
覚えられないのは、3つを別々の暗記にしているから
6年生の理科「人のからだのつくりとはたらき」は、テスト前に用語だけを詰めこんでも、次の日にはきれいに抜けます。消化・呼吸・血液の循環がそれぞれ独立した暗記カードになっていて、食べ物・空気・血が頭の中でつながっていないからです。
実際に子どもがつまずくのは、こういう聞かれ方をしたときです。「食べたものは、どうやって体の先まで届くの?」——消化の用語も、心臓のつくりも言えるのに、この1問に答えられません。単元がぜんぶ入っている質問だからです。
ですから家庭では、名前を1つずつ覚え直させないでください。先に渡すのは「入れる → 運ぶ → 出す」という1本の形です。消化も呼吸も、この形の「入れる」の部分。血液は「運ぶ」の部分。息・にょうは「出す」の部分。3つの単元ではなく、1本の通り道の3か所だと分かった時点で、覚える量は一気に減ります。
まず食べ物の通り道を、指でたどる
消化のところは、順番さえ言えれば大半は取れます。しかも順番は、体の上から下へまっすぐ並んでいます。
- 口 → 食道 → 胃 → 小腸 → 大腸 → こう門
紙に書かせるより、自分の体の上を指でなぞらせるほうが残ります。口をさわる、のどから胸をまっすぐ下ろす、みぞおちのあたりで胃、へその回りをぐるぐるして小腸、そのまわりを大きく回って大腸。10秒で終わりますし、体の位置とセットで入るので、思い出すときも指が動きます。
そのうえで、どこで何をするかを一言ずつ付けます。長い説明は要りません。
- 口…かみくだく。だ液をまぜて、でんぷんを変化させる。
- 胃…胃液でどろどろにする。
- 小腸…養分を吸収する(ここがいちばん大事)。
- 大腸…おもに水分を吸収する。
テストでよく出るのは、「消化」と「吸収」のちがいです。消化=食べ物を体に取りこめる大きさに変えること。吸収=それを体の中に取り入れること。変えるのと取り入れるのは別の作業だと言っておくと、2つの言葉の取りちがえが減ります。
だ液のはたらきは、ヨウ素液の実験とセットで聞かれます。ごはんつぶにヨウ素液をかけると青むらさき、だ液を混ぜてしばらく置いたものは色が変わらない——でんぷんが別のものに変わったからです。「だ液がでんぷんを消化した」と言葉で言えれば十分です。
消化を手伝う、もう2つの脇役:すい臓とかん臓
通り道(口→食道→胃→小腸→大腸→こう門)だけを覚えると、見落としがちな事実があります。消化液を出しているのは、口(だ液)と胃(胃液)だけではありません。すい臓とかん臓も、それぞれの消化液を小腸に送りこんでいます。
- すい臓…「すい液」を小腸に送る。でんぷん・たんぱく質・しぼうのどれも分解できる、消化液の中でいちばん働き者。
- かん臓…「たんじゅう」を作って小腸に送る。たんじゅうそのものは消化液ではないが、しぼうを水に混ざりやすくして、すい液が分解しやすくなるよう手助けする。
かん臓はこのあと「ためる・変える係」として出てきますが、実はもう1つ、消化を手伝う役目も持っています。すい臓とかん臓は食べ物が通る道すじそのものには出てこない臓器なので、子どもは2つとも素通りしやすいのですが、どちらも小腸へ合流する支流だと考えると、だ液・胃液と同列に並びます。
通り道は1本だけど、その通り道に外から消化液を届けている臓器が2つある——そう整理すると、「消化液は口・胃・すい臓・かん臓の4か所から出て、ぜんぶ小腸に集まる」という1枚の地図になります。
小腸のじゅう毛と、肺のはい胞は「同じ工夫」
ここが、この単元でいちばん得をする理解です。
小腸の内側にはじゅう毛という細かい突起がびっしり生えています。肺の中ははい胞という小さなふくろが、ぶどうの房のように集まっています。名前も場所もちがうので、子どもは2つの別の暗記として持ちます。
でも、やっていることはまったく同じです。デコボコにして、ふれる面積をかせぐ。 平らなままだと少ししか受けとれないので、細かく分けて表面を増やしている。それだけです。
- じゅう毛が増やしているのは、養分を受けとる面積。
- はい胞が増やしているのは、酸素を受けとる面積。
家庭では、タオルを1枚ひろげて「これが平らな壁」、くしゃくしゃに丸めて「これがじゅう毛と、はい胞」と見せるだけで伝わります。2つ覚えるのではなく、1つの工夫が2か所にある——そう置きかえられた子は、記述問題で「表面積を大きくして吸収しやすくするため」と自分の言葉で書けるようになります。
血液は「行きと帰り」。動脈・静脈を色で覚えない
循環でつまずく原因は、ほぼ1つに決まっています。動脈=赤(酸素が多い)、静脈=青(酸素が少ない)と色で覚えてしまうことです。図がそう塗ってあるので無理もないのですが、これは根きょになりません。
正しい決め方はこうです。
- 動脈=心臓から出ていく血管
- 静脈=心臓へ帰ってくる血管
つまり向きで決まるのであって、中身では決まりません。証拠になるのが肺動脈です。心臓から肺へ向かうので動脈ですが、中を流れているのは酸素の少ない血です。逆に肺静脈は、肺から心臓へ帰ってくるので静脈ですが、中身は酸素の多い血です。色で覚えた子は、ここだけは必ずまちがえます。
