単位の変かんでつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 表を覚える前に「手で測る」
2026年10月8日 更新📖 約9分で読めます
cm と m、mL と L、g と kg がごちゃごちゃになるのは、覚える量が多いからではなく、その長さや重さを体で知らないからです。単位表の丸暗記に頼らず、家庭にある道具で量の感覚を作る手順、つまずきやすい4つの型への対処、そして単位のなかでただ1つだけ10進ではない「時間」の数え方までをまとめました。
単位表を何度書き写しても、テストで間違える理由
小学2年生で cm と m、3年生で mL・dL・L と g・kg、そして4年生では面積の cm² や m² が出てきます。学校で単位の表をノートに書き写し、家でも唱えさせたのに、テストになると「2m50cm は 250cm? それとも 2050cm?」で手が止まる——この相談は算数のなかでもとくに多いものです。
ただ、ここでつまずく子のほとんどは、暗記をさぼっているわけではありません。単位というのは、その長さ・かさ・重さが、だいたいどれくらいなのかを体で知っている人のための道具です。1L がどのくらいの水かを知らないまま「1L=1000mL」だけを覚えると、答えが 10 倍ずれていても、それがおかしいと気づけません。
逆に言えば、量の感覚さえできれば、変かんを間違えても「さすがにこれは変だ」と自分で気づけるようになります。家庭でやることは、表を唱えさせることではなく、実物を持たせて量を体に入れることです。
最初にやること:家にあるもので「1」を1つずつ決める
プリントは使いません。台所と物差しだけで始めます。
- 1cm=つめの幅、1m=両手を広げたはば(子どもなら少し足りないくらい)。この2つを実際に測って確かめます。
- 1L=牛乳パック1本、1mL=小さじの5分の1。牛乳パックに水を入れて持たせると、重さと一緒に入ります。
- 1kg=砂糖や小麦粉の袋1つ、1g=1円玉1枚。1円玉はぜひ手のひらに乗せてください。「これが1g」と分かると、5kg がどれだけ重いかが一気に想像できます。
ここまでで10分ほどです。このあと単位表を見せると、見え方が変わります。「1000mL でやっと牛乳パック1本ぶん」と実感を持って言えたら成功です。順番が逆だっただけ、というケースが本当に多いのです。
覚える中身は、実は「1000」と「100」だけ
表を「覚えるもの」から「確かめるもの」に変えるために、覚える対象をはっきり絞ります。
- k(キロ)は1000倍:1km=1000m、1kg=1000g。単位が違っても、k の意味は同じです。
- m(ミリ)は1000分の1:1m=1000mm、1L=1000mL。こちらも中身は同じ1000です。
- c(センチ)は100分の1:1m=100cm。100 が出てくるのはここだけだと知っておくと、混乱がぐっと減ります。
つまり、覚える数字は1000 と 100 の2つで、あとは「k・m・c という頭文字が、どの単位についても同じ働きをする」という一本の理屈です。dL(デシリットル)は日常ではほとんど見かけない単位なので、これだけは後回しにして構いません。
つまずきやすい4つの型と、その手当て
単位のつまずきは、だいたい次の4つに分かれます。どれで止まっているかを見分けると、直す場所がはっきりします。
- ①かける・わるが逆になる:いちばん多い型です。「2m は何cm?」で 2÷100 としてしまいます。手当ては数字ではなく言葉で、「小さい単位に変えるときは、数はふえる」と1行だけ渡します。2m を cm で言い直すのだから、200 になるほうが自然だ——と、量の感覚に戻して確かめさせてください。
- ②2つの単位が混ざった数でくずれる:「2m50cm=?cm」が 2050 になる型です。ここは m と cm をいったん切り離して、2m=200cm、そこに 50cm を足して250cm、と2段階で書かせます。頭の中で1回にやろうとするから桁がずれます。
- ③0の数を数え間違える:計算のしかたは合っているのに、1000倍で0を2つしか足していない型です。これは単位の理解ではなく書き方の問題なので、位を区切って書く・声に出して「せん」と言いながら0を3つ書く、で減ります。
- ④面積で急に分からなくなる:1m=100cm なのに 1m²=10000cm² になるところです。ここは説明よりも、1m四方をゆかにテープで作り、10cm四方が縦に10・横に10で100枚並ぶことを見せるのがいちばん早いです。①〜③が固まる前に手を出さないでください。
4つを同時に直そうとしないでください。1回の練習で扱うのは1つだけです。とくに①は量の感覚が入っていれば一度で終わることが多い型です。
単位のものさしは、実は2つある ― 時間だけ60に変わる
ここまでの cm・m・mL・L・g・kg はすべて、k(キロ)は1000倍、c(センチ)は100分の1という10進法のものさしで統一されていました。ところが、単位のなかにもうひとつだけ、違うものさしを使うものがあります。それが時間です。
