速さが分からない子への、家庭でできる教え方 ― 「きはじ」の円を書く前に、単位をそろえる
2026年10月11日 更新📖 約10分で読めます
5年生の速さは、公式を忘れたからではなく、時間の単位がそろっていないから合いません。速さ=1時間あたりに進む道のりという読み方、式を1本にしぼる考え方、45分を0.75時間に直す手順、時速・分速・秒速の行き来、つまずきやすい4つの型と、車のメーターと時刻表でできる家庭練習をまとめました。
速さでつまずくのは、公式を忘れたからではない
5年生の速さは、割合と並んで点が急に落ちる単元です。多くの家庭では「公式を忘れたから」と考えて、もう一度公式を覚え直させます。ところが翌週のテストでまた同じように落とします。
実際に起きていることは別です。答え合わせで子どものノートを見ると、式の形は合っているのに、数がそのまま入っている——これがほとんどです。時速4kmで45分歩いたときに、4 × 45 と書いてしまう。式は「速さ × 時間」で正しいのに、答えは180kmという、歩いて行ける距離ではない数になります。
つまり、速さの失点は公式の記憶ではなく、単位の処理で起きています。ここを直さずに公式を唱え直させても、点は戻りません。
まず、速さが「何の数」なのかを言えるようにする
速さは、4年生までに出てきた数とは種類がちがいます。3個の3、3倍の3、そして時速3kmの3。最後の3は、1時間あたりに進む道のりという意味です。
ここを一度だけ、ことばで言わせてください。「時速40kmって、どういうこと?」と聞いて、「1時間で40km進むということ」と返ってくれば、この単元の半分は終わっています。返ってこない場合は、計算に進んでも身につきません。
「1あたりの量」だと分かると、次の2つがその場で言えるようになります。
- 時速40kmで2時間進んだら、40が2回ぶんで80km。
- 時速40kmで半分の時間なら、40の半分で20km。
公式を使わずに答えが出せるこの感覚が、あとで「答えが明らかに変」と気づく力になります。
「きはじ」の円は、書かせないほうがいい
速さの指導では、円を3つに区切って「き(道のり)・は(速さ)・じ(時間)」と書く図がよく使われます。短期的には点が上がるので、学校や塾で教わってきた子も多いはずです。
ただし、この図には弱点があります。円のどこに何を書くかを、もう1つ覚えなければならないことです。テスト中に「はとじ、どっちが下だったか」を思い出せなくなった子は、その場で何もできなくなります。式の意味を考える道具ではなく、記憶の対象がもう1つ増えただけになってしまうのです。
家庭で渡すなら、覚えるのは次の1本だけにしてください。
速さ × 時間 = 道のり
この1本で3種類の問題が全部解けます。右端(道のり)が分からないなら、そのままかけ算する。左側のどちらかが分からないなら、右端の答えを、分かっているほうで割る。 覚えるのは1本、やることは「空いている場所を探す」だけです。
この形は、割合で使う「もとにする量 × 割合 = くらべる量」とまったく同じ形です。2つの単元で同じ1本を使い回せるので、覚える量はむしろ減ります。
いちばん効くのは、式より先に単位をそろえること
ここが速さの本体です。式を書く前に、時間の単位を速さの単位に合わせる。 この1手を固定するだけで、失点の大半が消えます。
手順は3つです。
- ①速さの単位を見る。 「時速」なら、時間は時間で書く。「分速」なら分、「秒速」なら秒。
- ②問題文の時間が、その単位になっているか確かめる。 なっていなければ直す。
- ③直してから式を書く。
直し方は60で割るか、60をかけるかしかありません。分を時間にするなら60で割ります。
- 30分 → 30 ÷ 60 = 0.5時間
- 45分 → 45 ÷ 60 = 0.75時間
- 15分 → 15 ÷ 60 = 0.25時間
- 20分 → 20 ÷ 60 = 約0.33時間(割り切れないので、この形は分速に直すほうが速い)
