「安全なくらしを守る」(消防署・警察署)でつまずく子への、家庭でできる教え方 ― 119番は消防署にはつながっていない
📖 約8分で読めます
3・4年社会の「安全なくらしを守る」は、消防署と警察署の仕事を覚える単元に見えて、本当のねらいは「火事や事故が起きてから助けが来るまでの数分間に、だれが同時に動いているか」です。119番がつながる先、消火栓と防火水そうのちがい、消防署と消防団の役割分担、110番との使い分け、そして「起きる前の備え」がまちのどこにあるか ― 通学路を5分歩くだけでできる家庭の確かめ方までまとめました。
この単元でつまずくのは、覚える量ではなく「見えていない数分間」
3年生から4年生にかけて、社会で「安全なくらしを守る」(消防署のはたらき・警察署のはたらき)を習います。子どもに「何を習った?」と聞くと、たいていこう返ってきます。
「火事のときは119番したら、消防車が来る。」
まちがってはいません。ただ、この単元で問われるのはその先です。テストや見学カードで聞かれるのは「消防車が来る」ではなく、「電話をしてから消防車が着くまでの数分間に、だれが、何をしていたか」のほうだからです。
子どもにとってこの数分間は、まるごと見えていません。電話をかけたら消防車が出てきた、という手品のように受け取っています。だから「通信指令室」「消防団」「関係機関との連けい」といった言葉が、ばらばらの暗記項目になります。
家庭で最初に渡すのは、用語ではなく1つの問いで足ります。
「その電話、だれが最初に取ってると思う?」
ここから入ると、あとの内容がぜんぶ「その数分間の話」としてつながります。
119番は、近くの消防署の電話が鳴っているのではない
ほとんどの子(と、けっこうな数の大人)が、119番は近所の消防署に直接つながっていると思っています。ちがいます。119番がつながるのは、市や地域ごとに置かれた通信指令室(指令センター)です。まちじゅうの119番が、まずここ1か所に集まります。
なぜわざわざ1か所に集めるのか。そこが、この単元のいちばんの芯です。1本の電話で、いくつもの場所を同時に動かすためです。
- 現場にいちばん近い消防署へ出動の指令を出す:どの署の車が近いかを指令室が判断するので、通報した人が署を選ぶ必要がない。
- 足りなければ、ほかの署からも同時に呼ぶ:大きな火事のとき、1つの署の車だけでは足りない。指令室は複数の署へ一度に指令を出せる。
- 消防以外へも同時に連らくする:けが人がいれば病院へ受け入れの確認、道を止めるなら警察へ、もっと水が要るなら水道局へ、ガスもれの心配があればガス会社へ、感電の心配があれば電力会社へ。
つまり、通報した人は1回しか電話していないのに、その1回で、消防・救急・警察・病院・水道・ガス・電気がいっせいに動き出します。教科書に出てくる「関係機関との連けい」は、この一斉指令のことです。
ここが入ると、子どもの答えの形が変わります。「消防車が来る」ではなく「指令室が受けて、近い署とほかのところへ同時に知らせている」と言えるようになります。記述問題で点になるのは、後者だけです。
あわせて、電話で何を聞かれるかも渡しておいてください。「火事ですか、救急ですか」がまず聞かれ、次に場所です。場所が分からなければ助けは動けません。子どもには「家の住所」と「近くの目印(学校・コンビニ・公園の名前)」を言えるようにしておくだけで十分です。
119番と110番は「何が起きたか」で分ける
2つの番号が出てくると、子どもは必ず取りちがえます。数字で覚えさせると、いざというときほど思い出せません。起きたことで分けるほうが確実です。
- 119番=消防:火事とけが・急病(救急)。救急車は消防署から来ます。ここを知らない子がとても多い。
- 110番=警察:事件(どろぼう・あやしい人)と事故(交通事故)。
ただし、交通事故でけが人がいれば両方が要ります。ここで子どもは固まります。渡しておく答えは1つだけで足ります。「どっちにかけても、指令室どうしで連らくが行くから、まちがえても切らないで、見たことをそのまま言う」。番号を選ばせるより、切らせないことのほうが大事です。
もう1つ、実際に効く注意があります。いたずら電話はしない。指令室の回線は数が決まっているので、いたずらの1本のあいだ、本当に助けが要る人の電話がつながりません。「だめだから」ではなく「その間、だれかの電話が入らないから」と理由で言ってください。理由のほうが残ります。
火事に備えているのは、署の中だけではない ― まちの中に置いてある
この単元のもう半分は、起きてからではなく起きる前の話です。そして、その備えは教科書の中ではなく、家のまわりに実物で置いてあります。
- 消火栓:水道管につながっている取り出し口。道路の黄色いふたや、赤い標識で見つかる。水道が生きているかぎり、水を出しつづけられる。
- 防火水そう:あらかじめ水をためてあるそう。地面の下にあることが多い。地震で水道管がこわれて消火栓が使えないときのためにある。
- 消防団のつめ所・ホース格納箱:まちの中に小さな倉庫のように置かれている。
- 住宅用火災警報器:家の中の天井についている白い円ばん。けむりを感じて鳴る。寝ているあいだの火事で、いちばん命を助けているのがこれ。
消火栓と防火水そうのちがいは、この単元でよく問われるのに、子どもは「どっちも水」でまとめてしまいます。見分け方は一言です。「水道からもらうか、ためてあるか」。そしてためてあるほうは、水道が止まっても使える——だから両方ある。理由まで言えれば完成です。
