小数のかけ算・わり算でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 小数点は「動かす」のではなく「数える」
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小数のかけ算・わり算は、計算の力ではなく小数点の置き場所だけで点を落とします。かけ算はけた数を足して右から数える、わり算はわる数を整数にして両方を同じだけ動かす、あまりの小数点だけは元の位置に戻す、という3つの決まりと、1より小さい数でわると答えが大きくなる理由、つまずきやすい4つの型、レシートでできる家庭練習をまとめました。
まちがえているのは計算ではなく、小数点の置き場所
4年生の終わりから5年生にかけて出てくる小数のかけ算・わり算は、テストの点だけを見ると「計算が苦手になった」ように見えます。ところが答案を1枚ずつ見ていくと、様子がちがいます。
2.4 × 1.3 の答えを 31.2 と書いている。9.6 ÷ 0.4 を 2.4 と書いている。数字の並びは合っていて、小数点だけが別の場所にある——これが失点のほとんどです。九九も筆算も、すでにできています。
ですから、ここでドリルの枚数を増やしても点は戻りません。増やすべきなのは計算量ではなく、小数点をどう決めるかの手順です。決まりは3つしかありません。
かけ算は「けた数を足して、右から数える」
小数のかけ算でよく言われるのが「小数点を動かす」という言い方です。これがつまずきの入口になります。動かすとなると、右か左か・いくつぶんかを毎回考えることになり、そのたびに迷います。
かけ算では、小数点は動かしません。数えるだけです。手順は2つです。
- ①小数点を無いものとして、整数のかけ算をする。
- ②2つの数の小数点より下のけた数を足し、その数だけ答えの右から数えて、小数点を打つ。
実際にやってみます。
- 2.4 × 1.3:24 × 13 = 312。けた数は 1 + 1 = 2。312 の右から2つ数えて 3.12。
- 0.8 × 6:8 × 6 = 48。けた数は 1 + 0 = 1。4.8。
- 1.2 × 0.5:12 × 5 = 60。けた数は 1 + 1 = 2。60 の右から2つで 0.60、つまり 0.6。
3つめのように、数えるために 0 を書き足すことがあります。ここで手が止まる子が多いので、家庭では 0.60 の形まで一度書かせてから、最後の 0 を消させてください。いきなり 0.6 と書かせると、「けた数が足りないときはどうするか」が身につきません。
答え合わせのときに見るのは①足したけた数 ②右から数えた回数の2つだけです。式全体を見直させる必要はありません。
わり算は「わる数を整数にする」から始める
わり算だけは、小数点を動かします。ただし動かし方には順番があり、そこを外すと必ず合いません。
先に決めるのは、わる数(あとに出てくるほう)です。 わる数が整数になるまで小数点を右へ動かし、同じ数だけ、わられる数も右へ動かす。両方を同じだけ動かせば答えは変わりません。
- 7.5 ÷ 2.5:わる数 2.5 を整数にするので1つ動かして 25。わられる数も1つ動かして 75。75 ÷ 25 = 3。
- 9.6 ÷ 0.4:0.4 → 4、9.6 → 96。96 ÷ 4 = 24。
- 3 ÷ 0.6:0.6 → 6、3 → 30。30 ÷ 6 = 5。
3つめのように、わられる数が整数のときも動かすことに注意してください。3 は 3.0 と同じなので、1つ動かせば 30 になります。ここを動かし忘れて 3 ÷ 6 と書き、0.5 と答える子はとても多いです。
そして最大の落とし穴が、「動かすのは、わられる数だけ」だと覚えてしまうことです。片方だけ動かすと、答えが10倍または10分の1にずれます。2つはいつもセットで、同じ数だけ動かす——ここだけは声に出して確かめさせてください。
あまりの小数点だけは、動かす前の位置に戻す
「あまりを出しなさい」という問題は、小数のわり算でいちばん正答率が下がります。理由がはっきりしていて、商とあまりで小数点の決め方がちがうからです。
商の小数点は、動かしたあとの位置。あまりの小数点は、動かす前の位置。 この1行がすべてです。
やってみます。7.6 ÷ 2.4 のあまりを出す場合。
- わる数 2.4 を整数にするので1つ動かし、24 と 76 にする。
- 76 ÷ 24 = 3 あまり 4。商は 3。
- あまりの 4 は、動かす前にもどして 0.4。
合っているかは、その場でたしかめられます。2.4 × 3 = 7.2、7.2 + 0.4 = 7.6。もとの数に戻れば正解です。あまりを 4 のままにしていると 7.2 + 4 = 11.2 になり、もとの 7.6 を通りこしてしまう。この確かめ方を渡しておくと、あまりの位置を自分で直せるようになります。