さきほどの例に戻ります。時速4kmで45分歩いたら、45分を0.75時間に直してから、4 × 0.75 = 3km。歩いて行ける距離になりました。式は最初から合っていたのです。
答え合わせのときは、式が合っていたかより単位をそろえてから書いたかを先に見てください。速さの丸つけは、そこだけ見れば足ります。
時速・分速・秒速の行き来は、60でしか動かない
もう1つのつまずきどころが、速さそのものの単位を変える問題です。ここは覚えることを1つに減らせます。となりに移るときは、いつも60。
- 時速 → 分速:60で割る(1時間ぶんを60等分するから)
- 分速 → 秒速:60で割る
- 秒速 → 分速、分速 → 時速:60をかける
実際にやってみます。
- 時速72km → 分速は 72 ÷ 60 = 1.2km、つまり分速1200m。
- その分速1200m → 秒速は 1200 ÷ 60 = 秒速20m。
- 分速80m → 時速は 80 × 60 = 4800m、つまり時速4.8km。
ここで事故が起きるのは、60と1000を同時にあつかったときです。時間の単位は60で動き、長さの単位(km↔m)は1000で動きます。別の数なので、1回に1つずつ直させてください。上の例のように、まず60で時間だけ直し、次に1000で長さだけ直す。2つを1つの式でまとめて処理させると、ほぼ確実にどこかで桁がずれます。
つまずきやすい4つの型と、その手当て
- ①分をそのまま入れる:いちばん多い型です。手当ては単位をそろえてから式を書く順番を固定すること。式の左に「45分=0.75時間」と先に書かせます。
- ②÷と×が逆になる:手当ては式を1本にすること。「きはじ」の円を捨てて、速さ × 時間 = 道のり の空いている場所を探させます。
- ③60と1000が混ざる:手当ては1回に1つだけ直すこと。時間を直す行と、長さを直す行を、別の行に分けて書かせます。
- ④答えが明らかに変なのに気づかない:手当ては出した答えを、知っている速さと見くらべさせること。歩く速さは時速4kmくらい、自転車は時速15kmくらい、車は時速40〜60kmくらい。この3つを知っているだけで、180kmという答えはその場で止まります。
4つを一度に直そうとしないでください。1回の見直しであつかうのは1つだけです。①から入ると、点の戻りがいちばん早く見えます。
家庭では、車のメーターと時刻表で足ります
ドリルを増やす前に、速さが実物として目に入る場面を作るほうが効きます。特別な教材は要りません。
- 車のメーターを指して聞く。 「今40って出てるけど、1時間走ったら何km?」。40kmと言えれば合格です。速さが「1時間あたり」だと体で分かります。
- 時刻表や乗りかえアプリの所要時間を見る。 「30分で着くなら、その電車は1時間でどれだけ進む?」。倍にするだけなので、暗算で足ります。
- 歩いた時間をはかる。 家から学校まで何分かかったかだけ記録しておき、地図アプリの距離とつき合わせます。自分の時速が出せた子は、速さを落としません。
どれも1回1分で終わります。毎日でなく、週2〜3回で十分です。
やり方は、短く残しておく
速さの読み方は、速さだけのものではありません。6年の比例、理科の水の流れやふりこ、社会の資料問題——どれも「1あたりでいくつか」を先に決めるところは同じです。今回うまくいった手順を一行だけ残しておくと、ほかの単元で困ったときに戻ってこられます。「式を書く前に単位をそろえる」「式は速さ × 時間の1本だけ」「60と1000は1回に1つずつ」——この程度で十分です。
ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次に同じ形で落としたときに思い出せる形で残っていることです。
往復の平均の速さは、足して2で割ってはいけない
速さの単元がもう1つ仕掛けている、見落としやすい問題があります。行きと帰りで速さが違うとき、往復全体の平均の速さはいくつかという問題です。