警察のほうにも、同じ「起きる前」の備えがあります。カーブミラー・ガードレール・横断歩道・信号・「こども110番の家」のステッカー・パトロール。どれも、事故や事件が起きないように先に置いてあるものです。子どもは警察の仕事を「つかまえる」だと思っていますが、実際の仕事の多くは起きないようにする側にあります。
消防署と消防団は、別のもの
見学や資料で必ず出てくるのに、いちばん説明されないまま流れるのがここです。区別は1点で足ります。
- 消防署の消防士=それが仕事の人。 交代で24時間ずっと署にいて、いつ鳴っても出られるようにしている。だから署では、食事も仮眠も署の中でとる。訓練も毎日する。
- 消防団=ふだんは別の仕事をしている、まちの人。 会社員も、お店の人も、農家の人もいる。火事のときに集まって消火や見回りを手伝い、ふだんは点検や防火の呼びかけをしている。
なぜ両方あるのか。署の数と車の数には限りがあるからです。大きな火事や、地震・大雨のようにあちこちで同時に起きる災害では、署だけでは手が回りません。地元の道をよく知っている人が近くにいることが、そのまま早さになります。
ここまで来ると、この単元のねらいが立ち上がります。安全は、だれかが用意してくれるサービスではなく、住んでいる人も入っているしくみだということです。子ども自身も、火遊びをしない・「こども110番の家」の場所を知っておく・避難訓練を本気でやるという形で、すでにその中に入っています。
見学カード・記述問題でつまずく4つ
テストで落とすところは、だいたい決まっています。先に渡しておけば、その場で防げます。
- 「救急車は警察から来る」と書いてしまう:救急車は消防署。119番の側だと押さえる。
- 「消防士は火事のときだけ働いている」:出動していない時間は訓練・点検・車や道具の整備・防火の指導をしている。ひまにしている時間ではない。
- 「消防車が遅い」と時間を人のせいにする:時間の中身は通報→指令→出動→道を走る→現場で水をつなぐに分かれる。だから道をあけること(緊急車両に道をゆずる)も答えの一部になる。
- 「だれのおかげか」を1つしか書かない:この単元の記述は複数を並べると点になる。消防士・指令室・消防団・警察・地域の人、と数を出す。
資料やグラフ(火事の件数、原因の割合など)の読み方そのものは、社会のグラフや表が読み取れない子への教え方と同じやり方でいけます。見出しを先に読むだけで、答えの半分は決まります。
家庭での確かめ方は、通学路を5分
この単元は、教材を買う必要がまったくありません。実物が、家から歩いて数分の場所にあります。帰り道のついででできます。
- 消火栓を1つ見つける:道路の黄色いふた、または赤い標識。見つけたら「これ、水道につながってるほう?」と1問だけ聞く。
- 「防火水そう」の標識をさがす:見つかったら「水道がこわれても使えるのはどっち?」。
- 「こども110番の家」のステッカーをさがす:お店や家の玄関にある。どこにあったかを言えることが、そのまま安全につながる。
- カーブミラーの前で立ち止まる:「これ、なんで、ここに付いてるの?」。曲がり角で見えないから、という答えが出れば「起きる前の備え」が入っている。
- 家に帰ったら天井を見る:白い円ばんの住宅用火災警報器をさがす。ついでに家の消火器の場所と、火事のときどこから外へ出るかを家族で1回決めておく。
ここまでやった子は、教科書の写真を「自分が見たものの説明」として読み直します。覚えていないのに答えられる、という状態はこうして作られます。
親が言うのは、この1つだけでいい
「通信指令室ってなに?」と確かめる質問は、その場でしか効きません。かわりに、どの場面でも使える1問を渡してください。
「それ、だれが先に動いてくれてるの?」
火事でも、事故でも、地震でも、この1問で答えの形がそろいます。指令室・消防署・救急隊・警察・消防団・地域の人——名前は、答えるときに自然と出てきます。用語から入るのではなく、問いから入って用語で答える。この順番は、5年の食料生産(米づくりと水産業)でも、6年の政治でもそのまま使えます。
そして、その日わかったことを1行だけ残させてください。「119番は指令室が受ける」でも「防火水そうは水道が止まっても使える」でも構いません。暗記が苦手な子のための覚え方で書いたとおり、社会の用語は意味とセットで1回書き出したものだけが残ります。
この記事がお役に立ったら
同じところでつまずいているお子さんのご家庭に、そのまま渡せます。
あわせて読みたい
- 社会・約10分社会科の「スーパーマーケットのくふう」を家庭で見つけるコツ
小3社会の「店ではたらく人」でつまずきやすい“くふうと理由の結びつけ”を、いつもの買い物を見学に変える視点と質問で身につける…
- 社会・約9分47都道府県が覚えられない子への、家庭でできる覚え方 ― 丸暗記をやめる3手順
47都道府県は名前だけを丸暗記しようとすると必ずこぼれます。位置・名前・県庁所在地のどこでつまずいているかを見分け、8つの地…
- 社会・約9分暗記が苦手な子のための覚え方 ― 社会・理科の用語が頭に残るコツ
社会や理科の用語がなかなか覚えられない小学生へ。丸暗記に頼らず、意味とつながりで記憶に残す家庭でできる覚え方のコツを、保護者…
ほかの困りごとをさがす
記事の見出しと、本文の小見出しからさがします。