1時間は60分、1分は60秒。1000や100ではなく60で繰り上がります。長さや重さの感覚が身についたばかりの子ほど、ここで同じクセを持ち込んでしまいます。「2時間20分は何分?」に220分(2を100倍して20を足す、10進のクセ)や2.2時間(20分を0.2時間にする)と答えるのは、まさにこのクセです。正しくは 2×60+20=140分です。
手当てはシンプルです。時計の文字盤を見せて、「1周ぶん=60。時間と分の境だけ、ものさしが変わる」と1行だけ渡してください。覚える数字は1000と100の2つ――に、ここだけ例外として60を加えます。長さ・かさ・重さは10進、時間だけ60進。この整理がついていれば、どちらのものさしを使っているかを自分で選べるようになります。
- 1時間=60分、1分=60秒。どちらも同じ60です。
- 2時間20分=140分(2×60+20)。220分ではありません。
- 長さ(m・cm)・かさ(L・mL)・重さ(kg・g)は10進、時間(と、角度の360度)だけ60進——これが単位のなかにある、ただ1つの例外です。
台所と買い物を練習台にすると、定着が速い
単位は、算数のテストのためだけの知識ではありません。料理でも買い物でも毎日使う道具です。ここを利用しない手はありません。
- 料理で「500mL 量って」と頼みます。計量カップの目もりを読むだけで、mL と L の行き来が自然に入ります。
- 買い物で、お米の袋やペットボトルの表示を読ませます。「2L」「5kg」「300g」が並んでいるのは、単位の実物見本が並んでいるのと同じです。
- 身長ののびを記録します。「去年より 4cm のびた」「もうすぐ 1m40cm」と自分の体で単位を使うと、いちばん忘れません。
ただし、生活のなかだけで済ませると、②の混ざった数や③の0の数は身につきにくいままです。週に一度は紙で、2〜3問だけ書かせる時間を作ってください。
家庭での見分け方:3問書かせれば分かる
どこで止まっているかは、「3m=□cm」「1m20cm=□cm」「2kg=□g」の3問を書かせれば、ほぼ判別できます。
- 3問とも合わない → 量の感覚まで戻ります(最初の10分の実物さがしから)。
- 「3m」で 0.03 などになる → ①のかける・わるが逆の型です。「小さい単位にすると数はふえる」を渡します。
- 「1m20cm」だけ間違える → ②です。2段階に分けて書く練習を1回やれば直ります。
- 3問とも合って「1.5kg=□g」で止まる → 小数がからむ段階です。ここまで来ていれば単位の理解は心配ありません。
採点はしません。どこで止まったかを知るための3問です。間違いの数ではなく、種類を見るのがコツです。
やり方は、短く残しておく
単位は、2年生で出てきたあとも、面積・体積・速さと形を変えて高学年までずっと使い続けます。今回つかんだ手当てを一行だけ残しておくと、次に困ったときにすぐ戻れます。「小さい単位にすると数はふえる」「混ざった数は2つに切ってから足す」——この程度で十分です。
ノートの端でも、ふりかえりのアプリでもかまいません。大事なのは、次につまずいたときに思い出せる形で残っていることです。
合いことば ―「時と分の境だけ、ものさしが60に変わる。」
単位のものさしは、ほとんどが10進(1000・100)で統一されています。そのなかで時間だけが60進だと知っておけば、どちらのルールを使うべきかで迷わなくなります。合いことばは——「時と分の境だけ、ものさしが60に変わる。」。2時間20分のような数を見たら、まずこの合いことばを思い出してから計算してください。
よくある質問
1.どうして時間だけ60で繰り上がるのですか
大昔の人たちが時間や角度を分けるときに、60という数を選んだからです。60は1・2・3・4・5・6・10・12・15・20・30・60と、割りきれる数がとても多く、3人でも4人でも5人でも同じ時間をきれいに分けやすかったためと言われています。10だと3人や4人でぴったり分けられず、60が広く使われるようになりました。
2.「2時間20分」は何分ですか
2時間を60倍して120分、そこに20分を足して140分です。220分や2.2時間ではありません。
3.分と秒も60で繰り上がりますか
はい。1分は60秒で、時間と分の関係とまったく同じ60進です。
4.ほかの単位にも60で繰り上がるものはありますか
長さ(m・cm)・かさ(L・mL)・重さ(kg・g)はすべて1000か100の10進です。60で繰り上がるのは、時間(と角度)だけです。
まとめ
単位が覚えられないのは、表の量が多いからではなく、その量を体で知らないからです。まず家にある物差し・牛乳パック・1円玉で「1cm・1m・1L・1g・1kg」を実物で確かめ、覚える数字を 1000 と 100 の2つに絞ります。そのうえで、かける・わるが逆/混ざった数/0の数/面積の4つを、1回に1つずつ手当てしていきます。台所と買い物を練習台にすると量の感覚がそのまま入り、家庭の負担もぐっと軽くなります。そして、単位のなかで時間だけが60進法という例外であることも覚えておいてください。「時と分の境だけ、ものさしが60に変わる。」――この一行さえ残っていれば、長さ・かさ・重さと時間を取り違えることはありません。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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