倍数・約数でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 混ざるのは、さがす向きが逆だから
📖 約8分で読めます
5年算数の倍数・約数は、九九が言えるのにつまずきます。原因は計算ではなく向きです。倍数はその数から増えていって終わりがなく、約数はその数を作る部品だから必ず1で止まる ― この逆向きを分けたうえで、約数をペアで書き出して数え落とさない方法、「最大公約数と最小公倍数のどちらを使うか」を場面で決める見分け方、通分・約分への直結、カレンダー1枚でできる家庭の確かめ方までまとめました。
混ざるのは、覚え方が悪いからではなく、さがす向きが逆だから
5年生で倍数・約数が出てくると、九九を全部言える子でも手が止まります。そして親から見ると、原因が見えません。かけ算もわり算もできているからです。
止まる理由は、たいてい1つです。
倍数と約数が、頭の中で同じ作業になっている。
子どもはどちらも「九九のどこかにある数をさがす」つもりでやっています。だから「12の倍数を書きなさい」に 1, 2, 3, 4, 6, 12 と書き、「12の約数を書きなさい」に 12, 24, 36 と書く。ぴったり反対の答えを書いてしまいます。
この2つは、さがす向きが逆です。そこだけ先に分けます。
- 倍数=その数を出発点にして、増えていくほう。12, 24, 36, 48… といくらでも続く(終わりがない)。
- 約数=その数を作っている部品のほう。1, 2, 3, 4, 6, 12 でおしまい(終わりがある)。
言い方を覚えさせるより、「終わりがあるほうが約数」と1つだけ渡すほうが速いです。書き出させて、止まらなければ倍数、止まったら約数。自分の手の動きで見分けられます。
もう1つ、必ず言っておくことがあります。どんな数でも、約数には必ず1とその数自身が入る。7の約数は1と7の2つです。「7は九九に出てこないから約数がない」と言う子がかなりいます。
約数は「たて×よこ」で書き出すと、数え落とさない
約数でいちばん多いミスは、まちがえることではなく数え落とすことです。24の約数を「1, 2, 3, 4, 6, 12, 24」と書いて、8を落とす。順番に思い出そうとするから抜けます。
抜けをなくすには、2つで1組(ペア)にして書かせるのがいちばん確実です。「かけて24になる2つの数」を、小さいほうから順に。
- 1 × 24
- 2 × 12
- 3 × 8
- 4 × 6
5は24をわり切れないので飛ばします。次は6ですが、6はもう右がわに出ています。右と左がぶつかったら、そこで終わり。約数は 1, 2, 3, 4, 6, 8, 12, 24 の8個です。ペアで書けば、8を落としようがありません。
これはたて×よこの長方形で見せると、そのまま絵になります。24個のブロックを長方形にならべる並べ方が、そのまま約数のペアです。1×24の細長いのから、4×6のずんぐりしたのまで。約数=きれいな長方形にできる並べ方と分かると、「わり切れる」の意味も一緒に入ります。
1つだけ、形の例外があります。36でやると 1×36, 2×18, 3×12, 4×9, 6×6 となり、最後が同じ数どうしになる。このときは6を1回だけ数えて、約数は 1, 2, 3, 4, 6, 9, 12, 18, 36 の9個(奇数個)です。正方形にできる数だけ、約数の個数が奇数になります。面白がる子がいるので、余力があるときだけで十分です。
「最大公約数」と「最小公倍数」のどちらを使うかは、言葉では決まらない
次の関門は文章題です。用語が言えても、どちらを使うのかが選べない。ここで点を落とします。
選び方は、言葉ではなく場面で決まります。区別はこの2つだけです。
- 分ける・配る・切り分ける → 公約数(できるだけ多く配りたい=最大公約数)
- そろう・重なる・次にまた同時になる → 公倍数(次にそろうのはいつ=最小公倍数)
実際の問題で見ます。
「クッキー12個とあめ18個を、あまりが出ないように同じ数ずつ配ります。何人まで配れますか」——配るので公約数です。12の約数は 1, 2, 3, 4, 6, 12。18の約数は 1, 2, 3, 6, 9, 18。両方にあるのは 1, 2, 3, 6 で、いちばん大きいのは6。答えは6人(1人あたりクッキー2個・あめ3個)です。
「6分おきに出るバスと8分おきに出るバスが、いま同時に出ました。次に同時に出るのは何分後ですか」——次にまた同時なので公倍数です。6の倍数は 6, 12, 18, 24…。8の倍数は 8, 16, 24…。いちばん小さいそろい目は24分後です。
問題文の中の「配る」「分ける」「同時」「そろう」に先に○をつけさせるだけで、選びまちがいはかなり減ります。用語を覚え直させるより効きます。
「最小」なのに大きく、「最大」なのに小さいのが、気持ち悪い
ひっかかるところが、もう1つあります。最小公倍数は答えが大きく、最大公約数は答えが小さい。名前と逆に感じるのです。
これは、さっきの「終わりがあるかどうか」で説明がつきます。
- 倍数はいくらでも大きくできるので、「いちばん大きい公倍数」は決められない。だからいちばん小さいのを聞くしかない。
- 約数は1で止まるので、「いちばん小さい公約数」はどんな数でも必ず1になってしまい、聞く意味がない。だからいちばん大きいのを聞くしかない。