そこで、通り道を2周に分けて言わせます。
- 肺へ行って帰る短い旅…心臓 → 肺 → 心臓。ここで酸素を積む。
- 体じゅうを回る長い旅…心臓 → 全身 → 心臓。ここで酸素と養分を配って、二酸化炭素を受けとる。
言えるようになったら、手首か首すじに指をあてて脈をさわらせてください。今この瞬間にその2周が回っていることが、体感で分かります。教科書の図が、自分の話に変わる瞬間です。
「出す」を足すと、単元が1本につながる
入れる・運ぶまで来たら、最後に「出す」を足します。ここまで来て、ようやく1本になります。
- 肺…二酸化炭素を、はく息として出す。
- じん臓…血液からいらないものをこして、にょうにする。ぼうこうにためて出す。
- かん臓…養分をたくわえる。体に害のあるものを、害の少ないものに変える。
じん臓とかん臓は、名前が似ているせいで入れかわります。じん臓=こし出す係、かん臓=ためる・変える係と、はたらきの動詞で覚えさせてください。「じん臓は何をする臓器?」ではなく「こし出すのはどっち?」と聞くと、はたらきのほうから思い出す回路ができます。
ここまでを、1本でつないで言わせてみます。
「口から入った食べ物は、小腸で養分になって血に入る。鼻から入った空気は、はい胞で酸素になって血に入る。血は心臓に押されて全身に配り、いらなくなったものを持ち帰って、肺とじん臓から外に出す。」
この4行が言えたら、この単元はほぼ終わりです。用語は、この4行のどこに置くかを決めるだけになります。
家庭でできる、5分の練習
覚え直しではなく、思い出す練習にしてください。理科の用語は、見返した回数ではなく、思い出した回数で残ります。
- 指なぞり…口から順に、体の上を指でたどりながら声に出す。1日1回・15秒。
- ごはんの話にする…食卓で「さっきのごはん、いまどこ?」と聞く。「胃」「そろそろ小腸」と答えられれば入っています。
- 脈をはかる…15秒数えて4倍する。動いたあとにもう一度はかると増えている。「なぜ増えたか」を聞くと、酸素を早く配るためだと自分で気づきます。
- 両方向で聞く…「小腸は何をする?」と「吸収するのはどこ?」の両方の向きで聞く。テストはどちらの向きでも出ます。
やってはいけないのは、図に書きこまれた用語をひたすら赤シートで隠す練習だけにすることです。順番と役わりが言えるかを確かめないまま用語だけ覚えると、少し言いかえられた問題文でくずれます。
合いことば ―「すい臓とかん臓は、小腸に荷物を届ける脇役。」
すい臓とかん臓の役わりで迷ったら、この合いことばに戻ってください。「すい臓とかん臓は、小腸に荷物を届ける脇役。」 主役の通り道(口→食道→胃→小腸→大腸→こう門)は1本道のままで、すい臓とかん臓はそこに外から合流する支流です。
よくある質問
すい臓とかん臓は、消化管(口→食道→胃→小腸→大腸→こう門)に入りますか?
入りません。消化管は食べ物が実際に通る1本の道で、すい臓とかん臓は道の外にあって、消化液だけを小腸に送りこむ臓器です。通り道と、通り道に荷物を届ける臓器を分けて覚えると混乱しません。
たんじゅうは消化液ですか?
厳密には消化液そのものではありません。たんじゅうはしぼうを水に混ざりやすい小さなつぶに変えて、すい液がしぼうを分解しやすくする手助けをします。小学校では「消化を助けるもの」として覚えておけば十分です。
すい液は何を分解できますか?
でんぷん・たんぱく質・しぼうの3つすべてです。だ液はでんぷんだけ、胃液はたんぱく質だけに対して、すい液はこの3つ全部に働く点が、ほかの消化液とのちがいです。
かん臓の「ためる・変える」と、たんじゅうを作るのは別の仕事ですか?
はい、別の仕事です。「ためる・変える」は養分や体に害のあるものに対するはたらき、たんじゅうを作るのは消化を手伝うはたらきで、かん臓は1つの臓器で2つの役目をこなしています。
つまずいたときに、どこへ戻るか
まちがえた問題が出たら、用語をもう一度覚え直させる前に、どこでずれたかを見てください。戻り先は4つしかありません。
- 順番が出てこない → 指なぞりに戻る。名前より先に道すじ。
- 動脈・静脈をまちがえる → 「向きで決まる」に戻る。色は根きょにならない。
- 記述で書けない → 「表面積をかせぐ」「配る・持ち帰る」の言葉に戻る。
- すい臓・かん臓を忘れる → 「小腸に荷物を届ける脇役」に戻る。消化液は口・胃・すい臓・かん臓の4か所。
人のからだは、理科の中でもめずらしく教材が自分の体である単元です。指でなぞれて、脈がさわれて、ごはんを食べれば動いている。テキストを増やすより、その場でさわって確かめるほうが早く入ります。今日の夕食のときに1問だけ、聞いてみてください。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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