米づくりと水産業でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 産地を覚える前に「どうやって量を安定させるか」
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5年社会の「食料生産」は、産地の地名とグラフを覚える単元に見えて、じつは全部が1つの問いへの答えです。米づくりの工夫も、養殖業と栽培漁業のちがいも、輸入にたよる理由も、「自然まかせでは量も質も安定しないから、人がどう手を入れているか」でつながります。米づくりの1年の順番、産地に選ばれる土地の条件、とる漁業と育てる漁業の見分け、自給率の読み方を、スーパーの産地表示でできる家庭の確かめ方までまとめました。
この単元は、覚えることが多いのではなく「問いが渡されていない」
5年生の社会で、子どもが急に「わからない」と言い出すのが食料生産です。米づくり、水産業、そして食料の輸入。教科書には産地の地名、グラフ、聞いたことのない言葉(代かき・養殖業・栽培漁業・自給率)が次々に出てきます。子どもはこれをばらばらの暗記項目として受け取ります。だから量が多く感じ、覚えても翌週には消えます。
ところが、この単元に出てくるものは、ほぼ全部が1つの問いへの答えです。その問いはこれです。
「食べるものは自然が相手なのに、どうして毎年おなじだけ店に並ぶのか。」
天気は年によってちがいます。魚は海にいて、いつどれだけとれるか決まっていません。それなのに、スーパーの米も魚も、去年と同じように売られています。自然まかせでは安定しないものを、人が手を入れて安定させている——その工夫の一覧が、この単元です。
ですから家庭で最初に渡すのは、地名でも用語でもありません。上の問い1つです。これがあると、あとから出てくる工夫がすべて「なるほど、そのための工夫か」という形で入ります。ない子は、最後まで暗記のままです。
米づくりは、用語ではなく「1年の順番」で入れる
米づくりの作業名は、単語だけ見ても意味が取れません。代かきと言われて何のことか分かる子はいません。しかし順番の中に置くと、意味が自分で分かります。順に並べると、こうなります。
- 春(3〜4月)種もみを選び、なえを育てる:よい種だけを選び、田に出す前にビニールハウスなどで育てる。いきなり田にまかないのは、育ちをそろえるため。
- 春(4〜5月)田おこし・代かき:土をほり起こして空気を入れ(田おこし)、水を入れて土をならし、どろどろにする(代かき)。ならすのは、田の水の深さをどこも同じにするため。深さがばらばらだと、育ちもばらばらになる。
- 春(5月ごろ)田植え:そろったなえを植える。今は田植え機で植えるので、人手も時間も昔よりずっと少なくてすむ。
- 夏 水の管理・草とり・農薬:ここがいちばん手がかかる。水を入れたり落としたりして深さを変え、雑草や虫から守る。
- 秋(9〜10月)稲かり・だっこく・かんそう:コンバインで刈って、もみを取り、かわかす。かわかさないとくさる。
- 秋〜冬 出荷・農地の手入れ:カントリーエレベーターなどで保管し、注文に合わせて出す。一度に売らず保管するから、1年じゅう店に米がある。
この並びを一度たどれば、作業名は覚えるものではなく、思い出すものになります。テストで「代かきとは何か」と聞かれても、順番の中の位置(田植えの直前・水を入れてならす)から答えが出てきます。
家庭では、順番を紙に書き写させるより「なんでこの順じゃないとだめなの?」と1か所だけ聞くほうが効きます。たとえば「代かきを田植えのあとにしたらどうなる?」。植えたあとに土をかき回したら、なえが倒れます。理由が言えたら、その子はもう順番を暗記していません。
産地は「地名」ではなく「条件」で覚える
米の産地として、新潟県の越後平野、山形県の庄内平野、北海道の石狩平野、秋田県の秋田平野が並びます。子どもはこれを地名の羅列として丸暗記し、県名と平野名が入れかわります。
覚えるべきは、なぜそこが選ばれたかのほうです。米づくりに向く土地の条件は、だいたい3つに畳めます。
- 広く平らな土地がある:田は水をためるので、かたむいていると水が片側に寄る。だから山地ではなく平野。
- 水がたっぷりある:雪の多い地方は、春の雪どけ水が川に流れこむ。田植えの時期にちょうど大量の水がいるので、これがそのまま強みになる。
- 夏に気温が高く、昼と夜の温度差がある:稲は夏の暑さで育つ。さらに夜すずしいと養分が実にたまりやすいので、味がよくなる。
この3つを持っていれば、知らない産地が出ても説明できます。「雪が多い」「平野が広い」と資料にあれば、米どころだと当たりがつきます。逆に地名だけ覚えた子は、教科書に載っていない平野が出た瞬間に手が止まります。
ここは47都道府県の覚え方とも重なります。県を「名前」ではなく「地形と気候の組み合わせ」で持っている子は、この単元がそのまま得点になります。
水産業も、問いはまったく同じ
米が終わると水産業に移り、子どもはまた別の単元が始まったと思います。ちがいます。問いは同じ「どうやって安定させるか」です。ただし相手が田ではなく海になるので、答えの形が変わります。
まず、漁業はとるものと育てるものに分かれます。ここを最初に線引きしてください。
- とる漁業:沿岸漁業(岸の近く・小さな船・日帰り)、沖合漁業(少しはなれた海・数日)、遠洋漁業(遠くの海・何か月も)。いま日本でとる量がいちばん多いのは沖合漁業。
- 育てる漁業:養殖業と栽培漁業。とれる量が自然まかせにならないよう、人が手を入れる側。