多くの子はここで、行きの速さと帰りの速さを足して2で割ります。時速4kmで行って、時速6kmで帰ったら、(4+6)÷2=時速5km——これは不正解です。
理由は、同じ時間ずつ時速4kmと時速6kmで走っているわけではないからです。同じ道のりを進むのに、遅い時速4kmのほうが長い時間かかります。遅いほうに長く乗っている分、全体の平均は時速5kmより時速4kmに近いほうへ寄ります。
平均の速さは、2つの速さを足して2で割る量ではありません。道のりの合計 ÷ 時間の合計で求めます。
実際に計算してみます。行きも帰りも同じ道のりを進むので、両方の速さ(4と6)で割り切れる数、ここでは12kmとしてみます。
- 行き:時速4kmで12km → 12 ÷ 4 = 3時間
- 帰り:時速6kmで12km → 12 ÷ 6 = 2時間
- 往復の道のり:12 + 12 = 24km
- 往復の時間:3 + 2 = 5時間
- 平均の速さ:24 ÷ 5 = 時速4.8km
足して2で割った時速5kmより、遅いほうの時速4kmに近い時速4.8kmになりました。遅いほうに長く乗っているぶん、平均はその遅いほうに引き寄せられる——これが往復の平均の速さの正体です。
道のりが問題文に書かれていないときも困りません。両方の速さで割り切れる数(上の例の12のように)を自分で決めて計算すれば、どの数を選んでも答えの時速4.8kmは変わりません。道のりそのものは、答えに影響しない数だからです。
合いことば ―「平均の速さは、足して2で割らない。道のりの合計 ÷ 時間の合計。」
往復の平均の速さを聞かれたら、まず速さを2つ並べて足し算をしたくなります。そこで止めて、道のりの合計 ÷ 時間の合計を思い出してください。道のりは自分で決めた数でかまいません。行きと帰りのそれぞれの時間を先に出し、それを足してから、道のりの合計を割ります。
よくある質問
Q. 行きと帰りの速さが同じときは、どうなりますか?
A. 同じ速さなら、平均の速さもその速さと同じになります。道のりの合計 ÷ 時間の合計で計算しても、同じ速さどうしなので結果は変わりません。
Q. なぜ(行き+帰り)÷2では求められないのですか?
A. 速さが違うと、同じ道のりを進むのにかかる時間も違うからです。遅い速さのほうが長い時間かかるので、速さだけを単純に平均すると、その時間の重みを無視してしまいます。
Q. 道のりが問題文に書かれていないときはどうすればいいですか?
A. 自分で都合のよい道のりを決めて計算してかまいません。行きと帰りの速さの両方で割り切れる数(例えば2つの速さの最小公倍数)を選ぶと、計算が楽になります。答えは道のりの選び方によって変わりません。
Q. 3つ以上の区間で速さが変わるときも、同じ考え方でいいですか?
A. はい。それぞれの区間の道のりと時間を出し、道のりを全部足した数を、時間を全部足した数で割れば、何区間に分かれていても同じ考え方で平均の速さが求められます。
まとめ
速さでつまずくのは公式を忘れたからではなく、時間の単位がそろっていないからです。まず「時速40km=1時間で40km進む」と言えるようにする。「きはじ」の円は覚える対象を増やすだけなので使わず、速さ × 時間 = 道のり の1本にしぼって、空いている場所を探す形にする。式を書く前に、時間を速さの単位に合わせる(45分なら0.75時間に直してから 4 × 0.75 = 3km)。時速・分速・秒速の行き来は60だけ、長さの km↔m は1000だけで、混ぜずに1回に1つずつ直す。つまずきは4つの型に分かれるので、1回に1つずつ手当てしていきます。練習は車のメーター1つ、1分で足ります。往復で行きと帰りの速さが違うときは、足して2で割らず、道のりの合計 ÷ 時間の合計で平均の速さを求めてください。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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