「かけたら大きくなる」は、ここで通じなくなる
3年生までに、子どもはかけ算とわり算の感覚をこう覚えています。かけたら大きくなる。わったら小さくなる。 これは整数の世界では正しく、答えが変かどうかを見分ける力にもなっていました。
小数に入ると、この感覚が逆にはたらきます。
- 1より小さい数をかけると、答えはもとの数より小さくなる:1.2 × 0.5 = 0.6。
- 1より小さい数でわると、答えはもとの数より大きくなる:9.6 ÷ 0.4 = 24。
2つめが特に受け入れにくいところです。「わったのに増えるのはおかしい」と感じたまま計算すると、24 と出た答えを自分で 2.4 に直してしまいます。正しく計算できた子が、感覚のほうを信じて答えをこわす——小数のわり算では、これが起きます。
ことばで納得させるより、意味に置きかえるほうが早いです。9.6 ÷ 0.4 は「9.6の中に0.4がいくつ入るか」。0.4 は小さいので、たくさん入ります。24個入る、で合っています。
0.5 でわる問題なら「半分がいくつ分か=倍になる」と言えれば十分です。この一言があるだけで、書けた答えを消さなくなります。
つまずきやすい4つの型と、その手当て
- ①かけ算でけた数を数えまちがえる:手当ては式の横に、足したけた数を数字で書かせること。2.4 × 1.3 なら式の上に「2」とだけ書く。見直しがその1文字で済みます。
- ②わり算で、わられる数だけ動かす:手当ては先にわる数を見る順番を固定すること。「あとの数を整数にする、同じ数だけ前も動かす」を口に出させます。
- ③あまりの小数点を、商と同じ位置に打つ:手当てはたしかめ算。わる数 × 商 + あまり がもとの数に戻るか、その場で確かめさせます。
- ④答えが自分の感覚と合わず、書き直す:手当ては「いくつ分入るか」に言いかえること。1より小さい数でわると増えるのは正しい、と一度だけ確かめておきます。
4つを一度に直そうとしないでください。1回の見直しであつかうのは1つだけです。まちがえた問題を並べてみると、多くの子はこのうち1つか2つに固まっています。そこだけ手当てすれば、残りは自然に減ります。
家庭では、レシート1枚で足ります
小数のかけ算・わり算は、買い物の中にそのまま入っています。特別な教材は要りません。
- 単価とグラム数を見る。 「100gで158円のお肉、320g買ったらいくら?」。158 × 3.2 です。だいたい500円と見当がつけば十分で、答え合わせは電卓でかまいません。
- 1あたりに直す。 「300gで480円だったから、100gあたりは?」。480 ÷ 3 = 160円。同じ商品の大きい袋と小さい袋で、どちらが得かを比べさせると、わり算の意味がはっきりします。
- 2割引の値札を読む。 「1200円の2割引だから、1200 × 0.8」。1より小さい数をかけると小さくなることが、値札の上で確かめられます。
どれも1回1分で終わります。毎日でなく、買い物のたびに1つで十分です。ここで出てくる「100gあたり」の考え方は、そのあとの単位量あたりの大きさや比例にそのままつながります。
やり方は、短く残しておく
小数点の決め方は、いちど身につけば忘れにくい代わりに、しばらく使わないと抜けます。テスト前に思い出せるよう、今回うまくいった手順を一行だけ残しておいてください。「かけ算はけた数を足して右から数える」「わり算はわる数を整数にして、両方おなじだけ動かす」「あまりだけは元の位置に戻す」——この3行で足ります。
ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次に同じ形で落としたときに思い出せる形で残っていることです。
まとめ
小数のかけ算・わり算でつまずくのは、計算の力が落ちたからではなく、小数点の置き場所が決まっていないからです。かけ算では小数点を動かさず、2つの数の小数点より下のけた数を足して、その数だけ答えの右から数えます(2.4 × 1.3 なら 312 の右から2つで 3.12)。わり算は先にわる数を整数にして、同じ数だけわられる数も動かします(9.6 ÷ 0.4 は 96 ÷ 4 = 24)。あまりを出すときだけは、あまりの小数点を動かす前の位置に戻し、わる数 × 商 + あまり でもとの数に戻るか確かめます。「かけたら大きくなる」という感覚は1より小さい数では通じないので、「いくつ分入るか」に言いかえておきます。つまずきは4つの型に分かれるので、1回に1つずつ手当てしていきます。練習はレシート1枚、1分で足ります。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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