そして、この単元でいちばんまちがえるのが養殖業と栽培漁業の区別です。名前が似ていて、どちらも「育てる」なので混ざります。ちがいは1点だけです。
- 養殖業=最後まで育てる。 いけすや池で、出荷できる大きさになるまで人が育てて、そのまま出す。海に放さない。(ぶり・たい・かき・のり・ほたてなど)
- 栽培漁業=とちゅうで海に放す。 たまごからちごまでのいちばん弱い時期だけ人が守って育て、ある程度大きくなったら海に放流し、自然の中で育ったものをあとでとる。(さけ・ひらめ・くるまえびなど)
覚え方は「放すか、放さないか」の一言で足ります。子どもが迷ったら、用語を言い直させずに「それ、とちゅうで海に放した?」と聞いてください。放したなら栽培漁業、放していないなら養殖業です。
なぜ弱い時期だけ守るのかも、ついでに渡しておくと強くなります。魚はたまごをたくさん産むのに、ほとんどが大きくなる前に食べられてしまうからです。そこだけ人が肩がわりすれば、海に出ていく数が増えます。全部を育てるより手間が少なくてすむ——これが栽培漁業のねらいです。
「減っている」グラフは、理由を1つずつ結びつける
この単元のグラフは、たいてい右下がりです。漁かく量も、米の生産量も、農業や漁業で働く人も減っています。子どもは「減っている」とだけ読んで終わります。テストで問われるのは減った理由のほうです。
- 遠洋漁業が大きく減った:多くの国が自分の国の近くの海で外国の船がとることを制限したため、それまでの漁場に行けなくなった。燃料代が高くなったことも重なった。
- とる量そのものにブレーキがかかった:とりすぎると魚がへって、次の年にとれなくなる。だからとっていい量や大きさに決まりをつくって守っている。減っているように見えて、先の分を残すための調整でもある。
- 働く人がへり、年れいが上がった:農業も漁業も、あとをつぐ人が少ない。だから機械化や、少ない人数でも回るしくみが要る。
- 米は、食べる量そのものがへった:パンやめん、肉や乳製品を食べるようになり、1人が食べる米の量が昔よりずっと少ない。売れる量に合わせて作る量を減らしてきたので、生産量のグラフも下がる。
ここで大事なのは、「減った=わるいこと」と決めつけさせないことです。とる量の制限は、資源を残すための前向きな手当てです。グラフを読むときは「減った」ではなく「なぜ、そうしたか」まで言わせてください。読み取りのしかたそのものは、社会のグラフや表の読み取りで扱っています。
食料自給率は、%を覚えるところではない
単元の最後に自給率が出てきます。ここも数字を覚えさせると失敗します。覚えるのは対比です。
- 米は、ほとんどを自分の国で作れている。 だから米だけ見ると自給率はとても高い。
- 小麦や大豆は、ほとんどを輸入している。 パン・めん・とうふ・しょうゆ・油のもとになるものが、外国から来ている。
- 全体で見ると、日本の自給率は先進国の中でとても低い(およそ4割)。 米の自給率が高いのに全体が低いのは、米以外を大量に輸入しているから。
子どもがつまずくのは、ここの「米は高いのに、全体は低い」という食いちがいです。この2つが同時に成り立つ理由を言えるかどうかが、そのまま記述問題の答えになります。
あわせて、輸入がわるいことだと決めつけない言い方も渡してください。輸入があるから季節に関係なく、安く、種類も多くそろいます。いっぽうで、外国で不作や争いが起きると、日本の食たくがすぐ影響を受けるという弱さもあります。よい面と弱い面を1つずつ言えるのが、この単元のゴールです。
家庭での確かめ方は、スーパーで5分
この単元は、実物がいちばん近くにあります。特別な準備は要りません。買い物のついでにできます。
- 米の袋の産地を見る:県名を1つ読ませて、「そこ、平野ある? 雪ふる?」と聞く。条件の3つとつながります。
- 魚のパックの表示を見る:「養殖」と書いてあるものと、書いていないものを1つずつ探させる。ぶり・たい・かきは養殖が多いので見つかります。
- 魚の産地が外国のものを1つ探す:さけやえびで見つかります。遠洋漁業がへったぶんを輸入がおぎなっているという話とつながります。
- とうふ・しょうゆ・パンの原材料を見る:大豆・小麦が外国産となっているものが必ずあります。自給率の話が、その場で実物になります。
ここまでやると、子どもは教科書の資料を自分が見たものの説明として読み直します。暗記していないのに答えられる、という状態はこうして作ります。
親が言うのは、この1つだけでいい
覚えているかを確かめる質問(「沖合漁業ってなに?」)は、その場でしか効きません。かわりに、どの場面でも使える1問を渡してください。
「それ、だれがどんな工夫をしてるから、いつもお店にあるの?」
米でも、魚でも、輸入の話でも、この1問で答えの形が同じになります。工夫の名前(代かき・養殖業・栽培漁業・保管・機械化)は、答えるときに自然と出てきます。用語から入るのではなく、問いから入って用語で答える——この順番が身につけば、6年の政治や歴史でも同じやり方が使えます。
そして、その日わかったことを1行だけ残させてください。「代かきは水の深さをそろえるため」でも「栽培漁業はとちゅうで放す」でも構いません。暗記が苦手な子のための覚え方でも書いたとおり、社会の用語は意味とセットで1回書き出したものだけが残ります。
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同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
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