かけ算九九が覚えられない子への、家庭でできる練習のしかた
2026年10月7日 更新📖 約9分で読めます
九九は全部を平等に練習するより、止まっている段だけを見つけて直すほうが早く定着します。つまずきやすい段の見分け方、ひっくり返しで実質45個に絞り込む考え方、逆から聞く練習、わり算や分数へつながる土台の作り方を紹介します。
「九九が覚えられない」の正体は、たいてい2〜3個の段
2年生の秋、多くの家庭が九九の練習に付き合うことになります。そして「何度やっても覚えられない」というご相談がとても多い単元でもあります。ただ、実際にお子さんの様子を1回だけ丁寧に見てみると、81個すべてが言えないという子はほとんどいません。詰まるのは決まった2〜3個の段、しかもその中の数個だけ、というのが普通です。
ところが家庭では「覚えられない」=「最初から全部やり直し」と考えて、1の段からもう一度カードを回してしまいがちです。これは、すでに言える段を何十回も言い直す時間になります。時間ばかりかかって手ごたえが無いので、子どもは「自分は九九ができない」という印象だけを強くしてしまいます。まず、止まる場所を特定してください。直すのはそこだけで足ります。
止まる段を1回で見つける:ランダムに10問だけ
見つけ方は簡単です。段の順番どおりに言わせるのではなく、バラバラの順で10問だけ口頭で出します。「7×4は?」「3×8は?」「6×7は?」というように、段をまたいで出すのがポイントです。
順番どおりに唱えられる子でも、バラバラにすると急に止まることがあります。これは「かけ算の答えを覚えている」のではなく、歌のように前から順に唱え直して答えを探している状態です。順番に唱えれば正解するので、家庭では「覚えている」と判断されやすいのですが、テストや文章題ではこの方法が間に合いません。
- 2秒以内に答えが出る:定着しています。練習は不要です。
- 少し黙ってから正解する:唱え直して探しています。あと一歩なので、その式だけを集中的に。
- ちがう答えを言う/答えられない:まだ入っていません。ここが練習の対象です。
止まった式だけを紙の端に書き出します。たいてい5〜10個に収まります。この「自分の苦手リスト」が、そのまま今週の練習メニューになります。
つまずきやすい段には理由がある
詰まる段には、はっきりした傾向があります。原因が分かると、責める気持ちが減って対応も具体的になります。
- 7の段:答えの並びに規則が見えにくく、言い方としても「しち」が続いて口が回りにくい段です。「7×6=42」「7×8=56」あたりが最後まで残りやすい定番です。
- 8の段:「はっぱ64」のように語呂が独特で、4の段(8×4と4×8)と混ざりやすい段です。
- 6の段・4の段の後半:6×7、6×8、4×7、4×8など、大きい数どうしの組み合わせが共通してあやしくなります。段の前半は言えるのに後半で落ちるのは、練習がいつも「いんいちがいち」から始まっていて、後半に来るころには集中が切れているためです。
- 読み方が原因のもの:「ししちにじゅうはち(4×7)」「しちしにじゅうはち(7×4)」のように、音が似ていて口が回らないだけのこともあります。この場合は暗記の問題ではないので、ゆっくり2回言わせれば解決します。
逆に、段の後半でいつも落ちる子には練習の開始位置を変えるだけで効くことがあります。今日は「7×9」から逆に降りていく、明日は「7×5」から始める。始まりを変えると、後半の式が「集中している時間」に当たるようになります。
見た目より少ない:九九は実質45個 ― 「ひっくり返し」で半分近くは終わっている
九九表は81マスありますが、本当に覚える必要がある数はそれよりずっと少なくなります。理由は、かけ算は数を入れ替えても答えが変わらないという性質です。「4×7=28」「7×4=28」は答えが同じなので、どちらかを覚えていれば、もう半分は終わっているのと同じです。
81マスのうち、同じ数どうし(1×1、2×2…9×9)の9マスだけは入れ替える相手がいません。残り72マスは、2マスずつペアになって同じ答えを分け合っています(72÷2=36組)。つまり、本当に新しく覚える式は36組+9個=45個。81マスのうち半分近くは、覚えた45個をひっくり返すだけで出てくる計算になります。
これは「止まる段を1回で見つける」(前の節)で書き出した苦手リストにも使えます。「7×4」で止まったら、まず「4×7」を聞いてみてください。即答できるなら、その式はすでに覚えています。足りないのは計算の力ではなく、見慣れない順番に聞こえているだけです。この場合は答えを一から教え直すのではなく、同じ式を入れ替えた形で何度か聞かせるだけで十分です。
逆に、ひっくり返しても両方とも出てこない式は、本当にまだ入っていない式です。苦手リストの中身を「ひっくり返せば出てくる」ものと「どちらから聞いても出てこない」ものに仕分けると、今夜どちらに時間を使うべきかがはっきりします。
家庭でできる練習:1日3分、逆から聞く
九九の練習は、長くやるほど良いものではありません。短く・毎日・答えを言わせる形がいちばん定着します。おすすめは次の3つです。
- 逆から聞く:「42になるのは、何かける何?」と、答えのほうから聞きます。これができると、わり算に直接つながります。「42÷7」で止まる子は、たいていこの逆向きの引き出しがまだ無い状態です。
