わり算でつまずく子の“3つのパターン”と家庭での直し方
2026年10月11日 更新📖 約9分で読めます
わり算が苦手な子には共通するつまずき方があります。九九・引き算・意味理解の3パターン別に、家庭でできる具体的な直し方を紹介します。
「わり算になったとたん、急に手が止まる」。小学3〜4年生の保護者からよく聞く悩みです。ただ、この「わり算が苦手」という言い方が、いちばんやっかいです。わり算という一つの苦手は、実は存在しません。わり算の筆算は、九九・引き算・数の意味という別々の力を順番に使う「乗りかえの多い路線」で、止まっているのはそのうちのどれか一つの駅だからです。
だから最初にやることは、ドリルを何枚も解かせることではありません。どの駅で止まっているかを見つけることです。ここさえ分かれば、直すのは全体のほんの一部で済みます。
まず、たった1問で止まっている場所を見分ける
お子さんに 「63 ÷ 9」 を1問だけ出して、途中を声に出しながら解いてもらってください。紙に書くだけだと、どこで詰まったのかが親から見えません。声に出させると、止まった場所がそのまま聞こえてきます。
- 「9の段……9、18、27……」と九九を数え上げはじめる/長く黙る → パターン1(九九)
- 商はすぐ出るのに、筆算にすると引き算のところで止まる・答えがずれる → パターン2(引き算)
- 式そのものは解けるのに、「あめが63個、9人で分けると?」にすると式が書けない → パターン3(意味)
1問で決めつける必要はありません。数日のあいだ、宿題のわり算を1問だけ声に出させてみると、同じ場所で止まることに気づくはずです。同じ場所で2回止まったら、そこが直すべき一か所です。
パターン1:九九があいまいで手が止まる
わり算の商を立てるとき、頭の中では九九を逆から使っています。「63÷9」を解くには「9の段で63になるのは?」と探す必要がある。つまり、九九を「にいちがに、ににんがし……」と前から順に言える状態では足りず、答えの側から段を引き当てられないと使えません。ここが遅い・あいまいな子は、わり算ではなく九九でつまずいています。
- 直し方:全部やり直す必要はありません。苦手な段は7の段・8の段に集中していることがほとんどなので、そこだけをしぼって口で言う練習にします。
- 逆引きにする:「56は何の段?」「9の段で、いちばん大きくて50に近いのは?」と、答えから段を聞く形にします。わり算で使うのはこの向きだからです。お風呂や車の中の1分で足ります。
- 紙に書かせない:九九は「思い出す速さ」が問題なので、書く練習だと遅さが隠れてしまいます。口頭で、2秒以内に出るかどうかで見ます。
ここが直ると、わり算の練習をまったくしていなくても、わり算の手が動きはじめます。九九は土台なので、上に積んだものが一緒に持ち上がるからです。
パターン2:あまりの引き算でまちがえる
筆算のわり算は、「たてる→かける→ひく→おろす」をくり返します。この4動作のうち、子どもが自分では気づけないのが「ひく」です。式の形は正しいのに答えだけが合わない子は、ほぼこのタイプだと思ってかまいません。
- 直し方:わり算を増やすのではなく、「くり下がりのある引き算」だけを数問はさみます。土台の引き算が安定すると、わり算の正答率も一緒に上がります。
- マス目のノートにする:わり算の筆算は、引いた答えを書く位置が1マスずれるだけで以降が全部ずれます。方眼ノートに変えるだけで減るミスは、思っているより多いです。
- 「おろす」を指でなぞらせる:次の位の数字をおろし忘れるのも定番です。おろす数字を指でさしてから書く、という手順を体で覚えさせます。
なお、0を立てる筆算(618÷3=206 のように、途中の位に0が立つもの)は、このパターンの子がとくに崩れる形です。「1は3でわれないから、0を立てて次をおろす」と口に出させると、0を飛ばして書いてしまう事故が減ります。
パターン3:わり算の“意味”がつかめていない
「12個のあめを3人で分ける」と「12個のあめを3個ずつ配る」。どちらも 12÷3 ですが、出てくる答えの意味はちがいます。前者は1人分の数(4個)、後者は配れる人数(4人)です。この2つが頭の中で区別できていないと、計算はできるのに文章題で式が立てられません。
- 直し方:式の前に、手で分けてみます。おはじき・あめ・トランプなど、実際に動かせる物なら何でもかまいません。「3人に同じ数ずつ」と「3個ずつの山に」を、同じ12個で両方やらせるのがいちばん速いです。
- 言葉にさせる:「これは何を、何で分けているの?」と聞きます。答えられたら、その時点で式は書けます。
- 答えの単位を書かせる:「4個」なのか「4人」なのかを毎回書かせると、意味を考えざるを得なくなります。文章題対策として、いちばん手間の少ない習慣です。
小4でもう一度つまずく ── 2けたでわる筆算の「見当づけ」
上の3つを直しても、小4でもう一度止まる子がいます。2けたの数でわる筆算に入ったときです。ここは九九が直接使えないので、「だいたいこのくらい」と商の見当をつけて、合わなければ直す、という新しい動きが必要になります。1回で当てる必要はないということを、まず大人が伝えてあげてください。子どもは「一発で当てられないのは自分がバカだから」と思い込みがちです。