聞けるほうを聞いているだけ——そう言うと、たいていの子は納得します。ここを飲みこめると、用語を丸暗記しなくても、どちらの「最」がつくかを自分で言い当てられるようになります。
なお、公倍数を全部書けと言われたら 24, 48, 72… と最小公倍数の倍数が並びます。最小公倍数さえ出れば、あとはそれを何倍かするだけです。
すだれ算は、書き出しができてから
塾などで、2つの数を横にならべて共通の数で次々わっていく形(すだれ算・連除法)を先に習ってくる子がいます。速いのですが、手順だけ覚えると意味が消えます。わり切れる数が見つからなくなった時点でなぜ止めるのか、なぜ横の数だけをかけると最大公約数で、L字にかけると最小公倍数なのか、説明できなくなるからです。
家庭では、まず書き出しで答えを出させてから、同じ問題をすだれ算でやらせて答えが合うことを確かめる順番にしてください。書き出しは遅いですが、遅いことが問題なのはテストのときだけです。意味が入ったあとなら、速い方法は勝手に使うようになります。
書き出しを速くするコツもあります。倍数の共通点をさがすときは、大きいほうの数の倍数から書く。6と8なら、8, 16, 24 と書いて「6でわり切れるか」を見るほうが、6の倍数を24まで4つ書くより短くてすみます。
ここでつまずくと、分数が全部止まる
倍数・約数を「テストが終わったら忘れていい単元」だと思っている子(と親)が多いのですが、この直後に分数が待っています。
- 通分(分母をそろえる)=分母の最小公倍数をさがす作業そのもの。
- 約分(できるだけ小さくする)=分子と分母の最大公約数でわる作業そのもの。
つまり、分母のちがう分数のたし算で止まる子の多くは、分数でつまずいているのではなく、倍数・約数で止まっているのです。分数の練習を増やしても直りません。分数が苦手な子への教え方で「通分の前に公倍数を口で言わせる」としているのは、この理由です。6年の比で「簡単にする」のも、やっていることは最大公約数でわる約分です。
逆に言えば、ここを1週間ていねいにやると、あとの1年ぶんが軽くなる。学年の中で、費用対効果がいちばん高い単元の1つです。
テストで落とす4つ
- 倍数と約数を逆に書く:いちばん多い。書き出して止まるかどうかで自分で見分けさせる。
- 約数を数え落とす:24の8、36の6など。ペア(○×○)で書き出す形に固定する。
- 1とその数自身を忘れる:とくに「1」。約数はいつも1から始めて、その数で終わると手順に入れる。
- 公約数と公倍数の選びまちがい:問題文の「分ける・配る」「同時・そろう」に○をつけてから解かせる。
家庭での確かめ方は、カレンダー1枚
この単元は、ドリルより身のまわりの数のほうが早く入ります。倍数も約数も、もともと「同じ数ずつ」の話だからです。
- カレンダーに3の倍数を○でかこませる:3, 6, 9… と印をつけると、ななめにきれいに並ぶのが見えます。「4の倍数だとどうなる?」まで続けると、倍数が模様として頭に残ります。
- おかしを配らせる:「このグミ18個、家族4人で同じ数ずつ分けられる?」——分けられない理由が4が18の約数ではないからだと分かると、約数が生活の言葉になります。
- ブロックやタイルで長方形を作らせる:12個で何通りの長方形ができるか。1×12, 2×6, 3×4 の3通り(たてよこを入れかえたものを別に数えなければ)。並べ方の数=約数のペアの数です。
- 「次にそろうのはいつ」を時刻で聞く:5分おきの電車と7分おきのバスなら、次にそろうのは35分後。公倍数は待ち合わせの計算だと分かります。
1日5分で足ります。書き出しの手だけ動かさせるのが目的なので、正解を急がせないでください。毎日1問を続ける形にしたいときは、家庭学習を続けるしくみのほうに寄せてしまうのが楽です。
親が言うのは、この1つだけでいい
手が止まったとき、答えを教える必要はありません。かわりに、この1問を渡してください。
「それ、増えていくほう? 分けるほう?」
倍数・約数のまちがいは、ほぼ全部ここに戻ります。どちらの向きをさがしているかを自分の口で言えたら、子どもはその場でずれに気づきます。がい数で「いま、どのけたを見てるの?」と聞くのと同じで、教えるのではなく、見ている場所を確認させる——この形が、算数ではいちばん長く使えます。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
あわせて読みたい
- 算数・約8分文章題が解けない子の“読み取り”のつまずきと家庭でのサポート
計算はできるのに文章題になると手が止まる。その多くは計算力ではなく「読み取り」のつまずきです。原因と、家庭でできる具体的なサ…
- 算数・約10分速さが分からない子への、家庭でできる教え方 ― 「きはじ」の円を書く前に、単位をそろえる
5年生の速さは、公式を忘れたからではなく、時間の単位がそろっていないから合いません。速さ=1時間あたりに進む道のりという読み…
- 算数・約7分平均と単位量あたりの大きさでつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 別々に覚えず「ならす」1本にそろえる
平均と単位量あたりの大きさは、教科書では別の単元ですが、やっていることは同じ「ならす」です。平均は合計÷個数、単位量あたりは…
ほかの困りごとをさがす
記事の見出しと、本文の小見出しからさがします。