- 苦手リストだけ回す:さきほど書き出した5〜10個だけを、朝と夜に1回ずつ。全部の段を回すより圧倒的に速く、しかも手ごたえが出ます。言えるようになった式はその場で線を引いて消します。減っていくのが見えることが、子どもにとっていちばんの燃料になります。
- 意味に戻す:どうしても入らない式が1つ2つ残ったら、暗記を足すより意味に戻したほうが早いことがあります。「7×8が分からないなら、7×7が49、それに7を足して56」。これは逃げ道ではなく、かけ算の意味そのものです。この道を持っている子は、忘れても自力で戻ってこられます。
逆に、あまりおすすめしないのが「言えるまで書き取り」です。書く作業は口で言うより時間がかかるうえ、手が動いている間は答えを思い出す練習になっていません。九九は思い出す回数で決まります。
九九はこの先どこで効いてくるのか
九九を急ぐ理由は、テストの点ではありません。このあとの算数が、ほぼ全部この上に乗るからです。
- わり算(小3):「45÷5」は、九九を逆にたどる作業です。九九があやしいと、わり算は毎回が探しものになります。
- あまりのあるわり算・筆算(小3〜小4):商の見当をつける場面で、九九が瞬時に出ないと手が止まります。
- 約分・通分(小5):「12と18の両方でわれる数」を探すのは、九九の逆引きそのものです。分数が苦手な子の原因が、さかのぼると九九だったというのはよくあります。
- 面積・単位あたりの量・割合(小5〜小6):計算そのものより考え方が主役になる単元では、計算に注意を取られている余裕がなくなります。
つまり九九は「2年生で終わる単元」ではなく、そのあと4年間ずっと使う道具です。だからこそ、今つまずいている数個を放置しないだけの価値があります。
覚えられない日が続いても、責めない
九九は、家庭でいちばん親子げんかになりやすい単元でもあります。毎晩付き合う側も疲れますし、子どもは「またできなかった」を毎日積み上げることになります。ここで効くのは、はげましの言葉よりもできた分が目に見える形です。
苦手リストが10個から7個に減った。昨日は詰まった7×6が、今日は一発で出た。この2つは立派な前進ですが、記録していないと誰にも見えません。紙の端に日付と残り個数を書くだけでもかまいません。「昨日より3個減った」が見えると、子ども自身が続ける理由を持てるようになります。
書く場所が続かないようなら、その日やったことと次の作戦を1分で残せるアプリを使う手もあります。大事なのは形式ではなく、進んだことが本人に見えていることです。
合いことば ―「それ、知らないだけ? それとも、ひっくり返しただけ?」
苦手リストにある式が止まったら、答えを教える前にこの一言だけ試してください。「それ、知らないだけ? それとも、ひっくり返しただけ?」 入れ替えた式をすぐ言えたなら、覚えているのに気づいていなかっただけです。両方とも出てこないなら、そこが本当に練習が必要な式です。
よくある質問
1.「4×7」と「7×4」は、両方練習しないといけませんか
答えはどちらも28で同じなので、片方が2秒以内に出るなら、もう覚えています。足りないのは「ひっくり返した形に慣れること」だけなので、言い方を変えて数回聞くだけで十分です。ただし「7人に4個ずつ配る」と「4人に7個ずつ配る」は場面としては別なので、文章題で式を立てる練習まで省略しないでください。
2.「1×1」や「5×5」のような同じ数どうしは特別ですか
はい。9×9=81までの同じ数どうしの9個(1×1・2×2・3×3・4×4・5×5・6×6・7×7・8×8・9×9)だけは入れ替える相手がいません。この9個は必ず単独で覚える必要があるので、短いリストとして別枠で練習すると効率的です。
3.結局、九九は何個覚えればいいのですか
81マスある九九表のうち、入れ替えると答えが重なる36組(72マス)と、相方のない9個(同じ数どうし)を合わせた45個が、実際に新しく覚える必要がある数です。残り36マスは、覚えた45個をひっくり返すだけで出てきます。
4.この考え方は、いつ教えればいいですか
九九をひととおり習い終え、苦手リスト(この記事の「止まる段を1回で見つける」)が5〜10個に絞れたあとがおすすめです。覚えたての時期にひっくり返しの話をすると、かえって式の数が増えたように感じて混乱するお子さんもいます。
まとめ
九九が覚えられないときは、全部をやり直すのではなく、バラバラに10問出して止まる式を5〜10個に絞り込むところから始めてください。詰まりやすいのは7の段・8の段と、各段の後半。練習は1日3分、答えのほうから聞く「逆引き」を混ぜると、そのままわり算と約分の土台になります。そして、減っていく苦手リストを見せること。九九はこの先ずっと使う道具なので、今の数個を直しておく価値は十分にあります。
止まった式が出てきたら、教える前に一度ひっくり返して聞いてみてください。「それ、知らないだけ? それとも、ひっくり返しただけ?」 この一問で、本当に新しく練習すべき式だけに絞り込めます。九九は81マスではなく実質45個、半分近くはすでに終わっています。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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