見当のつけ方には、はっきりしたクセがあります。
- 切り上げて考えると、商は小さすぎになりやすい:234÷38 で「38を40とみて」5と立てると、38×5=190、234−190=44。あまりの44がわる数の38より大きいので、商が小さすぎ。6に直すと 38×6=228、234−228=6 で収まります。
- 切り捨てて考えると、商は大きすぎになりやすい:144÷23 で「23を20とみて」7と立てると、23×7=161 で144を超えてしまう。6に直すと 23×6=138、144−138=6 です。
つまり、40とみたら1増やす方向、20とみたら1減らす方向を先に疑う。これを知っているだけで、直しの回数が減って手が止まらなくなります。
「あまり」は、子どもが自分で答え合わせできる
わり算には、大人に聞かなくても自分でまちがいを見つけられる仕組みが2つあります。宿題を親が丸つけできない日にこそ効きます。
- あまりは、わる数より必ず小さい:あまりがわる数以上になっていたら、その時点で商が小さすぎます。上の 234÷38 の例が、まさにこれで見つかりました。
- わる数 × 商 + あまり = わられる数:38×6+6=234。合えば正解、合わなければどこかがずれています。
この2つを「答えを出したら必ずやること」として教えておくと、まちがいに自分で気づける状態になります。親が見るのは、検算をやったかどうかだけで済みます。
家庭でのコツ:直すのは一度に1つだけ
つまずきが見つかると、つい全部まとめて直したくなります。しかし九九・引き算・意味を同時に指摘されると、子どもには「わり算が全部ダメ」としか聞こえません。これがいちばん、やる気を削ります。
止まっている場所を1つに決めたら、2週間はそこだけを相手にしてください。九九なら7の段だけ、引き算ならくり下がりだけ。範囲が狭いほど、できるようになった実感が早く出ます。そしてその実感が、次の一か所に向かう力になります。
声のかけ方も、「なんでできないの」ではなく「今どこまで進んだ?」にします。止まった場所を子ども自身が言えるようになれば、その子はもう自分でつまずきを見つけられます。
放っておくとどうなるか ── 5年の分数のわり算・6年の比につながる
「3〜4年生のうちなら、まだ慌てなくても」と考える保護者も多いですが、整数のわり算は一度習ったら終わる単元ではありません。上の学年の計算が、整数のわり算を部品としてそのまま使い続けるからです。
- 5年の分数のわり算:「3/4 ÷ 2」のような計算は、ひっくり返してかける手順自体は機械的に覚えられても、途中の約分や商の見積もりには整数のわり算の感覚がそのまま要ります。わり算そのもので止まっていると、分数という新しい表記が重なった分だけつまずきが二重になります。
- 5年の単位量あたりの大きさ・平均:「速さ」「人口密度」「1人あたり」はどれも「大きい数 ÷ 小さい数」で1つ分を求める計算です。わり算の“意味”がつかめていないパターン3のまま進むと、計算そのものより先に、式を立てる段階で止まります。
- 6年の比・比例反比例:比を簡単にする作業も、約分と同じ「わる」操作の繰り返しです。
逆に言えば、いま整数のわり算を直しておけば、その後の単元は「わり算を知らない」ところからではなく「新しい表記を覚えるだけ」のところから始められます。学年が上がるほど1つの単元にかけられる時間は短くなるので、土台を先に固めておくほど、あとの負担が軽くなります。
よくある質問
学校の授業ではもうわり算が終わっていますが、今から直して意味はありますか?
あります。わり算は5年の分数・単位量あたりの大きさ、6年の比など、あとの単元でも部品として使われ続けます。いま直すほど、あとの単元が楽になります。
九九の練習と、わり算の練習はどちらを先にやるべきですか?
九九があいまいなパターン1なら、先に九九の逆引きだけを直してください。土台の九九を直すと、わり算の練習をしなくても手が動き出すことがあります。
どの程度できれば「卒業」と考えていいですか?
目安は、検算(わる数×商+あまり=わられる数)を自分から行うようになることです。答えを出して終わりではなく、合っているか自分で確かめられれば、わり算は土台として使える状態です。
電卓を使わせて先に進めてもいいですか?
単位量あたりの大きさなど、意味の理解が目的の場面では電卓もかまいません。ただし九九・引き算が原因のパターン1・2は、電卓では直りません。止まっている場所を先に見分けてから使い分けてください。
まとめ
わり算の苦手は1つではありません。九九・引き算・意味理解のどこで止まるかで、手当てはまったく変わります。まず1問を声に出して解かせて止まる場所を特定し、そこだけを2週間直す。小4で2けたのわり算に入ったら、見当づけは1回で当てなくていいと伝え、「あまり<わる数」と検算を習慣にする。
「わり算がぜんぶ苦手」と決めつけず、止まる場所を一つ見つけて、そこだけ直す。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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